ワクチン接種で会社の制度に変化?アフターコロナに向けた働き方改革の準備とは

From: 働き方改革ラボ

2021年08月24日 07:00

この記事に書いてあること

市町村による分配や企業や大学等の実施によって、高齢者以外の年代でも新型コロナウィルスのワクチン接種が進んでいます。今後接種が広がることで、2020年春以降、推奨されてきたリモート中心の働き方も変化していく可能性があります。

在宅勤務を制度として継続する企業もあれば、出社や対面での会議が増えるなど、変化する企業もあると考えられる状況です。そこで今回は、アフターコロナに想定される働き方の変化と、それに伴って発生する問題と解決策をお伝えします。

コロナワクチン接種時に必要な企業の対応

ワクチン接種に関する地域の負担を軽減し、接種を加速させるために進められている、新型コロナウィルス感染症ワクチンの職域接種。2021年8月8日までの集計では、職域接種は全国で1回目接種6,577,221回、2回目接種2,704,798回という実績が報告されています。(8月18日公表時点)

また、個別で予約を取りワクチンを接種する社員のため、ワクチン接種用の有給取得を促進したり、ワクチンを打つための特別休暇を設けたりする企業も増えています。

今回のワクチン接種は、感染症のまん延防止の観点から「接種を受けるよう努めなければならない」と定めた予防接種法に基づいて進められています。
ただ、集団的免疫の獲得には集団の70%以上のワクチン接種が必要と言われているものの、ワクチン接種は努力義務で、強制ではありません。

ワクチンのメリットやデメリット、またアレルギーなどの体質をふまえた上で個人が接種について判断をするため、会社側が社員のワクチン接種をルール化することはできません

ワクチン接種後の社員への対応

新型コロナウィルスワクチンを接種した翌日は、発熱や倦怠感などの副反応が生じやすいと言われています。

そのため厚生労働省は、社員が安心してワクチンを受けられるように、企業は、接種後に労働者が体調を崩した場合に備えた休暇制度を設けることが望ましいとしています。

政府は企業に対し、接種後の副反応が起きたときに利用できる新しい休暇制度や、既存の病気休暇をワクチン接種後の体調不良時にも利用できるよう見直すなどの対応を呼びかけています。

ワクチン接種が進む中で企業に求められるのは、接種をしたい社員も、希望しない社員に対しても、その意思を尊重することです。さらに、ワクチン接種を希望する社員には、特別休暇などの制度作りによって、安心して接種ができる環境を整えることが求められています。

アフターコロナに起きる働き方の変化

ワクチンの接種が浸透し、さらには新型コロナウィルスの感染者数が抑えられる状況になった後は、働き方にはどのような変化が起こるのでしょうか。企業や従業員の間では、以下のような動きが予想されます。

ワクチン接種後もテレワークは続く?

ワクチンは、感染を100%防げるものではありません。新型コロナウィルスのワクチンの効果は、発症の予防や、重症化の予防と言われています。一方で、変異によってワクチンの効果に影響が生じる可能性も指摘されています。

そのため、ワクチンを接種した後も、密集・密接・密閉の回避や、マスクの着用などの感染予防対策が求められます。

企業活動においても、ワクチン接種が進んでからも、在宅勤務などの感染予防対策を続けることが重視されています。
また、新型コロナウィルスをきっかけに進んだ在宅勤務を採用し続けることは、多様な働き方の広がりや、社員のワークライフバランスの実現、働き方改革の面でのメリットがあります。

ペーパーロジック株式会社が、2021年7月1日~2021年7月3日に行ったアンケートによると、週3日以上テレワークを行っている会社員のうち、今後もテレワークが「絶対に続いてほしい」という人は62.4%、「やや続いてほしい」が31.2%でした。約9割の人が、テレワークの継続を望んでいるという結果が出ています。

また、ザイマックス不動産総合研究所が2021年1月27日~2月5日に首都圏の企業に対して実施した「働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査」でも、コロナ収束後、少しでもテレワークを行う意向がある企業は75.7%と、全体の約3/4を占めました。

テレワークによって「オフィスコストの効率化」や「離職率の低下(育休女性の復職率アップ等)」などのメリットが得られると感じている企業が多く、社員、企業ともに、アフターコロナもテレワークを継続したいという意向が見てとれます。

必要なときに出社というスタイルに変化

コロナウィルスをきっかけに、テレワークと出社を組み合わせた「ハイブリット体制」と呼ばれる働き方にも注目が集まっています。

基本的には在宅で仕事を行い、社員が共同作業をするべきときや、対面でのコミュニケーションが必須の場合だけオフィスに出社するというスタイルが、これから一般化することが見込まれます。

前述のザイマックス不動産総合研究所によるアンケートでも、コロナ収束後に目標としたい出社率を「50%以下」と答えた企業は26.6%。2020年12月実施の調査より、10ポイント以上増加しています。

また、出社率を50%以上にしたい企業は、62.2%と過半数を占めているものの、12月調査時と比較すると20ポイント以上減少しています。出社かテレワークのどちらかと決めるのではなく、出社とテレワークを業務内容によって使い分けたいと考えている企業が多くいることがわかっています。

オフィスの役割やあり方が変わる

テレワークと出社の使い分けが進むことで、オフィスのあり方を見直す企業も増えると予想されます。新型コロナウィルスへの対策が長期化する中で、オフィス面積の縮小や、コンパクトなオフィスへの移転のほか、固定のオフィスを手放してコワーキングスペースを活用したり、都市部以外に本社を移転したりといったケースも見られます。

上記のザイマックス不動産総合研究所のアンケートでも、コロナ危機収束後のオフィス面積を「縮小したい」(30.0%)という回答が「拡張したい」(4.1%)を大きく上回っています。
一方で、「オフィスの安心安全な環境をどう整備するか」「オフィスの最適なレイアウトをどう考えるか」など、オフィス運用の課題を抱える声も聞かれます。

今後、在宅勤務やサテライトオフィスとの併用の中で、出社用のオフィスの意義が、見直されつつあります。

働き方の多様化にともなう問題と解決策

アフターコロナにおけるワークスタイルの形が見えつつある一方で、働き方の多様化は新たな課題にもつながります。アフターコロナの働き方の変化に伴う問題とは何でしょうか?

出社・テレワーク併用前提のルール作り

企業に対する働き方関連の調査結果からもわかるように、アフターコロナにおいては、テレワークと出社を併用する企業が増える見込みです。そのため、感染症禍の臨時的な対応という位置づけではなく、テレワークと出社の併用体制が続くことをふまえた、働く環境作りが求められます。

端末や、自宅などで仕事をする際のインターネット環境の整備のほか、セキュリティ対策など、テレワークでもオフィスと同じように安心して働ける仕組み作りを進める必要があります。

また、WEB会議ツールやチャットツール、また会議用のカメラやマイクの準備など、快適なリモートワークを実現するツールも欠かせません。テレワーク社員が必要な経費などの手当、テレワーク中の出退勤報告などに関する新しい規則も求められます。

テレワークの対象や、出社が必要なケースに関する制度も必要です。テレワーク対象者の選定や出社頻度、テレワークの許可・承認に関する制度も、会社の実情に合った形で整備しましょう。

出社が必要な業務に就く社員の不公平感

出社が必要な社員が、テレワークが可能な社員に対して抱く不公平感も、アフターコロナの働き方における課題です。出社組の社員が、テレワークと出社を柔軟に選べる社員や、テレワーク中の仕事の成果に対して不満や疑問を感じる状態は、個人のモチベーションやチームワークのパフォーマンスの低下を招くため、注意が必要です。

出社が必要な社員の不満解消には、テレワーク社員の仕事の可視化や、テレワーク社員とのコミュニケーションの円滑化が有効です。
タスク管理ツールの導入や、定例ミーティングの実施、チャットの雑談ルーム開設といった取り組みで、社員間の連携やコミュニケーションを強化しましょう。

郵便物の受け取りや契約書関連業務の必要性から、特定の部署の社員が出社を余儀なくされるケースもあり、不公平感を招きます。
この問題の対策としては、請求書などの書類の電子化によってリモートで対応可能な業務を増やす、電話やFAXは転送サービスを活用するなどの施策が有効です。出社組の社員の負担が増えない環境を作ることも、アフターコロナの働き方を改善するポイントです。

オフィス環境の見直し

テレワークとの併用が進むアフターコロナにおいては、オフィス環境の見直しも課題のひとつ。新型コロナウィルスのワクチン接種が進んでも、引き続きオフィスにも感染防止対策が必要です。

三密にならない執務スペースのレイアウトや、社員が顔を合わせる場所での飛沫防止パネルの設置といった感染対策が求められます。出社社員数が減る場合は、オフィス空間を有効活用するため、フリーアドレス制への切り替えも検討しましょう。

また、在宅での仕事が一般化すれば、オフィスは社員同士が集まって、コミュニケーションを行う場所としての機能が高まります。共同作業やミーティングを安全・快適に行えるミーティングルームや、雑談を生むカフェスペースなど、活発なコミュニケーションを促すオフィス環境作りが今後求められるでしょう。

従来のルールに縛られず変化をチャンスに

新型コロナウィルスは、テレワークをはじめとした新しいスタイルの浸透や、非効率な働き方が見直されるきっかけになりました。ワクチンの接種が進んだアフターコロナにおいても、評価された新しいワークスタイルは浸透していくでしょう。

企業にとっては、コロナ前の制度や慣習にとらわれることなく、社会状況に対応しながら、従業員にとって働きやすい環境を作っていくことが大切です。変化をきっかけにルールを整備することは、働き方改革を大きく前に進めるチャンスでもあります。アフターコロナを見据えて、制度作りやオフィス環境の見直しを進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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