【5分でわかる】建設業もペーパーレスに!導入方法や事例を解説

From: 働き方改革ラボ

2022年08月26日 07:00

この記事に書いてあること

これまで建設業界では、その他の業界と比べてペーパーレス化の導入が遅れていました。その理由として、書類に依存した業務が多いことが挙げられます。

そんな建設業においても、法改正やテレワークの増加などの影響からペーパーレス化が進みつつあります。この記事では、ペーパーレスの導入メリットや企業の成功事例をご紹介します。

※2021年9月に公開した記事を更新しました。

建設業におけるペーパーレス化とは

建設業界のペーパーレス化が遅れていた理由のひとつに、後述する「ピラミッド構造」が挙げられます。

新型コロナウィルスにおけるテレワーク導入などの影響からペーパーレス化が浸透しつつありますが、どのような背景があったのでしょうか。

建設業におけるペーパーレス導入の背景

建設業界における工事発注の仕組みは、元請けから一次、二次受けと続く「ピラミット構造」と呼ばれています。それぞれの業者間で、見積もりや契約、請求などのステップが必要なため、建設業界では書類によるやりとりが多く発生してしまいます。

また、建設業では契約や検査のために資料や膨大な図面が必要となります。他の業界ではペーパーレス化やデジタル化が広がっているなかで、建設業界の働き方改革のためにも、脱・紙文化が課題となっているのです。

国によるペーパーレス化推奨

現在、さまざまな職種においてペーパーレス化が推奨されています。建設業界での業務にも関わりのある電子文書法や電子帳簿保存法の施行・改正の流れを見ても、国が推奨していることがうかがえます。

現場対応が多い建設業においても、新型コロナウィルス感染症対策からテレワークが導入されており、ペーパーレス化はさらに進むと考えられます。

2001年、工事請負契約書の電子化が可能に

2001年4月に建設業法が改正されるまで、建設業界では書面化義務が課されていました。しかしこの改正によって、取引相手の承諾を得れば、工事請負契約書を電子契約で締結することが可能となりました。

電子文書法施行で書類の電子データ化が可能に

2005年に施行された電子文書法は、会社法や商法などで保管が義務づけられている書類を電子データ化して保存することを認める法律です。

電子文書法の施行によって、電子データを確認・出力できる「見読性」、改ざんを防ぐ「完全性」、不正アクセスの対策を取る「機密性」、必要なデータをすぐに活用できる「検索性」といった条件を満たすことにより、書類をペーパーレス化して保存できるようになりました。

電子帳簿法でペーパーレス化の規制が緩和

2020年10月には、国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを認める電子帳簿法が改正されました。この改正によって、改ざんのリスクがないクレジットカードの利用明細データはタイムスタンプが不要になるなど、規制が緩和されました。

改正の背景には、キャッシュレス決済の普及があります。職種問わずペーパーレス化の流れが進んでいると考えられます。

建設業におけるペーパーレス化のメリット3つ

ご紹介したように、ペーパーレス化は国も推奨していると言えます。それは建設業においても変わりません。

これまで書類でのやりとりが多かった建設業だからこそ、ペーパーレス化のメリットは多くあります。そこで、建設業におけるペーパーレス化の3つのメリットを解説します。

従業員の負担軽減

ペーパーレス化の最大のメリットは、なんといっても業務の効率化です。契約書や記録用の書類の電子化によって、書類作成や管理の手間が減ります。

図面では版が変わることが多くありますが、それらを電子で管理できるようにすれば、資料の先祖帰りによる情報の混乱や手戻りを防ぐことができます。

また、修正のたびに印刷して持ち出す必要がなくなり、現場ですぐに確認ができるのもメリットです。印刷のために事務所に戻るといった移動時間の短縮も図れます。

書類をデータで保存することで、閲覧・検索もスムーズに行えます。また、ワークフローをサポートするICTツールの活用を進めれば、業務プロセスの効率化にもつながるでしょう。社員間や部署間での連携が円滑化し、会社全体の生産性が向上します。

紙に関わるコストの削減

ペーパーレス化によって、紙資料の印刷や保管にかかるコストを削減できることも、メリットのひとつです。インクなどの印刷費や紙の費用といった物理的なコストはもちろんのこと、大量の資料を運ぶ輸送コストや資料を探す手間をカットできるのもメリットです。

コンプライアンス強化

資料の電子化によって、書類に関するコンプライアンスを強化できる点もメリットです。ICTツールやクラウドサービスを活用することで書類のチェックがスムーズになり、法律に基づく社内監査の円滑化に繋がります。

そして、紙資料の持ち運びや保管中の紛失による情報漏洩のリスクを防げる点も重要です。データの閲覧権限を設けられるツールもあるため、資料のセキュリティが強化されるなど、安全面においてもメリットがあります。

建設業界におけるペーパーレス化の具体的な取り組みとは

では実際に、建設業界ではどのようなペーパーレス化が行なわれているのでしょうか。具体的な例を4つご紹介します。

受発注システムによる取引書類の電子化

建設業界のペーパーレス化の取り組みとして一般的なのが、受発注システムを使った書類の電子化です。

先述したように、2001年の建設業法改正によって建設業における電子契約書の使用が認められ、大手企業を中心に電子化が進みました。

インターネット上で見積回答や契約締結を行なえるシステムも開発されているため、押印や郵送など時間や手間のかかる作業を削減でき、スムーズな取引が可能になります。

クラウドサービスでの書類管理

建設業界に欠かせない施工図面などの大量の紙資料を、クラウドサービスで管理・共有することも有効です。工程管理表などを作成してクラウドサービスで一元管理すれば、資料を探す手間や紛失のリスクが減り、業務の効率化に繋がります。

ファイルにまとめて現場で持ち運び、作業や確認のたびに使用している図面も、クラウドサービスで管理することにより、タブレットやスマートフォンさえあればいつでも確認できます。

施工管理アプリの利用

建設業界の業務に特化した施工管理アプリも、施工現場における生産性向上を実現できます。施工管理アプリとは、帳簿や図面、写真など、工事に関わる情報を一括管理できるツールのことを指します。

アプリに保存した資料をスマートフォンやタブレットを使って確認することも可能です。さらにチャットを利用することでコミュニケーションを円滑化するツールも注目されています。

オンライン上で電子納品

電子納品とは、工事の写真や図面、書類などの完成書類の一部を電子成果品として提出することを指します。従来、これらの成果品は紙で提出されてきましたが、大量の書類の作成や、保管に時間や手間がかかります。そのため、国土交通省も電子納品を推奨しているのです。

CD-Rへの格納や郵送などの作業負担軽減を目的に、現在もオンライン上で電子納品が可能なシステムの開発が進められています。

建設業のペーパーレス化の導入方法5ステップ

ペーパーレス化の導入によるメリットはたくさんあるものの、紙文化の強い建設業では混乱することがあるかもしれません。

そこで、建設業においてペーパーレス化をスムーズに導入する方法を、5つのステップに分けてご紹介します。

ペーパーレス化する書類を決める

はじめに、ペーパーレス化したい書類に優先順位をつけます。

現在の法律では、すべての書類が電子化できるわけではありません。そのため、電子化できる種類を踏まえてからペーパーレス化したい書類を仕分ける必要があります。

建設業の場合、書類といっても契約書や図面などさまざまな種類が存在します。そのため、まずはよく使う契約書や社内で完結する図面などからペーパーレス化することをおすすめします。

ITツールを選ぶ

次に、ペーパーレス化する際に使用するICTツールやクラウドサービスを選定します。

選定の際には、複数のツールを比較することが重要です。ペーパーレス化できる書類には何があるか、見積回答や契約締結なども同じツール内で完結できるかといった点を見ながら確認するといいでしょう。

トライアル期間を活用する

導入したいITツールを決めたら、すぐに契約せず、トライアル期間を活用しましょう。

トライアル期間を通して使い心地を確かめたり、社内に共有する準備を進めたりする時間を設けることで、スムーズな導入につながります。

社内で共有する

建設業においては、事務所内ではもちろん、現場でもICTツールを使用する機会が多くあります。そのため、事前にICTツールの使い方について共有する時間を設ける必要があります。

まずはペーパーレス化する書類を多く扱う担当者や、現場作業の多い社員への共有からはじめて徐々に広げていくといいでしょう。説明会の開催のほか、マニュアル作成も必要です。

運用を開始する

社内での準備を整えたら、ICTツールの運用を開始し、ペーパーレス化を本格導入していきます。

導入後は効果測定をしながらペーパーレス化の幅を広げていくと便利です。実際にどれだけのコストが削減できたのか、どのような効果があったのかなどを測定しまとめることで、ペーパーレス化が浸透しやすくなります。

建設業におけるペーパーレス化導入の2つのポイント

建設業におけるペーパーレス化導入にあたって、とくに意識していただきたいポイントが2つあります。

はじめから全部ペーパーレス化しようとしない

先述したように、ペーパーレス化をスムーズに進めるためには、段階的に導入していくことが必要です。ペーパーレスした方が効果的なものなのかどうか効果を見極めながら順次対応していくことが大切です。

タブレットを活用する

ペーパーレス化の際、同時に検討していただきたいのが、タブレットの導入です。

たとえペーパーレス化が実現したとしても、現場作業の途中にパソコンを開くことも負担になってしまいます。タブレットならノートのような感覚で取り出せますし、電子ペンを使ってPDFに書き込むこともできるので便利です。

建設業におけるペーパーレス化の成功事例3選

建設業界では、実際にどのようにペーパーレス化が実施されているのでしょうか。中小企業の取り組みを中心に、ペーパーレス化の成功事例をご紹介します。

複合機を活用し、コスト削減に成功

埼玉県越谷市で造園土木業を展開している株式会社サンエー緑化はFAXでのやりとりが多く、両面印刷やシュレッダーの利用などで工夫をしていましたが、その分余計な手間がかかってしまうことが課題でした。

しかし、ICTツールを導入し、FAX受送信機能を内蔵した複合機を活用することで負担が減り、ペーパーレス化を実現できました。

成功したのはコスト削減だけはありません。パソコンを支給し、日報をインターネット経由で書き込める体制を整えたことで社員の退社時間が早くなり、働き方改革の面でも大きく進展できました。

帳票のペーパーレス化で業務効率化

2021年12月より帳票のペーパーレス化や作業間調整会議のリモート化を導入した、西松建設株式会社。まずは建設現場での作業打ち合わせについて記録する「作業打ち合わせ簿」や翌日に引き継ぐ「危険予知活動記録」などの帳簿からペーパレス化を進めました。

帳簿は、関係者の受領とサイン、捺印が必要なほか、一定期間保管しなければなりません。現場帳票のペーパーレス化を導入したことで、ICTツールで書類を作成・出力し、インターネット上での確認・保管ができるようになり、手間や物理的コストの削減が可能になりました。

検索・閲覧機能で見たい資料をすぐ確認

和歌山県和歌山市を中心に、公共施設や注文住宅建設まで幅広い建設物を担当する、城善建設株式会社。工事写真の撮影や分類、施工体制台帳の作成や管理などに人員が必要となり、負担がかかるという課題を持っていました。そこへICTツールを導入したことで、パソコンでの書類管理が可能となり、従業員の負担軽減に成功しました。

電子管理だからこそのメリットとして挙げられるのが、検索・閲覧機能です。キーワードを打ち込むだけで該当する書類が出てくるため、書類を探す手間もなくなりました。

まとめ

建設業界のペーパーレス化は、コスト削減や業務効率化などメリットが盛りだくさんです。さらに、ペーパレス化で働きやすい職場環境が実現できれば、人材の定着や良い人材の採用といった効果も期待できます。今回ご紹介した導入方法や事例などを参考に、ペーパーレス化を進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

記事タイトルとURLをコピーしました!

https://www.ricoh.co.jp/magazines/workstyle/column/construction-industry-paperless/

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

働き方改革ラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ