土木業界の人手不足を解決する方法と成功事例|生産性向上のカギとなるポイントも紹介
2022年03月22日 07:00
この記事に書いてあること
土木業界では、人手不足の慢性化が大きな課題になっています。課題の解決には働き方改革による業務効率の改善が必要といわれています。この記事では、土木業界における働き方改革を検討中の方に向けて、人手不足の課題や現状、土木業界の人手不足の解決策などについて解説しています。また、企業の成功事例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
土木業界の現状
国土交通省の「最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について」からもわかるとおり、建設土木業界は人手不足が慢性化しているといわれています。まずは、土木業界の現状について詳しく解説します。
土木業界の需要は堅調をキープ
国では、防災、減災、インフラ整備の維持や更新のために膨大な予算が投じられています。なかでも、土木業はインフラ整備において重要な役割を担っており、土木業界の需要は比較駅安定している傾向があります。土木工事は、コロナ禍で一時中断を余儀なくされましたが、感染拡大防止対策を実施しながら稼働するまでになりました。
土木業界の受注案件の約9割は公共事業とされています。公共事業は今後も必要不可欠な経済活動として認識されていることから、中長期的な視点においても土木業界の需要は安定しているといえます。
土木業の人手は減少傾向が続いている
国土交通省の調査によると、土木業の従事者は55歳以上の人が全体の3割を占めていました。これは、10年以内に3割以上の人材が現役を引退することを意味しています。一方で、29歳以下の若手従事者は全体の1割程度と停滞傾向にあります。ベテランと呼ばれる知識や経験が豊富な人材の引退と同時に、従事者の減少も懸念されています。
このように、土木業界は需要が安定している一方で、若手従事者が少ない、約10年後に定年を迎えるベテランの従事者を多く抱えているといった現状にあります。
土木業の従事者が不足している理由3つ
土木業界で慢性的な人手不足が起こっている理由は、おもに3つあります。以下では、それぞれの理由について解説します。
1.若年層の従事者が入ってこない
国土交通省の調査によると、土木業界の人材不足の理由として、若年層の流入が少ないという問題があります。砂ぼこりなども多い場所で、長時間の肉体労働や高所での作業するようなイメージにより、就職先に選ぶ若者が少ない傾向があります。また、年功序列の古い価値観が主流とされており、現代の若者の価値観とズレが生じていることも要因のひとつでしょう。
2.職人離れ=離職率が高い
短期間での賃金のアップや、作業員からのキャリアアップの見通しが立てづらい傾向にあります。職人離れが顕著なため、人材が定着しない要因につながっています。
厚生労働省の調査からも、土木業界は他業界に比べ、福利厚生の充実度、長時間労働の是正、給与のアップなどの待遇面が充実しているとは言い難いことがわかります。そのため、人材が入ってきてもすぐに離職してしまう人も少なくありません。
3.同業内での人材の取り合い
土木業界全体で人手不足が深刻化しているため、下請けの企業同士が優秀な人材を取りあっているという現状があります。厚生労働省の公共職業安定所(ハローワーク)による調査からも、土木業界における有効求人倍率は毎年のように高まっています。複数の企業が求人を出した場合、条件のよい企業が人材を確保できるという事態も起こりかねません。
土木業の人手不足を解決する方法3つ
土木業の人手不足を解消するためには、以下の3つの方法が有効とされています。自社の人手不足を解決する際の参考にしてください。
1.若者が持つイメージを変える
土木業で必要な人材を確保するためには、若者が土木業に抱くマイナスなイメージを払拭したうえで、若年層を多く採用する必要があります。土木業のイメージを刷新するためにも、若者が日常的に活用しているSNSでの発信を検討するなどは一つの方法です。また、地域の商工会議所などのイベントへ積極的に参加するのもおすすめです。
2.福利厚生や給与の見直し
人材を多く集めるうえで、福利厚生を充実させ、昇給制度の見直しなどを図ることも効果的です。とくに、福利厚生の導入は待遇面の改善がわかりやすく、求人などに掲載して他企業との差別化をアピールすることも可能です。また、国の直轄事業を受注して信頼度を高めるなら、社会保険の加入を検討しましょう。
3.業務の効率化
必要な人材を確保できたとしても、経験者でなければ即戦力として活かせません。求人募集中や人材育成期間中など、少ない人材で業務をまかなうためには業務の効率化が不可欠です。少ない人的労働力で業務ができれば、従事者の待遇改善につながり、定着率の向上も期待できます。また、作業工程を見直すことで労務費の削減も可能です。
国の対策「建設業働き方改革加速化プログラム」
土木業の人材不足問題を受け、国は「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。建設業働き方改革加速化プログラムとは、「長時間労働の是正」「技能に基づく適正な給与・社会保険の加入」「生産性の向上」の3つのプログラムから構成されています。従事者の待遇改善をはじめ、ICTなどの技術の導入を推奨しています。
土木業の人手不足打破には業務の効率化がカギ
土木業の人手不足を解消するには、少ない人的労働力でも業務を回すことが重要です。業務の効率化のポイントを以下で解説します。
データ管理
国土交通省は、インフラの維持管理や施工データ管理などにビッグデータ解析を活用し、補修や修繕計画を最適化することを目指しています。また、ICTの活用やクラウドサービスの導入、リモートワークへの対応などにより、業務の効率化につなげられます。さらに、クラウドサービスの利用により、サーバー管理などの負担を減らすことも可能です。
定型業務
土木業における定型業務とは、工事の工程や資材に関するタスク管理業務、作業記録をはじめとする書類作成などが挙げられます。ツールやシステムを導入することで、定型業務にかかる時間を大幅に削減できます。また、オンライン会議システムを利用すれば、現場から社内会議やクライアントとの打ち合わせなども可能です。
工事図面や書類の電子化
各現場の担当者にタブレットを1人1台支給すれば、書類や工事図面などの電子化が可能です。近年、建築確認申請などの手続きにも電子化した図面が用いられています。たとえば、3D作図ソフト(BIM)を導入すれば、図面の電子化が可能です。図面や書類を電子化することで、手渡しなどの手間がかからず、やりとりもスムーズに行えるようになります。
「i-Construction」の活用
i-Constructionとは、ICTを導入して生産性の向上を図るための取り組みのことです。近年では、ドローンの空撮によって3次元で測量するなど、ICTを活用した土木工事を実施する企業が増えています。
たとえば、3次元測量点評データと設計した図面の差分を割り出すことで、施工量を自動算出できる3次元データによる設計図の作成も可能です。また、3次元データとICT技術を搭載した建設機械を組みあわせ、24時間の作業を可能にするといった開発も行われています。
土木業界の社員満足度向上に対する取り組みの成功事例
ここでは、実際に土木業界で社員満足度の向上に成功した企業の事例を紹介します。
株式会社日水コン
株式会社日水コンは、水道や下水、河川などの水インフラに特化したリーディングカンパニーです。創立60周年を迎え、東京本社のオフィス環境を見直し、企業に対するイメージの刷新、従業員が働きやすい環境の整備を目的とした取り組みを実施しました。当時のおもな課題は、以下のとおりです。
- ・受付、応接室の経年劣化
・エレベーターホールからの動線が不明瞭
・会議スペースの不足
東京本社のリニューアル後は、採光で明るい印象のエントランスになり、エレベーターホールからの動線がスムーズになっています。また、ICT機器を設置した会議室を増やすことで、会議環境も向上しました。
株式会社東郷建設
株式会社東郷建設は、地元・愛知県に根ざした建設会社として公共事業を中心にトータルに土木工事をを手がけている建設会社です。人手不足による社員の残業を改善する目的で、ICT化による業務の効率化を図りました。株式会社東郷建設の課題は、当時の以下のとおりです。
- ・工事写真の撮影、分類に人手を要した
・施工体制台帳の作成や管理の手間
工事写真はスマートフォンアプリと写真管理ソフトを活用することで、デジタルカメラで撮影した画像データをパソコンに取り込む作業、アルバムへの分類作業の手間を削減できました。施工体制台帳を電子化してパソコンで管理し、検索や閲覧の時間を短縮することにも成功しています。
松尾建設株式会社
松尾建設株式会社は、建築、土木、舗道、リニューアル事業を展開する建設会社です。図面や工事の過程を記録するための写真などを印刷する必要があり、保守サービスがあるA3対応のジェルジェットプリンターを導入しました。従来は経費削減のため、家庭用のインクジェットプリンターを各現場で使用しており、以下の課題の改善が必要でした。
- ・インクの調達の手間
・故障したプリンターの郵送と代替品の配布
導入後は、プリンターが故障してもカスタマーエンジニアが即日対応してくれるため、プリンターをメーカーへ郵送する手間がなくなりました。また、インクはオンラインサイトから注文でき、当日もしくは翌日には届くため、業務が滞る心配がありません。
まとめ
土木業における人手不足を解消するためには、ICT技術を用いた生産性の向上、福利厚生の充実などの待遇面の見直しが必要です。自社にあった取り組むためにも、紹介した企業の成功事例などを参考に取り組んでください。
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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