人材不足に長時間労働。流通業の働き方改革に必要なものは?

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卸売業や小売業といった流通業では、全産業と比較しても、人手不足や長時間労働など働き方の点で課題が多いのが現状です。また、パートタイムで働く人の割合が多い小売業にとっては、同一労働同一賃金の制度への対応も大きな課題と言えます。今回は、主に卸売業と小売業の働き方に関する問題点と、改善策について紹介します。

流通業の働き方の実態

卸売業と小売業の働き方の実態について、厚生労働省や農林水産省の調査から、主要なトピックについて解説します。

人材不足

厚生労働省の「雇用動向調査」の欠員率は、卸売業と小売業の雇用状況を表しています。欠員率とは、ある程度安定して勤務している常用労働者に対して未充足求人数(事業所に存在する仕事に従事する人がいない状態を補充するため行っている求人数)が占める割合。2015年の卸売業の欠員率は、全業種の2.1%に対し0.9%ですが、小売業は2.9%と高い割合です。

また2017年の日本政策金融公庫による「食品産業動向調査:労働力」によると、前年同期と比較して、営業・販売の職種で「雇用状況が不足」と回答した食品関連小売企業の割合は62.5、食品関連卸売企業の割合は59.0。単純作業の商品生産や、流通や運搬に関する作業においても、食品関連小売企業、食品関連卸売企業ともに35を超えていて、流通業の多くの職場において労働力が不足していることがわかります。

労働時間が長い

流通業で働く人の労働時間は比較的長いというデータもあります。厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によれば、飲食料品卸売業・飲食料品小売業で働く人の労働時間は月平均184時間。全産業の177時間と比較して高い水準です。

また、厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査」によると、小売業の平均年間休日総数は、全産業の108日に対して、100.7日。流通業で働く人は、労働時間が比較的長く、休日の取得数が少ないと言えます。

小売業は非正規雇用職員の割合が高い

農林水産省の調査によると食料品小売業の非正規雇用職員の割合は76.7と、正社員の数を大きく上回り、全業種の37.5%と比較してもとても高い割合です。60歳以上の働く人の数も他業種と比較して多く、特に食料品小売業に関しては、非正規雇用、高齢者の労働者の割合が高いという特徴があります。

労働生産性、労働装備率が低い

特に飲食料品小売業の企業は、労働生産性が低いというデータもあります。労働生産性とは、生み出した付加価値の金額を従業員数で割った数字。農林水産省の調査によれば、飲食料品小売業の労働生産性は、全産業の8.7に対して、3.5。また、労働装備率(従業員一人あたりの設備投資金額)の数字が低く、設備の導入や、最新技術の活用の遅れなどが発生していることがわかります。

流通業の働き方の課題

人材不足は全業種で課題とされていますが、厚生労働省や農林水産省の調査に基づくデータを見ると、卸売業や小売業においても、労働力不足や長時間労働は問題視すべきと言えます。また、労働生産性や労働実装率の低さが、流通業の現場での作業効率や設備上の課題を示しています。

流通業の働き方改革のための取り組み例

流通業の働き方を変えるために取るべき施策にはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれの課題に応じた取り組み例を紹介します。

業務負担軽減のための取り組み

長時間労働が問題になっている事業所では、連続勤務を避けるために、早出・遅出の2交替制を導入したり、月に取得する有給休暇の日数を定めるなどの制度の整備が必要です。また、事務作業従事者が在宅で仕事を行うためのリモートワーク環境を構築するなど、子育てや介護などの事情を持つ労働者にとっても働きやすい職場を作ることも重要です。

バックオフィス業務のICT化により効率アップ

作業効率に課題を抱える事業所では、伝票や見積書など、手書きで作成していた書類を電子化することで、受発注や在庫管理の作業を効率化できます。また、販売実績や天候で商品数を自動で算出する受注システムや、AIを活用した商品開発・在庫管理システムを導入することで、作業時間を短縮して労働者の負担を軽減できます。

高齢者、外国人労働力の積極的な活用

人材不足への対応策としては、退職後の高齢者を再雇用したり、雇用年齢の上限を引き上げたりといった、高齢者の活用も有効です。また、外国人労働者の積極的な採用は、人材確保だけでなく、小売業において外国人顧客への対応という点でもメリットがあります。

同一労働同一賃金で流通業の働き方はどう変わる?

パートやアルバイトの比率が高い小売業にとって、「同一労働同一賃金」は、人材活用や雇用の方法を左右する取り組みです。

「同一労働同一賃金」とは、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)や、「同一労働同一賃金ガイドライン」などによって、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁じる制度。雇用形態に関わらず、業務内容に応じて待遇が決まるため、多様な働き方を選択できるという制度です。202041日(中小企業は202141日)より施行されます。

正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与、手当などのあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁じられ、待遇差の理由について説明を求められた際には応じる必要があります。店舗勤務者のうちパートタイムで働く人の比率が高い小売業にとっては、非正規社員の賃金が上がれば賃金総額が増えるというリスクがあります。

非正規社員を活用する企業は、職務分析・職務評価を行うことで、正社員とパートタイム労働者の職務内容を明確にし、職務内容の根拠に応じた待遇であることを明示する必要があります。パートタイム労働者の働きに見合った公正な待遇を設定することで、その理由を説明できる体制を整えましょう。

また、情報処理技術や、資料の電子化などの新システムを導入することで作業効率を上げることも有効です。同じ事業所で働くすべての人にとって働きやすい環境を実現するためにも、労働時間を削減しながら、パートタイム労働者の待遇を適性化していきましょう。

働き方を変えて魅力ある職場を実現しよう

長時間労働や人材不足など、働き方に関する課題が多い流通業。パートタイム労働者の賃金適正化など、法律改正に向けた対策も必要ですが、働き方を変えるためにできる方策が多い業界とも言えます。課題を整理して対策を進めれば職場が変わり、優秀な人材の確保にもつながります。課題の発見をチャンスととらえ、働きやすく魅力ある職場の実現を目指しましょう。

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