DX不安はなぜ生まれる?現場が本気になるDXの成功事例を紹介

From: 働き方改革ラボ

2022年11月15日 07:00

この記事に書いてあること

グローバル化や、働き方改革の観点からも重視されているDX。ただ、経営層のDXに対する高い意識とは対照的に、現場でDXの意義が理解されていない、または、DX導入に対する不安を感じている社員が多いという現状もあります。そこでこのコラムでは、DXへの不安が生まれる理由や、その解決策を考える上で参考になる、企業のDX推進成功事例を紹介します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略。日本語に訳すと、「デジタル変革」「デジタル変換」という意味です。DXの考え方は、2004年に、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。もともとは、テクノロジーの力で人々の生活をさまざまな面でより良くしていくという意味で使われていた用語です。

現在、企業におけるDXとは、ビッグデータやITツールなどのデジタル技術を用いたビジネス上の変革を指します。業務そのものや組織、プロセスを変革したり、新しいサービスや製品、ビジネスモデルを作り出したりすることによって市場での競争力を得ることが、DXです。

DXのメリットとは

では、DXは企業にどんな利点をもたらすのでしょうか。DXの主なメリットを解説します。

働き方の変革による生産性向上

DXの第一のメリットは、業務自体や業務フローの変革による生産性の向上です。ITツールや、業務を自動化するRPAなどのデジタル技術の導入によって、省人化や、業務の効率化が実現します。デジタルツールを活用することで、作業ミスが減る、正確性が上がりサービスの質が向上するなどの効果もあります。効率化が実現した分、働く人がより創造性の高い仕事に従事することができるため、新しいアイディアや、顧客への付加価値の創出も期待できます。

またDXは、働き方改革も推進します。働く人の作業時間が減ることで労働環境が改善される、オンラインでの業務をサポートするツールの導入でリモートワークが可能になるなど、多様な働き方や、ライフワークバランスを実現できるのも、DXのメリットです。

旧システムからの脱却による業務効率向上

今、日本でDXが求められている理由のひとつが、企業が、老朽化したシステムを放置していることで生まれる業務の非効率や、高いコストにあります。旧システムの運用に高額な維持費がかかっていることや、他システムと連携できない古いシステムが、仕事の生産性を下げていることもあります。長い年月で改修が繰り返され、複雑化して限られた人しか運用ができないといった属人性の問題も起こります。

DXをきっかけにシステムを刷新すれば、働き方のトレンドや、デジタル化が進んだ市場に合ったシステムの構築ができます。旧システムからの脱却で、業務効率向上へと舵を切ることができるでしょう。

世の中の変化に柔軟に対応できる

デジタル変革の推進によって、世の中の変化に柔軟に対応しながら、ビジネスを成功へ導くことができます。

先が読めず、グローバル化、複雑化する市場で生き残るためには、データ活用が不可欠です。データ分析技術によって、市場の変化やユーザーのニーズをタイムリーにつかむことで、効果的なマーケティングや商品開発が可能になります。顧客ニーズをとらえた商品やサービスを提供できれば、売上アップや、顧客からの信頼獲得につながります。

新サービスの開発ができる

DX推進によって、それまで自社になかった新しい発想で、将来的に収益が見込めるサービスを創出することができます。

デジタルの力で、これまで市場になかったサービスや商品を生み出すことも、DXのひとつです。今、消費者の生活の利便性向上には、デジタル技術が欠かせません。データを活用したビジネスモデルの構築によって市場での競争力を獲得できるのも、DXの大きなメリットです。

DXに対する不安

変化の多い時代に、強い企業であり続けるために不可欠なDX。では、経営層だけでなく現場の社員の間でも、DXへの関心は高まっているのでしょうか。

電通は2021年12月、大企業からスタートアップまで、さまざまな規模の国内企業の20~59歳の部長以下の従業員1000人を対象に、DXの導入や働き方改革など、社内の業務変革に関するアンケートを実施しました。その結果、約9割の従業員が、変革の動きについていけないという不安を感じていると回答しました。

75.3%という多くの人が変革の必要性を認知していると答えているものの、87.8%の人が、自社の変革について「目の前の業務とのバランスが取れなくなる」「今の仕事のペースが壊れそうに感じる・壊れた」などの不安を抱いていました。経営層がDXを進めようとしても、現場は変革にハードルを感じているという実態が明らかになりました。

DXへの不安を生む原因とは?

ではなぜ、DXなどの変革に対して、従業員が不安を感じてしまうのでしょうか。

不安を招く理由のひとつは、会社が進めるDXの目的が明確ではないことです。具体的な目的を定めず単にDXを推進するだけでは、現場は今の業務フローが変わることで生まれる負担を心配します。業務フローの改善による現場の作業負担軽減や、新サービスの創出など、DXによって実現したいゴールを明確にすることで、従業員のDXに対するモチベーションを高めることができます。

また、経営層自身のDXに対する理解が足りず、DXによって働き方やビジネスがどう変わるのか、経営層が社内に十分に周知できていないという課題もあります。まずは経営層が、DXは単なるツールの導入ではなく、業務プロセスやビジネスモデル自体を変革することだと正しく理解し、メリットを従業員に説明できる体制を整えることが重要です。

現場がついてくるDXの進め方成功事例

では、従業員の理解・協力のもとDXを成功させるには、具体的にどのような取り組みが有効なのでしょうか。DXによって業務プロセス改善や新規ビジネスを成功させた企業の事例を紹介します。

社長自らが新しい働き方を伝える動画をオンライン配信

株式会社ぐるなびは、2014年から段階的にテレワークなどの働き方の変革を実施。2020年4月から本格的に、生産性と働きやすさ向上を目的に、新オフィスへの移行とデジタル活用による働き方の変革を進めています。

新オフィスは、コミュニケーションを通じて価値を共創する「コラボレーティブスペース」として活用。テレワーク環境を整備すると同時に、社内施策の周知や決算説明、新しい働き方などのテーマに関する社長からのメッセージ動画を、オンラインで定期に配信しています。また、在宅で経営層との意見交換を行うためのツールを導入し、オンラインでのコミュニケーションを活性化。業務管理ツールや電子契約の導入、営業のオンライン化などの取り組みによって、業務プロセスも改善しています。

情報管理システムの導入で業務プロセスを改善

神奈川県で食品工場の環境清浄サービスを提供するSOCSマネジメントシステムズは、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格「ISO22000」の認証を取得。高い安全基準を設けるグローバル企業も含む顧客に高品質なサービスを提供するため、情報管理システムを導入しました。

システムでは、社内だけではなく、食品工場の顧客も作業状況を閲覧可能。作業工程や結果を可視化することで、作業員の意識向上や、顧客からの指摘や要望に応じた業務改善が可能になりました。また、勤怠管理のクラウド化や、現場のあるエリアにサテライトオフィスを設置するなど、ICT活用による働き方の変革も実施。Web会議システムやコミュニケーションツールを活用して現場と連携をとっています。

店舗のDXで現場の業務効率化を実現

通信建設業を展開する東京都の株式会社ミライト・ワンは、2030年に向けた新たな事業ビジョン「MIRAIT ONE Group Vision 2030」を策定。事業変革の柱のひとつとして「データインサイトマネジメント」を掲げ、全業務を変革するためのデータ活用を基盤としたDXを推進しています。

通信建設の分野で推進する環境社会・ICTソリューション事業に加えて、グリーン発電参入や、DX関連の新事業を展開。また、水道管ビジネスにおけるAIを活用した水道管劣化予測や、クラウド施工管理サービスも提供しています。電子棚札にEC連動とスマホ活用を組み合わせた店舗DXなど、現場の各業務で、データを活用した課題解決や業務効率化を実現しています。

独自のDX人材育成プログラムでDX推進基盤を強化

アスクル株式会社は、2025年までの中期経営計画の最重要戦略としてプラットフォーム改革を掲げ、バリューチェーンのDXを推進しています。商品開発、商品情報登録から発注、入荷、保管、販売、出荷、配送までの一連の流れを、ビッグデータ・AIやロボティクスを活用してプロセスを革新。物流現場の人手不足や、物流・配送費高騰などの課題解決を進めています。

また、独自の研修プログラム「ASKUL DX ACADEMY」を立ち上げてDX人材を育成。全社員対象の基礎的技術を学ぶプログラムや、データサイエンティストやエンジニア向けの高度専門知識を学ぶカリキュラムなどを展開し、人材面でもDX推進基盤を強化しています。

事例を参考にDX不安を克服しよう!

DXに対する不安の主な原因は、DXの効果等に関する現場とのコミュニケーション不足です。目的や働き方やビジネスに与えるメリットを正しく伝えることで、現場にもDX推進の意識が浸透します。成功企業の事例も参考にしながら、DX不安を解消し、ビジネスや働き方の変革へと舵を切りましょう!

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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