防災週間をきっかけにBCPの従業員教育を進めよう

From: 働き方改革ラボ

2020年08月04日 07:00

この記事に書いてあること

企業が、災害などの非常時における事業継続のための手段を定めたBCP(事業継続計画)。東日本大震災や、台風や豪雨などの被害発生のたびにその重要性が再認識されています。企業経営や社会的な信頼獲得の観点から、経営者や計画を担当する部署ではBCPの意義は把握されているものの、全従業員にはまだBCPが浸透していないという会社も多いのではないでしょうか。今回は、8月末から防災週間が始まるこの機会に、従業員のBCPに対する理解を深めるために必要な取り組みについて、解説します。

防災週間とは?

防災週間とは、9月1日の防災の日を中心とした8月30日~9月5日の1週間。1923年の関東大震災の発生日が、防災の日の由来です。防災の日と防災週間は、政府により、国民が台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などの災害への認識を深めて備えを強化し、災害の未然防止と被害の軽減を目指すことを目的に定められています。

防災週間には全国的に、防災訓練や防災知識普及のためのセミナーなど、国民が防災意識を高めて備えを進めるための活動が行われます。

BCPをおさらい

BCPとは、Business Continuity Plan=事業継続計画のこと。企業が自然災害や感染症の感染拡大などの緊急事態に遭遇した際に、事業資産の損害を最小限にとどめながら中核事業の継続や早期復旧を実現するための手段をあらかじめ取り決め、文書化したものです。災害により企業の事業継続ができなくなると、従業員の働く場所の喪失や、事業の廃止・倒産といった事態を招きます。BCPの策定が緊急事態に対応する企業の力の向上や、経営体制の強化につながります。

BCPは、被災時の企業の事業継続や早期復旧を目指す計画のため、人的・物理的被害を防ぐことや軽減を目指す防災計画とは異なります。

効果あるBCPには従業員教育が不可欠

災害時の売上維持や、非常時も社会的役割を果たしながら会社を存続させることを目指すBCP。大雨や台風による災害が毎年のように発生している中、防災計画だけでなくBCP策定を進めることが企業にとって重要です。また、BCPは策定して完結するものではありません。BCPを社内に浸透させなければ、内容を従業員が知らずに実際の非常時に対応ができなかった、現場の実態に沿うものではなく実現できなかった、といった事態を招きます。本当に役立つBCPには、従業員教育や全社的な協力体制が欠かせません。

BCP浸透に必要な取り組みとは?

では、BCPを全社員に浸透させるためには何が有効なのでしょうか。具体的な施策について解説します。

各部門別のBCPマニュアルを作成

緊急時に本当に役立つBCPを策定するため、BCPと併せて部門ごとの行動や役割を示すマニュアルを作成しましょう。部門ごとのマニュアルでは、非常時の指示系統や連絡体制、また各担当者の役割も定めることが大切です。それぞれの社員が災害時にどう行動すべきなのか明確にすることで、現場の実情に合った計画を立てることができます。

やるべきことの優先順位や非常時の判断基準を示すために、フローチャートでステップを示すとわかりやすいマニュアルが作成できます。災害時のBCP運用だけでなく、成果のあるBCP訓練を行うためにも、マニュアルの準備は不可欠です。

BCPの知識を学ぶ従業員教育

継続的にBCPに関する従業員教育を行うことが、BCP定着と非常時の適切な運用に不可欠です。BCPの内容やマニュアルについて学び、理解を深めるための研修を実施しましょう。また、BCPを従業員が自分ごとととらえるためには、防災に関するディスカッションや、チームで課題の解決策を導くワークショップを交えた研修が有効です。

従業員に防災に関する知識や技能を身に付けてもらうこともBCP教育のひとつです。消防署等で開催されている心肺蘇生法や応急救護の講習の受講を促す、商工会議所等が開催するBCP関連セミナーの受講を支援するなどの取り組みを進めましょう。

BCP定着のためのコミュニケーション

BCP定着のためには、経営者や管理職層が、平時からBCPに関して従業員とコミュニケーションをとっておくことが大切です。具体的には、経営者が従業員に現在のBCPの状況や問題点について説明する機会を設けましょう。年に一度などのペースで、定期的にBCPの進捗や課題を従業員に報告することで、BCPの重要性を伝えることができます。また、各部門のトップや管理職が、各従業員のBCPにおける役割を確認することも大切。従業員側からも、自分のBCPの役割に関する取り組み状況を報告する機会を設けることが、ひとりひとりの意識向上につながります。

製造ラインや業務フローが変わる際にも、変更がBCPにどう影響するのかを部門のトップが確認した上で、従業員に共有しましょう。従業員の理解度をチェックするために、業務に負荷をかけない程度の簡素なアンケートを定期的に実施することも有効です。

BCP関連のミーティングにまとまった時間をとるのが難しいケースは、定例の会議や勉強会などの中に5分だけ、BCPに関する経営者からの状況報告の時間を設けるだけでも効果的です。BCPの定着には、BCPについて考える時間を定期的に作ることが大切です。

BCP訓練で従業員にも高い意識を

非常時に有効にBCPを活用するため、また従業員に主体的にBCPに取り組んでもらうために、定期的に訓練を実施しましょう。非常時の従業員間の協力体制を確認するためにも、訓練は重要です。

BCPの全ステップの訓練を一度に実施することは、業務時間の圧迫や従業員の負荷につながりますので、一部分を取り出した訓練がおすすめです。会議室等で災害発生を想定して意思決定をしていく「机上訓練」や、緊急時の連絡や通報の演習、バックアップデータの取り出し、代替施設での訓練など、無理のない範囲で実施します。ひとつひとつの行程を、確実に習得していきましょう。また訓練は、日ごろの従業員の業務に関連する内容で実施することがおすすめです。ふだん使用している部品の代替調達先を考えるなど、仕事の延長上で訓練をすることで、社員が積極的にBCPに取り組むことができます。

訓練には、策定したBCPの有効性を評価するという目的もあります。従業員数や規模などの企業の現状や社会状況によって、あるべきBCPの内容は変わります。改善点の発見のためにも、最低でも年に一度は訓練を実施しましょう。タイミングを決めるのが難しい場合は、年に一度の防災訓練にBCP訓練を組み入れると実施しやすくなります。

さまざまなリスクに備えてBCP教育を進めよう!

近年は自然災害だけでなく、感染症による企業活動の制限や外出自粛といった状況も発生。企業には、多様なリスクへの対策が求められています。感染症拡大に対しては自然災害向けのBCPとは異なる対策が必要ですが、起こり得るさまざまな事態に備えた教育や意識付けを日ごろから行うことが大切です。8月30日~9月5日の防災週間をきっかけに、本当に有効なBCP策定のため、従業員教育を進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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