介護業界における働き方改革とは|現場が抱える課題点や実際の取り組みを紹介

From: 働き方改革ラボ

2021年10月04日 07:00

この記事に書いてあること

昨今、多くの企業において、政府が推進する働き方改革への対応が行われています。介護職も例外ではありません。特に介護職は負担が比較的大きく、働き方改革が急務とされています。この記事では、介護業界における働き方改革について解説します。現場が抱える問題点や対応するべき施策も紹介します。ぜひ参考にしてください。

介護業界に求められる働き方改革への対応

働き方改革とは長時間労働の改善や非正規雇用労働者の処遇改善などの、労働制度を基盤から見直すものです。介護業界は長時間労働や職務環境による精神的疲労、慢性的な人手不足など多くの問題を抱えています。

そのため、働き方改革を推進することで、介護業界が抱える人手不足の解消や離職率の低下、採用率の悪さなどの改善が期待できます。その結果、介護業界全体の生産性を高めることが期待できます。

介護業界における働き方改革への取り組みに関する実情

ここからは介護業界における働き方改革への取り組みに関する実情を解説します。

働き方改革に対応するうえでの課題点

先にも述べたように介護業界は深刻な人手不足が問題とされています。この問題を解決するためには現場の意識改革が必要です。たとえば介護の現場では、「きつい」「危険」「給料が安い」といった、厳しい労働環境であるというイメージがつきまとうことが問題視されています。これらのイメージを払拭するため、抜本的な現場の意識改革が求められます。

働き方改革に対応することで得られた効果

働き方改革に対応することで労働環境が改善されると、職員が働きやすくなり業務の効率化につながります。介護職は長時間労働が起こりやすい職場ですが、この問題も是正されるでしょう。また職員の満足度や生産性の向上にも期待できます。

介護業界が抱えている課題とは?

介護業界が抱える課題にはどのようなものがあるのでしょうか。以下では4つの点に分けて解説します。

社会的評価の低さ

介護職は社会的評価が低いという問題があります。その理由のひとつは、そもそも介護は長男の家族が行うものという認識が日本には根付いており、介護職に対する意識が低いためです。また核家族化や介護する家族の高齢化により、従来身内が行っていた介護を行う「家族の代理」という位置づけも強くあります。そのため、介護職は専門性としての社会的認識の低さがあるのです。

厳しい労働環境

介護職は厳しい労働環境であるということも人手不足の原因です。夜勤などを含む長時間労働による負担や、移乗介助などで腰を痛めたり、職務環境による精神的疲労を引き起こす人も少なくありません。

そのため、介護職のサービスの質を保つには大幅な業務プロセス改革が行われない限り、是正することが難しいという現状があります。

深刻な人手不足

先にも紹介したとおり、介護職は厳しい労働環境のため、離職率が高く、採用率も低いという深刻な人手不足の状態です。また、日本は少子高齢化社会を迎えています。この先高齢者が増え、介護する若い人が減ると、さらに人手不足の問題は深刻化されます。

人手不足の背景には、重労働な仕事内容に対する賃金の安さも原因のひとつです。

需要と供給のギャップによる採用難

要介護者の数に対する職員不足も採用難の原因となっています。この先、日本ではさらに要介護者の数は増え続けます。しかしそれに対する介護職の採用が追いついていません。そのため需要と供給のキャップが生まれている状態なのです。採用難は2025年、団塊世代が後期高齢者となり、さらに拡大することが予想されています。

介護業界に向けて整備された働き方改革とは?

介護業界においても、政府は働き方改革を推進しています。ここでは、介護業界で整備されつつある改善項目について解説します。

経験や技能のある介護職員の待遇改善

政府は経験や技能のある介護職員の待遇を改善するために、さまざまな施策を行っています。たとえば2019年10月に実施された新しい経済政策パッケージでは、継続10年以上の介護福祉士に消費税の引き上げ額を財源とした、待遇改善を行いました。具体的には、役職者を除いた全産業平均水準の440万円の設定を行い、リーダー職には他の産業と変わりない賃金水準を支給する予定です。

ICTの利活用推進

ICTとは情報通信技術のことです。たとえば、パソコンやタブレット、アプリなどで入手したデータを、ネットワークを通じて多くの人と共有するといったICTの活用方法があります。介護職ではICTを利活用した業務効率化の推進が行われており、ロボットやAIなどの現場活用による労働環境改善を行っています。

ICTを介護の現場に導入することは厚生労働省も推進しており、利用者の介護状況や会議内容の記録をデータ化して全員で共有する仕組みの導入が進んでいます。

医療法人や社会福祉法人の経営統合・運営共同化

政府の社会保障・働き方改革本部は2040年を目標に、医療・福祉サービスの改革を発表しました。
これは医療法人や社会福祉法人の経営統合や運営共同化を進めることが目的です。介護施設の大規模化推進による医療福祉サービス改革や、医療・介護の連携による地域レベルでの最適化を推進していきます。

介護業界の課題解決へ|働き方改革を活かした5つの施策

ここからは介護業界の課題解決へ向けて、働き方改革を活かした5つの施策を紹介します。

ITによる業務効率化

従来は紙で行っていた書類の管理や記録をデジタル化することで、大幅な業務効率化につながります。紙で事務作業を行うと、管理のために手間がかかるだけでなく、保管のための場所も必要になります。たとえば介護記録を自動化することで、介護職員の手間を大きく省くことができます。

また、ベットセンサーや寝返り支援ベッドなどの導入も効果的でしょう。デジタルを苦手とする職員もいるかもしれませんが、音声認識機能や紙で書くのと同じ感覚で操作できるタブレットなど、機械が苦手な人も使いこなせる製品も登場しています。

業務負担の軽減やメンタルケア

介護職では、重労働による職員の業務負担や精神的疲労が課題です。この問題を解決するためには、ユニットケアや分業の導入による業務負担の軽減を行いましょう。業務の負担が軽減することで疲労感も減り、業務効率の向上にもつながります。また、メンタルケアに関しては定期的に面談の機会を設けるなどして、介護職員のメンタルヘルスを保てる仕組みを作るとよいでしょう。

長時間労働の是正への取り組み

長時間労働は介護職だけでなく、全ての業種の課題といえます。そのため、労働者の質を担保するためにも無駄な労働時間は極力減らすようにしましょう。介護職の場合は、経営競争を意識したサービスの拡充が長時間労働を引き起こしている可能性があります。

そのためサービスの拡充よりも、まずは介護理念に沿ったサービスを残して、負担のかかる業務の長時間化は削減します。サービス残業などは特に負担になるため、行う職員に対する上司からの声がけなど、現場の意識改革も行ってください。

多様な勤務形態による人材確保

介護業界全体の課題解決には、多様な勤務形態による人材確保を行いましょう。たとえば、それぞれのライフスタイルに合わせた時短勤務を容認したり、女性の出産や育児休暇を取得しやすい環境に整えたりします。

その後のライフステージの変化に対しても柔軟に対応できる仕組みが理想的です。また人手不足の解消には外国人労働者の受入れも欠かせません。

介護業界における働き方改革の導入事例を紹介

ここからは介護業界における働き方改革の導入事例を紹介します。

人とテクノロジーの融合による働き方改革|北九州モデル

北九州モデルとは、ICTの活用や効率的な人員体制、介護職員の専門性・働き甲斐向上で労働環境向上を目指す新しいモデルです。

たとえば、介護ロボットや見守りセンサーなどのテクノロジーを導入したり、非専門職業務にはアウトソーシングを取り入れたりすることで介護職員の業務負担を軽減しています。職員がより専門的な業務に専念できることで、働き甲斐にもつながっています。

それ以外にも、業務の仕分けを行い人員配置を見直すことにより、介護の質の向上を目指しています。このような取り組みで介護の現場に「新しい働き方」を提唱しているのが北九州モデルです。

企業風土も変えた抜本的な取り組み|社会福祉法人尾道さつき会

社会福祉法人尾道さつき会は、「トヨタ式カイゼン」により働き方改革を実現した介護福祉施設です。トヨタ式カイゼンとは製造業の作業工程で生まれた方式で、必要なものを必要な時に補充して無駄を省くシステムです。ビジネスだけでなく、日常生活の場面にまで応用されています。

尾道さつき会では、なかでも特に2S(整理・整頓)を重視、職場のきれいを保つためにルール化し、それを徹底しました。

ほかにも人員確保のため、時短勤務や短時間正職員制度の導入、ノー残業デーの実施、有給取得率の向上などを行い、労働環境の整備を行いました。その結果長時間労働は是正され、県外からの就職希望者が出るまでになりました。

まとめ

介護業界では働き方改革による、労働環境の改善が課題とされています。長時間労働、人手不足など、介護業界を取り巻く問題は深刻です。この先、働き方改革が推進されることで、介護現場の労働環境改善が期待されます。

※2021年8月公開記事の内容を編集いたしました

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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