障がい者雇用にあたって、押さえておきたいポイントと必要な基礎知識

From: 働き方改革ラボ

2020年08月25日 07:00

この記事に書いてあること

令和元年に成立した「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)の一部を改正する法律」が、2020年4月に施行されました。その中で、民間の事業主に対する措置は「特例給付金」と「障害者雇用に関する優良な中小事業主としての認定制度」の新設です。今回はこの2つの改正点に触れながら、障がい者雇用の現状と、雇用するにあたっての具体的なポイントについてまとめていきます。

障がい者雇用の現状

障害者雇用促進法では「障害者雇用率制度」が定められており、従業員に占める身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の割合を法定雇用率以上にすることが義務付けられています。民間企業の法定雇用率は2.2%ですが、厚生労働省のサイトによると、平成30年6月時点での障がい者の実雇用率は2.05%とのことでした。また、障がい者雇用率達成企業の割合は45.9%となっています。

厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査結果によると、雇用の課題としては「会社内に適当な仕事があるか」という点が最も多く挙げられました。さらに、「職場の安全面の配慮が適切にできるか」「障害者を雇用するイメージやノウハウがない」「採用時に適正、能力を十分把握できるか」といった回答も多くみられました。

障がい者雇用のメリットやポイント

障がい者雇用を積極的に行うことのメリットやポイントについて触れる前に、まずは「障害者雇用納付金制度」について触れておきたいと思います。

「障害者雇用納付金制度」は、障がい者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、障がい者の雇用促進と職業の安定を図るため、障がい者雇用促進法に基づいて設けられた制度です。障がい者の実雇用率を満たしていない事業主(常用労働者が100人を超える企業)は、「障害者雇用納付金」が徴収されるほか、雇用状況に改善が見られない場合には、企業名が公表されることになります。

以上を踏まえ、障がい者雇用のメリットやポイントについて見ていきましょう。

事業主に対して助成金や給付金が支給される

障がい者雇用に関する助成金は、週所定労働時間や雇用形態などに応じてさまざまなものがありますが、なかでも「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」は、「障害者雇用納付金」で徴収された納付金を財源とする助成金です。これは、施設等の整備や適切な雇用管理の措置を行った場合に支給されます。

「障害者雇用納付金」を財源としたものには、上記のほかに「障害者雇用調整金」「報奨金」「在宅就業障害者特例調整金」「在宅就業障害者特別報奨金」「特例給付金」があり、今回の法改正で創設された「特例給付金」は、週10~20時間未満で働く障がい者を雇用する事業主に対して支給される給付金です。従来の法律では、週所定労働時間が20時間未満の働き方は、職業的自立を促す観点から、支援の枠組みの対象外でした。しかし、就労を希望する障がい者が増加し、その中には障がいの特性から短時間であれば就労可能な障がい者が一定数見られたことから、こうした障がい者の雇用機会を支援するために創設された仕組みです。

優良事業主として認定される

今回の法改正では、雇用する労働者が300人以下の中小事業主について、一定の基準を満たす場合、厚生労働大臣から優良事業主として「認定」を受けることができる制度が創設されました。認定を受けた中小事業主は、認定マークを商品や広告等に表示することができます。

認定マークの取得によって、障がい者雇用の促進・安定に関する取組が優良であることをアピールできると同時に、障がい者と中小事業主とのマッチングを図ることにもつながり、障がい者雇用の促進が期待できます。

障がい者雇用を行う上で気を付けるべきこと

障がい者を雇用するにあたり、いくつか注意すべきポイントがあります。

まずは、職場環境の見直しです。障がいにはそれぞれ特性があり、それによって配慮すべきことは変わってきますが、例えば必要な箇所のバリアフリー化や通勤への配慮、障がいの特性に配慮したマニュアルが用意されているかなどが挙げられます。当事者とよく話し合いながら、事業主にとって過度な負担にならない範囲で合理的配慮を行い、働きやすい環境を整えることが大切です。

次に、障がい者雇用への理解です。経営者や人事担当だけではなく、現場で一緒に働く従業員にも障がい者雇用についての理解が浸透している必要があります。社内全体で障がい者雇用に関心をもち、目的や理解を深めて認識を統一することで、スムーズに雇用を進めていくことができるでしょう。

テレワークを利用した障がい者雇用

一部の障がい者には、通勤の困難さから、働きたくても働けない人々がいます。それと同時に、通勤を伴う求人では雇用を増やすことが難しく、障がい者雇用に苦戦する企業も多く存在します。こうした問題を抱える両者を結び付ける打開策として、テレワークを前提とした雇用が注目されており、さまざまな企業がテレワークでの障がい者雇用に踏み出しています。では、実際にどのような業務を可能にするのか、いくつか事例を見ていきましょう。

株式会社リクルートオフィスサポート

リクルートグループが運営するサイトの情報審査業務を担当。テレビ会議で朝会や業務報告等を行い、本人の状態や体調に応じて業務量を調整するなどの配慮を行っています。

阪和工業株式会社 

営業部にて、基幹システムの入力業務や市場調査、メーカーのリスト作成等の業務を担当。雇用管理や資料の共有等は、主にテレビ電話やチャット機能を活用しています。また、支援機関と連携し、業務のフォロー及び定着支援を行っています。

合同会社DMM.com  

自社サイトの更新や、バナーやポスターの製作をはじめ、会員の入退管理や請求書の確認、支払・発注申請等の業務を担当。勤怠状況を管理者がこまめに把握し、日報を提出してもらうことで生産性を可視化しています。

LINEビジネスサポート株式会社 

電子コミックサービスやブログサービスのモニタリング業務を担当。不適切なレビューやコメントの削除、記事内容や投稿欄のコメントがサービス利用の基準に則しているかのチェックをしています。就労定着支援機関と連携し、業務内容の決定および定着支援のフォローも行っています。出退勤は「LINE」で確認し、業務内容の確認等は社内メッセンジャー機能を利用しています。

誰もが働きやすい環境を

障がい者雇用は一見難しそうに見えますが、リモートワーク等を活用することで雇用しやすくなり、障がい者の雇用促進につながることが期待できます。来年度までには法定雇用率が2.3%に引き上げられることになっており、まだ障がい者の実雇用率を満たしていない企業は雇用の対応を、すでに実雇用率を満たしている企業は、さらに充実した社内環境の構築や雇用制度を整えることが求められています。障がい者雇用の好事例を参考に、誰もが働きやすい環境について、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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