裁量労働制の勤怠管理のポイント

From: 働き方改革ラボ

2021年02月26日 07:00

この記事に書いてあること

働く人が自分の裁量で、出退勤の時間や労働時間を決められる裁量労働制。自由に働けるというメリットもある一方で、裁量労働制の深夜労働時間は見逃されやすいなどの課題もあります。仕事の成果を評価するジョブ型の働き方を取り入れる企業も増える中、裁量労働制の従業員に対して適切に勤怠管理ができている会社ばかりではありません。そこで今回は、裁量労働制における勤怠管理のポイントや、裁量労働制で働く人の労務管理に対応する勤怠管理システムを紹介します。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、労働時間制度のひとつで、仕事をする時間が従業員の裁量に委ねられる労働契約のことです。実際に働いた労働時間に関わらず、あらかじめ労使協定などで定めた「みなし労働時間」に従って、実際に働いた時間とは差があっても、みなし労働時間の分働いたとみなして給与を支給します。従業員にとっては、出退勤時間に縛られることなく自由に働けて、労働時間数に関わらず成果に対して評価が得られるというメリットがあります。その一方で、実労働時間がみなし労働時間より長くなっても残業代は支給されません。

また、裁量労働制を適用できる職種には制限があります。裁量労働制には、研究職やデザイナー、編集者、弁護士などの専門性が高い職種を対象とした「専門業務型裁量労働制」と、事業上の重要な決定が行われる本社における企画、立案、分析などを行う職種を対象とした「企画業務型裁量労働制」があります。

フレックスタイム制との違い

始業・終業時間が自由な制度としては、他にフレックスタイム制があります。フレックスタイム制とは、会社が定めたコアタイムの間に仕事をしていれば、出退勤時間は自分で決めることができるという制度。所定労働時間の定めがあるため、決まった時間数は働く必要があるという点で、裁量労働制と異なります。

固定の残業代を支払うみなし残業制度の仕組み

裁量労働制とは別の制度として、「みなし残業制度」があります。みなし残業制度とは、企業側が従業員に対して一定の残業時間を想定して、その分の固定の残業代を支払う制度です。1ヵ月の実際の残業時間がみなし残業時間に満たなかった場合でも、固定の残業代は減ることなく支払われます。

一方で、残業時間がみなし残業時間を超えた場合は、会社は追加で残業代を支払う必要があります。

裁量労働制にも勤怠管理が必要な理由

裁量労働制は実労働時間に関わらずみなし労働時間分働いたとされる制度ですが、労働時間が自由とはいえ、勤怠を正しく把握しなくてよいわけではありません。従業員の長時間労働による健康状態の悪化を防ぐため、裁量労働制の導入要件のひとつとして、対象労働者に適用する健康・福祉確保措置が定められています。また、2019年4月に働き方改革関連法のひとつとして労働安全衛生法が改正され、事業主に「労働時間の客観的な把握」が義務化されました。企業は、裁量労働制で働く人を含むすべての従業員の労働時間を、客観的な方法で把握・記録しなければいけません。

また、裁量労働制でも割増賃金を支払うケースが発生します。夜22時~早朝5時までの深夜労働や休日出勤に関しては、会社は従業員に、働いた時間分の割増賃金を支払う必要があります。従業員の健康管理のため、また必要な割増賃金を支払うために、裁量労働制でも労働時間を正しく管理することが不可欠なのです。

裁量労働制の勤怠管理のポイント

では、裁量労働制を導入しているケースの勤怠管理を適切に行うためには、どのような点を注意すべきなのでしょうか。そのポイントを解説します。

深夜労働や休日出勤をチェック

裁量労働制でも手当が発生する深夜労働と休日出勤の状況を、正しく把握することが大切です。従業員自身が裁量労働制は深夜や休日も関わらず手当が発生しないと誤解して、出退勤を正しく報告していないケースもあり得ます。従業員自らの判断で行う深夜労働や休日出勤を見逃さないように、事前承認制にするなどの工夫も必要です。

健康・福祉確保の措置が必要

従業員の働き方や階級に関わらず、法定労働時間を超えて働く従業員に対しては、会社はその健康や福祉を確保するための措置をとる必要があると法律で定められています。従業員に長時間労働の問題が発生した場合は、勤務間インターバルの確保や医師による面接指導や保健指導、休暇取得や配置転換などの措置をとらなければいけません。

労働時間の客観的な記録が必要

働き方改革関連法では、すべての従業員に関して客観的な方法で労働時間を記録することが定められています。客観的な方法とは、タイムカードの打刻やパソコンの使用ログなど誰の目にでもわかる記録方法です。すべての従業員の勤怠状況を正確に把握・記録するためには、ICタイムカードや勤怠管理システムなどのツールを導入することがおすすめです。

勤務時間を管理できる勤怠システムは?

勤怠管理システムは客観的に労働時間の把握ができるほか、担当者の事務作業の手間を減らし、勤怠管理の生産性を向上します。裁量労働制などの多様な働き方を導入する場合でも適切な勤怠管理ができるシステムの一例をご紹介します。

就業奉行i11(勤怠管理クラウド) │ 株式会社オービックビジネスコンサルタント

多様化する働き方に対応するクラウド型勤怠管理システム。オフィスに設置するタイムレコーダのほか、PCやモバイルデバイスでのWeb打刻などから時間や場所に合った打刻方法を選べます。出退勤管理や残業時間計算・休暇管理が自動化できるため、集計業務の時間短縮も実現します。

就業大臣NX │ 応研株式会社

勤怠管理の日常業務や月次業務を効率化できる就業・勤怠管理システム。変形労働やフレックスタイム制など多様な働き方に対応し、長時間労働の徴候を早期発見できるアラートや、勤務間インターバル制度の運用を管理する機能など、働き方改革をサポートする機能が充実しています。

jinjer │ 株式会社ネオキャリア

人事、給与計算、労務管理などの機能と組み合わせて使えるクラウド型勤怠管理システム。多様な打刻方法でテレワークにも対応可能で、労働時間の集計や各種申請、休暇や残業時間の状況などを、リアルタイムで管理できます。月末までの合計労働時間を予測して、過重労働を未然に防ぐ機能も。

働きやすく成果の上がる裁量労働制を!

裁量労働制は、働き方や働く時間が従業員に委ねられているため、職種によっては働きやすい環境を実現できる制度です。ただ、労働時間に関するチェックが働きにくいため、長時間労働などの労務上の問題が起こりやすい制度でもあります。自由かつ成果の上がる裁量労働制を実現するためには、裁量労働制のルールを正しく知ること、そして適切に労働時間を把握することが不可欠です。働き方改革関連法に対応して労働状況の改善を図るためにも、裁量労働制の勤怠管理を進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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