福祉・介護職の働き方を変えよう!企業と政府の取り組みを紹介

mail_hatarabo_archives_8.jpg

低賃金や過酷な労働環境、そして介護を必要とする高齢者の増加などの理由から人手不足が深刻化する福祉・介護業界。今後さらに高齢化が進む中で、福祉・介護業界の働き方改革や人材の確保は急務と言えます。今回は、福祉・介護業界の働き方の実態と、問題解決のために企業や政府が進める取り組みを紹介します。

福祉・介護業界の働き方の実態と課題

今、日本の少子高齢化は進行しています。内閣府の平成30年版高齢社会白書によると、現在、全人口の27.7%が65歳以上。2065年には、2.6人にひとりが65歳以上、3.9人にひとりが75歳以上になると推計しています。

厚生労働省の2018年の発表によると、特別養護老人ホームの現在の入居待機者は29万5000人。また経産省の試算では、介護関連の従事者数は2015年に183万人で、人材不足数は4万人。2025年には、供給が215万人で不足は43万人に拡大し、団塊世代が85歳を超える35年には、供給不足が79万人になるとしています。

介護労働安定センターの調査(平成29年)によると、介護職に就く人のうち、非正規雇用社員は43.8%。訪問介護員では74.4%に上り、福祉・介護業界は非正規雇用職員に大きく依存していることがわかります。また男女比は、全体では男性が20.8%に対し女性が79.2%、訪問介護員については、男性10.3%、女性89.7%と、どちらも女性の割合が高いのが現状です。

なぜ人材不足が深刻化?

福祉・介護業界において、人材不足感を感じる事業所の割合は増え続けています。平成29年度の介護労働安定センターの調査によると、事業所の66.6%が従業員の不足を感じています。不足の理由としては「採用が困難である」(88.5%)がトップで、その原因は「同業他社との人材獲得競争が激しい」「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が大半を占めています。ではなぜ、人材不足がこれほどまでに深刻化しているのでしょうか。

低賃金

介護職に人材が集まらない理由として、賃金の低さが挙げられます。平成29年度の介護労働安定センターの調査によると、介護職員の月間平均給与は21万1464円で、訪問介護職員は19万8486円。全産業平均の30万4300円(平成29年度賃金構造基本統計調査)と比べて大きく下回っています。

労働環境の問題

介護職員は高齢者の入浴、食事、排せつといった身の回りのケアを行うため、体力面、精神面ともに消耗する仕事です。介護施設は24時間毎日休みなく稼働しており、人手が足りない職場ではより職員ひとりひとりの負担が重いのが現状。また介護職員は、日々の高齢者の介護に加え、レクリエーションの計画や事務作業などの業務も多く抱えています。介護労働安定センターによれば、介護職を離れた人がその理由として挙げたのは、自分の将来の見込みが立たない、収入が低いといったことに加えて、人間関係や結婚・出産・妊娠・育児といった理由も多く、コミュニケーションやワークライフバランスの面でも課題の多い環境であることがわかります。

介護職の働き方改革のための具体策

では、具体的に労働環境を改善するために、どんな取り組みが行われているのでしょうか。企業で採用されている具体策を紹介します。

ITツールの導入

人材の不足を補い、働く人の労働環境を向上するための代表的な取り組みがITツールの導入です。介護記録を入居者のケアをしながらタブレットを使って入力し、データをケアプランと同期して作業を効率化する介護記録の自動化、また利用者の転落などのリスクを軽減しながらベッド上での動きを記録してレポートに活用するベッドセンサーなど、介護現場にもITソリューションが取り入れられています。

ユニットケア

ユニットケアとは、介護施設において入居者10人程度をひとつのユニットとして、固定の介護職員が共同生活をしながら入居者をサポートする介護方法です。顔なじみのスタッフが入居者の個性や生活リズムに応じた暮らしをサポートできるというメリットがある一方で、介護職員がユニットごとに権限を持ち固定のスタッフと働けるため、働く人の人間関係のストレスや業務負担の軽減にもつながります。人間関係の改善による、介護職員の定着率の向上が期待できます。

女性が働きやすい環境の整備

介護業界では女性の比率が高いため、女性のライフステージの変化に対応できる制度を整えることも重要です。重労働で人材不足が常態化する介護業界では、私生活を理由にした休暇取得や時短勤務が困難なため、出産を機に退職する女性が多いのが現状です。女性の産前産後休暇や育児休暇、また時短勤務制度だけでなく、妊娠中の体調不良や子どもの病気などの理由で休暇を取得できる制度や、取得しやすい職場環境作りを進めることが、女性を活用するための急務です。

外国人材の活用

人材不足への対策として、外国人材の活用も有効な手段です。これまで介護業界では、在留資格「介護」、EPA(経済連携協定)、技能実習生という3つの制度によって外国人を活用してきましたが、2019年4月からは、入管法の改正により外国人材の受け入れが拡大。政府は、介護の分野では先の5年間で6万人の外国人を新たに受け入れる見込みと発表しています。

政府が勧める介護業界の働き方改革

福祉・介護業界における労働力確保のため、政府も働き方改革に向けた制度整備を進めています。

介護職の待遇改善

政府は、2017年に新たな政策パッケージを閣議決定。その中で、経験・技能のある介護職員を対象にした処遇改善を定めています。2019年10月から、消費税の引き上げ額を財源に、勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額8万円の改善、または「役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)」を設定。リーダー級の介護職員について、他産業と遜色ない賃金水準を実現する見込みです。

AIやICTによる業務効率化を推進

厚生労働省は2018年10月、「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置。2040年に向けて、誰もが長く元気に活躍できる社会の実現のため、①多様な就労・社会参加の環境整備、②健康寿命の延伸、③医療・福祉サービスの改革による生産性の向上、④給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保を行うとしています。

その中で、医療・福祉サービスに関する取り組みとして、ロボットやAIの活用や、介護助手としてシニア層を活用すること、またICTを使った業務効率化、組織マネジメント改革といったプランが発表されました。

介護施設の大規模化を推進

2040年を展望した社会保障・働き方改革本部は同時に、医療・福祉サービス改革のため、医療法人や社会福祉法人の経営統合や運営共同化を進めると発表。今後、介護施設の大規模化が推進される見込みです。その具体的なプランは、2019年夏をめどに策定される予定です。

待遇改善と業務効率化が介護の未来を支える

福祉・介護業界の働き方改革は、人材の確保と、労働環境改善というふたつの方向からアプローチして進めていく必要があります。特に、働く人の過重労働を防ぎストレスを軽減させるためには、ITツールを含む業務効率化対策が有効です。これまでの業務の在り方にとらわれない大胆なソリューションの導入を進め、働き方改革を実現させましょう。



mail_hatarabo_archives_8.jpg

この記事に関連するタグ