外国人労働者を建設業で雇用するには|必要な在留資格の種類や注意点など解説

From: 働き方改革ラボ

2021年08月31日 07:00

この記事に書いてあること

日本における建設業界は、深刻な人手不足を背景に、外国人労働者の受け入れが進んでいます。この記事では、働き方改革の推進に伴い、自社での採用について検討している担当者に向けて解説しています。建設業の企業が外国人労働者を雇用する際に必要になる、在留資格の種類や注意点などについても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

建設業界での外国人労働者の実情

建設業界の外国人労働者の現状を把握するためのデータを紹介します。

厚生労働省の「就業条件総合調査」によると、2020年の外国人労働者の人数は以下のとおりです。
・技能実習生数 7.7万人(前年比117.9%)
・特定活動 5,303人(2015年は287人)

総務省統計局の「令和2年 労働力調査年報」「令和元年 労働調査年報」の「I-B-第8表 職業,産業別就業者数」によると、平均就業者数は前年から7万人の減少が見られました。
・2019年 499万人
・2020年 492万人

厚生労働省 報道発表資料にある「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)」では、2007年の届出の義務化以降、過去最高を更新しました。データは以下のとおりです。
・外国人労働者数 172.4万人(前年比6.5万人:4.0%増加、増加率:前年13.6%から9.6ポイント減少)
・外国人労働者を雇用する事業所数 267,243カ所(前年比24,635カ所:10.2%増加、増加率:前年12.1%から1.9ポイント減少)

国籍別の外国人労働者数と全体の割合は、以下になります。
・ベトナム 44.3万人(25.7%)
・中国 41.9万人(24.3%)
・フィリピン 18.4万人(10.7%)

一方、ブラジルやペルーなどの前年比は、減少傾向にあります。

在留資格別のデータは、以下のとおりです。
・「専門的・技術的分野の在留資格」の労働者数 35.9万人(前年比3万人:9.3%増加)
・技能実習 40.2万人(前年比1.8万人:4.8%増加)
・資格外活動(留学を含む) 37万人(前年比2,548人:0.7%減少)

「外国人雇用状況の届出状況まとめ」にある、産業別の割合における産業別の増加率において、建設業は前年比20.5%増加しています。

建設業の人手不足の原因と今後の外国人雇用の見通し

建設業における人手不足はなぜ起きているのか、原因や今後の見通しについて解説します。

人手不足の原因

建設業で深刻な人手不足が起きている大きな原因は、熟練技能者が高齢化し、現役を引退する人が大量にいるためです。

今後の外国人雇用の見通し

2023年度に建設業で必要になる労働者の人数は、約347万人と推定されています。しかし、2023年までに国内で確保できる労働者の人数は、326万人と見込まれており、21万人が不足するといわれています。政府は、労働者の不足を国内の人材で補えないことから、国の政策として外国人労働者を受け入れる方針を発表しました。

外国人労働者を建設業で雇用するにはどうしたらいいか

建設業に外国人労働者を呼び込み、雇用するためにはどのような方法があるのか、以下で解説します。

在留カードを確認し、就労可能な在留資格のある外国人を雇用する

日本在住の外国人は、国内での活動内容が制限されています。在留資格には、就労可能なものとそうでないものがあり、留学目的の場合は就労できません。ただし、事前に資格外活動の許可を申請すれば、週28時間までの就労が可能です。

建設業で外国人労働者を雇用する際は、「在留カード」で就労が可能な在留資格かどうかの確認が不可欠です。在留資格には種類があり、就労できる職業や作業が制限されています。

従来は、建設業の単純労働は認められていませんでしたが、深刻化した人材不足への対策として、2019年4月に建設業での就労を認める、在留資格「特定技能」を新設しました。就労可能な在留資格や仕事内容については、後ほど解説します。

募集方法

募集する場合は、外国人向けの求人媒体や人材紹介会社のほか、ハローワーク、外国人雇用サービスセンター、厚生労働省提供の「外国人雇用サービスセンター等一覧」などの公的機関を活用できます。また、大学や専門学校からの紹介も有効です。

建設業で雇うことができる外国人の在留資格の種類と従事できる仕事の種類

建設業で雇用できる在留資格の種類や、従事可能な仕事の種類について解説します。

技能実習生

技能実習生は、発展途上国の外国人を対象とした在留資格です。技能実習制度は、日本の技術や技能などを技能実習生に教えることで、発展途上国の人材育成に協力し、経済発展の促進を目的にした制度です。そのため、技能実習生は、人手不足を解消するための労働力として、利用してはいけないことが定められています。

対象となる主な職種・作業として、建築板金、建築大工、鉄筋施工、石材施工、タイル張り、配管、防水施工、内装仕上げ施工、サッシ施工、建設機械施工などが挙げられます。

技能

技能の在留資格をもつ外国人の雇用が認められています。技能の対象者は、ゴシックやバロックなどの、日本以外の建築様式に関する技能や知識をもっている人です。たとえば、国内の建築現場で、日本以外の建築様式の建造物を建築・修繕などが必要になった際に、特定の建築様式の技能や知識をもつ人を雇用できます。

ただし、技能の在留資格をもつ外国人を単純労働に従事させることは認められていません。また、技能の在留資格の取得には、5~10年の建築や土木工事の実務経験が必要です。

身分又は地位に基づく在留資格

身分又は地位に基づく在留資格は、永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の4つに分類されます。日本人の配偶者等は、日本人の配偶者・日本人の特別養子・日本人の子と出生した者の3つのケースに分かれています。永住者の配偶者等は、永住者の配偶者・特別永住者の配偶者・永住者の子供が対象です。

身分などに基づいた在留資格は在留期限が無期限のうえに、日本国内での活動内容の制限もありません。いずれかの在留資格をもっていれば、建設業の単純労働を目的とした外国人の雇用が可能です。

特定技能

特定技能は、建設業を含む深刻な人材不足の対応策として新設された在留資格です。特定技能は、特定技能1号・特定技能2号の2種類があり、申請には「日本語の試験」と「建設分野特定技能1号評価試験」の双方に合格、もしくは日本の建設業で3年以上の実務経験のいずれかの条件を満たす必要があります。

特定技能1号は、通算で5年間の日本滞在が認められており、特定技能2号は滞在期間が制限されていません。特定技能の在留資格をもつ外国人は、一定レベルの専門性や技能を備えているため、即戦力として雇用できます。

資格外活動

資格外活動は、上述した在留資格のいずれにも該当せず、就労目的以外の理由で来日した外国人が対象となる在留資格です。対象者は、留学生、留学生の配偶者・子供、就労が可能な在留資格をもつ外国人の配偶者・子供です。資格外活動は、週28時間以内の就労が認められており、建設業の単純労働に従事できます。

建設業で外国人を雇用する際の注意点

建設業の企業が外国人を採用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。

在留資格の確認を必ず行う

外国人を雇用する際は、在留カードを提示してもらい、在留資格の種類を必ず確認しましょう。日本国内での就労が認められていない外国人を雇用してしまうと、不法就労者に労働をさせたことになります。

不法就労者を雇用してしまった場合には罪になるので注意

不法就労者を雇用してしまうと、不法就労者はもちろん、雇用主も罪に問われてしまいます。たとえ、雇用した外国人が不法就労者であることを知らなかった場合でも、在留カードの確認を怠ったなどの過失により、処罰対象となります。

自社の必要に応じ、雇用するべき在留資格を検討する

外国人を雇用する前に、雇用する在留資格の検討が重要です。就労が可能な在留資格でも、建設業務に従事できない種類もあります。自社に必要な人材を確保するためにも、在留資格の種類を確認したうえで、必要な人材を雇用しましょう。

受け入れ準備をしっかりと行う

外国人を雇用する際は、働きやすい環境の準備が大切です。たとえば、日本語がわからない外国人に対して、多言語対応や必要最低限のコミュニケーションで済むICT化などの取り組みが挙げられます。また、生活面のサポートも不可欠です。

コミュニケーションの取り方や、文化・宗教の違いなど、お互いに理解が必要

外国人にとって快適な労働環境を整えるためには、外国人労働者と既存の労働者が互いに理解し合うことが重要です。とくに、双方の文化や宗教観、日本でのビジネスマナーなどの情報共有により、互いの理解を深められます。

安い労働力という認識がある場合は改める必要がある

雇用主が外国人労働者を安い労働力と認識していることにより、双方の間でトラブルに発展するケースも少なくありません。労働者として雇用した以上は、外国人労働者に対する不当な扱いや認識を改める必要があります。

外国人労働者雇用時には各種届け出が必要

外国人労働者を雇用する際に、どのような届出が必要なのかについて解説します。

外国人雇用状況の届出

外国人の雇用時は、「外国人雇用状況の届出」を厚生労働大臣に提出する必要があります。提出せずに外国人労働者を働かせると、1名につき30万円の罰金が科されます。ハローワークの窓口や公式ホームぺージでの提出が可能です。外国人労働者が離職する際も、同様の届出が必要なため、忘れずに提出しましょう。

外国人建設就労者建設現場入場届出書

「外国人建設就労者建設現場入場届出書」は、技能実習生だった外国人を雇用する際、下請負企業が元請負会社に対して提出を必要とする書類です。届出書は、建設分野の技能実習の修了者が建設現場に入場する際に必要です。

ただし、定住者が建築現場で働く場合や、建築現場の見学などを目的に技能実習生が現場に入場する場合は、届出の必要がありません。

外国人労働者を建設業で雇用する場合の現場教育

外国人労働者の労災防止のためにも、外国人労働者を対象とした安全衛生教育の実施が必要です。実施に伴い、現場の労働者への教育も不可欠です。たとえば、外国人労働者とのコミュニケーションの取り方、いじめやパワハラ防止などの研修が挙げられます。

また、労働者だけでなく、管理者へのマネジメント指導、長時間労働の抑止なども欠かせません。

まとめ

建設業で外国人労働者を雇用する際は、各種届出の提出や、在留カードの確認が必要です。届出を提出しないで、不法就労者に労働させると、厳罰に処される可能性もあるため、事前に正しい情報収集を行っておきましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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