加速する建設業界の働き方改革。官民一体の取り組みとは?

From: 働き方改革ラボ

2019年01月16日 07:00

この記事に書いてあること

建設業界の労働時間は平均より300時間も長い

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、建設業界の年間総実労働時間は年間で2,056時間。これは、製造業界の1,951時間と比較すると105時間、全産業平均の1,807時間と比較すると300時間の差があります。

しかも技能労働者の給与形態は約6割が日給制で、収入減を嫌う傾向が。それが原因となり、他産業では当たり前になっている週休2日も1割しかとれない状況に陥っています。また、社会保険に非加入の企業も多数存在していました。

今でこそ首都圏を中心に建設ラッシュが続いていますが、約500万人いると言われる就業者も約3割が55歳以上で、団塊世代の大量離職が見込まれる10年後には労働力が一気に低下する可能性も。将来の担い手がいなくなれば、建設現場は当然立ちいかなくなり、インフラ整備や災害対策が後手に回って国民生活に多大な影響が及ぶ恐れも考えられます。

国を挙げて取り組まれている建設業界の働き方改革

そこで現在、国土交通省を中心に建設業界の働き方改革が進んでいます。2018年3月には「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上の3つの分野における新たな施策を打ち出しました。

たとえば、公共工事は週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大させるほか、民間工事でもモデル工事の試行を促すように。また、週休2日の実施に伴い、労務費、機械経費(賃料)、共通仮設費、現場管理費などを現場閉所の状況に応じて補正係数を乗じ、必要経費として計上できるようにしました。社保未加入の建設業社には営業を認めない、指名停止にするなどの厳罰化も進んでいます。

加えて、建設技能労働者の経験と実力に見合った評価や処遇が受けられるように「建設キャリアアップシステム」を構築。IDが付与されたICカードを技能者一人ひとりに交付し、日々の就労実績や資格取得などの情報を記録・蓄積させることで、個々人の技術や知識を客観的に示すものとして機能させようというわけです。こちらは2018年秋から運用が始まり、初年度で100万人、5年ですべての技能者の登録が目標とされています。

また、建設現場にICT(情報通信技術)を導入し、生産性向上に役立てようとする「i-Construction」も進んでいます。例えば、ドローンによる3次元測量や、そのデータに基づいた設計・施工計画の算出なども徐々に実現しているようです。

建設業界内でも働き方を見直す機運が

こうした国の動きと並行して、建設業界内でも労働環境の改善に意識が向けられています。全国建設業協会は、2017年9月に「働き方改革行動憲章」を策定。また日建連日本建設業連合会も同年12月に「週休二日実現行動計画」を策定しました。それに呼応するように大手企業にも動きが。

竹中工務店では、2017年に「ワーク・ライフ・バランス向上委員会」を設置。社長自らが委員長となり、労働時間の削減や休暇取得率向上などを推進するための施策を行なっています。

また鹿島建設では、2021年度までに週休2日実施率100%、もしくはそれに相当する年間104日の休日取得を目指す方針を打ち立てました。現在は、現場レベルでの意識や行動の改革に取り組んでいるそうです。

一方、中小企業でもICT活用や人材育成に積極的に取り組めるように、さまざまな改正が行われています。例えば、従来は25%で一律設定されていたICT建機の施工単価が区分され、稼働実態に応じた積算・精算が可能に。小規模土工の単価も新設されました。加えて、入札時や施工時に発生する書類作成の負担を軽減できるようにする動きも見られます。

ICT化で変わる建設業界の働き方

これまで見てみてきたように、建設業界全体で労働環境を整備するためのさまざまな施策が進んでいます。では、会社や個人で取り組めることはないのでしょうか。その鍵を握るのがスマートデバイスの活用です。

近年は、業務を効率化するためのさまざまなサービスが登場しています。例えば、スマホのアプリで工事写真を撮影し、その場でクラウドに保存すれば、カメラで撮影したものを帰社後に取り込んで分類する作業を省くことができます。また、図面をアプリでデータ化することで、持ち物を減して移動することも。

図面資料閲覧

これまで紙で管理していた図面をタブレット端末などで確認できるように。大量の紙図面を持ち出す必要がなくなります。

CheXAutoCAD モバイル アプリBIMxスパイダープラスTerioCloudIJCAD Mobileなど

写真管理

撮影した写真を工事現場別に自動で振り分けて工事写真台帳化。作業後の事務作業を大幅に削減できます。

蔵衛門工事黒板現場DEカメラRICOH SnapChamber SiteBox写達 for iPadなど

監視カメラ(Webカメラ)

これまで人が行なっていた監視活動をWebカメラで代用。センサーが異常を感知すると警告が発報されます。

MAMORY現場ロイドなど

これ以外にも、ドローンを飛ばして土量計算に活用したり、多くの時間と量力を費やしていた部材の製造を3Dプリンタを活用することで短縮化できるようにもなっています。近い将来には、ロボットが活躍する現場が増えるかもしれません。

とはいえ、建設業界の働き方改革はまだまだ始まったばかり。業界の動向と併せて、働き方もさらにアップデートしていくでしょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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