保育士に必要な働き方改革|保育の現場が抱える課題や対応するうえでのポイントなど紹介

From: 働き方改革ラボ

2021年08月03日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革は、働き方の多様化を実現して生産性を向上させるための取り組みです。働き方改革はすべての労働者に関係するものであり、保育士も例外ではありません。

この記事では、保育の現場に求められている働き方改革への対応について解説します。保育士が抱えている課題を解決して保育園の運営をスムーズに進めるため、参考にしてください。

そもそも働き方改革とはどのような取り組みか

働き方改革の目的は、少子高齢化により労働人口が減少して生産性が低下するリスクに備えることです。働き方の多様化を実現し、より多くの人が活躍できる社会を目指しています。多様な働き方の実現に加え、雇用形態による待遇差の解消と、長時間労働の是正が重視されています。

働き方改革を推進するため、労働基準法の改正も進んでいる状況です。以下では、保育の現場に求められている働き方改革への対応について、具体的に解説します。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、雇用形態を問わず、同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払うというルールです。もともと正規雇用と非正規雇用の間には賃金の格差が生じていたため、そのような待遇の格差を解消する目的で、同一労働同一賃金のルールが定められました。

保育士についても、同じ仕事を行っているなら雇用形態に関わらず同じ賃金を支払わなければなりません。基本給だけでなく、賞与についてもこのルールが適用されます。

時間外労働の上限規制

働き方改革では、時間外労働の上限にも規制を設けています。時間外労働の具体的な上限は、月45時間、年360時間までです。以前までは時間外労働の上限が定められておらず、残業が当たり前のように発生している保育園も多くなっていました。

時間外労働の上限が明確に定められたため、保育士の長時間労働やサービス残業についても改善が求められます。人手が足りない場合は、保育士の追加により対応しなければなりません。

有給休暇取得の義務化

2019年4月から、有給休暇の取得義務が定められました。もともと有給休暇の制度はありましたが、取得に義務はなく、人手が不足している保育園では有給休暇を取りにくい状況でした。

法改正により、年10日以上の有給休暇が認められる労働者は、年間5日以上の有給休暇を取得する必要があると定められています。条件に当てはまれば、保育園に勤めているすべての労働者が対象です。職員が有給休暇を取得できるよう、保育園側は配慮しなければなりません。

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、専門的な知識やスキルをもつ人に対して適用される制度です。時間ではなく成果物を評価して給与を支払います。2018年5月に採択され、2019年4月から施行されています。 高度プロフェッショナル制度には年収の条件もあるため、必ず適用できるとは限りません。ただし、働き方改革の概要を理解するうえでは押さえておく必要があります。

保育士に働き方改革が必要な背景

保育士には働き方改革が必要です。ここでは、その背景についてくわしく解説します。

慢性的な保育士不足

保育士は慢性的に不足している状況です。厚生労働省が2020年8月に発表したデータによれば、常勤の保育士の離職率は9.3%となっており、1割弱が離職にいたっています。また、経験年数に半比例するように保育士数は減っており、長く働き続けている人は多くありません。

保育士が不足しているのは、労働環境に大きな課題があるからです。保育士の業務は負担が大きく、拘束時間も長くなりがちです。休暇が少なく、有給休暇を取得しにくい点も保育士が長く働けない原因のひとつになっています。

働き方改革により労働環境を改善できれば、保育士不足の解消が期待できます。

待機児童問題

保育士の確保は、待機児童問題の解消のためにも重要な意味をもちます。厚生労働省は2020年までの3年間、保育の受け皿を拡大するための取り組みを実施しました。また、「子育て安心プラン」を導入し、待機児童の解消と女性の就業率8割を目指しました。

2020年4月1日時点の待機児童数は12,439人であり、前年同時期よりも4,333人減少しています。しかし、依然として待機児童問題は解消できていません。

そもそも保育士が不足している状況であるため、待機児童問題を解消するためには保育士が働きやすい環境を構築して保育士不足を改善する必要があります。

働き方改革によって保育士の働き方はどう変わる?

働き方改革に対応すれば、保育士の働き方はどのように変化するのでしょうか。ここでは、具体的な変化について解説します。

保育の質が上がる

働き方改革に対応して保育士の労働環境を改善すれば、保育の質も向上する可能性があります。たとえば、ICTを導入して事務作業などを効率化すると、保育士の負担を軽減できます。園児と向きあえる時間が増えるため、より丁寧できめ細かい保育を行えるようになるでしょう。保育の問題点も早期発見しやすくなります。

多様な働き方ができるようになる

働き方改革の内容を重視して労働環境を整えれば、多様な働き方を実現できます。雇用形態によらず同様の評価を得られるため、非正規雇用や時短勤務などでも保育士が安心して働けるようになります。自分にあわせた働き方を選択できれば、無理なく長期的に働き続けられるでしょう。慢性的な保育士不足も解消できる可能性があります。

ワークライフバランスが実現しやすい

保育園が働き方改革に対応すると、保育士の業務の全体が見直されます。仕事の持ち帰りや残業を削減するための取り組みを強化すれば、保育士の負担を軽減できます。ワークライフバランスも実現しやすくなり、仕事とプライベートのメリハリをつけやすくなるでしょう。保育士の仕事へのモチベーションも高まり、よりよい保育を実現できます。

保育園が働き方改革に対応するうえでの課題点

保育園が働き方改革に対応する場合、課題点もあります。具体的な課題について解説します。

時間外労働の削減方法

保育園の場合、園児の世話をする時間は削減できません。事務作業のために時間外労働が発生しているケースが多いため、事務作業を効率化して負担を減らしましょう。事務作業を効率化する方法は、さまざまあります。たとえば、ICTを導入し、システムで情報を一元管理することも一つの方法です。

システムを活用すると、園児の個人情報や日々の記録もスムーズに共有できます。集計作業も自動化できるため、負担を大幅に軽減できます。

待遇差の改善

働き方改革に対応するためには、待遇の格差を是正する必要があります。同一労働同一賃金を実現したうえで、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進にも取り組みましょう。

ただし、単に制度を新設するだけでは、実際に待遇の格差を埋められるとは限りません。労務管理を適切に行い、着実に待遇の格差を是正できるようにしてください。管理者を明確に定め、賃金や勤務時間を一元管理することもポイントです。

シフトや労務管理の効率化

保育士に多様な働き方を認めれば、シフト管理も複雑化する可能性があります。より徹底的な労務管理の体制を構築すると、新たな手間がかかる場合もあります。

働き方改革に対応するうえでは、シフト管理や労務管理を効率化するための工夫も取り入れましょう。たとえば、正確かつ効率的に情報を管理できるシステムを導入すると、少ない負担で多様な働き方を実現できます。

【働き方改革】保育士の業務負担を軽減するための対策

保育士の業務負担を軽減するには、さまざまな方法があります。以下で具体的に解説します。

ICT導入による事務作業の効率化

業務を効率化するためには、保育園においても積極的にICTを利用すべきです。ICTを導入すれば、事務作業の効率を高めてより短時間で作業を終えられるようになる可能性があります。事務作業の負担が大きいせいで時間外労働が多く発生している場合は、職員の負担を軽減するために特に大きな効果を発揮するでしょう。

多様な勤務体制を取り入れる

働き方改革の推進により、多様な働き方を認める動きが広がっています。保育園においてもさまざまな雇用形態を設け、保育士が自分自身の状況にあわせて多様な働き方を実現できるようにしましょう。さまざまな働き方が用意されていれば、結婚や出産などのライフイベントが発生しても離職しなくて済む可能性があり、人手不足の解消につながります。

システム導入によるシフトや労務管理

シフト管理や労務管理などは、システムを導入して見える化しましょう。単に管理が楽になるだけでなく、勤務時間もより正確に把握できるようになります。長時間労働の実態を把握したり、それを是正するための取り組みを考えたりするうえでも役立てられます。システムを導入するにはコストもかかりますが、大きな費用対効果を得られるでしょう。

保育士不足を解消するための保育園運営におけるポイント

今後の保育園の運営においては、保育士にとって働きやすい環境を整えて人手不足を解消する必要があります。そのために、まずは業務効率化を進めて保育士にかかっている負担を軽減しましょう。事務作業にシステムを導入すれば、よりスムーズに業務を進められるようになります。

また、働き方を改善すると適切なライフワークバランスを保てるようになるため、保育士のモチベーションも高めやすくなります。サービスの質の向上にもつながるでしょう。

まとめ

働き方改革は、保育士にとっても重要な位置づけの取り組みです。保育士にとって働きやすい環境を整え、人手不足を解消したりサービスの質を向上させましょう。

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記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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