介護夜勤における働き方改革|介護業界の課題解決策や勤務体制に関するポイントなど紹介

From: 働き方改革ラボ

2021年11月11日 07:00

この記事に書いてあること

介護業界で働き方改革への対応を進めるためには、夜勤の働き方の見直しが必要不可欠です。この記事では介護職の夜勤について、どのように働き方改革に対応すればいいか解説します。介護業界の現状や課題点にも触れるため、それらを踏まえて適切な対応ができるよう、ぜひ参考にしてください。

介護夜勤にも影響|働き方改革とは?

働き方改革とは、労働環境を改善し、労働者が心身ともに健康な状態で働けるようにするための施策です。日本では人口減少が進んでおり、労働人口を増やしたり労働生産性を向上させたりする目的で政府が主導しています。2019年4月には働き方改革関連法が施行され、企業に対してさまざまな取り組みが義務化されました。

介護業界では夜勤もあり、労働者に対して大きな負担がかかっているケースも少なくありません。しかし、働き方改革に対応すれば、さまざまな課題解決を実現できます。詳しくは以下で解説します。

介護業界の現状と課題点

介護業界はどのような状況にあるのでしょうか。ここでは、介護業界の現状と課題点について解説します。

人材確保や定着

介護業界では、慢性的な人手不足が大きな問題になっています。高齢化により高齢者の数は増え続けている一方で、少子化により労働人口は減少しています。介護職に対する需要は年々高くなっているものの、供給がそれに追いついていない状況です。

介護業界で十分な人材を確保し、定着させるためにはさまざまな対策が必要です。具体的には業務効率化により長時間労働を減らし、働きやすい環境を整えなければなりません。働き方改革は労働環境を改善するための取り組みであるため、介護業界にとっても重要な意味をもちます。

介護現場に対するイメージ改善

介護業界は人手不足の状況にあるというイメージを持たれることもあります。介護職として働くには体力が必要であり、過度な負担がかかるのではないかという懸念を抱いている人もいます。これらは人材が集まりにくい原因になっているだけでなく、早期離職にもつながっているといわれることもあります。

介護業界で必要な人手をしっかり確保するためには、このようなイメージの改善が必要不可欠です。労働環境を根本から改善し、介護業界全体のイメージアップを図らなければなりません。

介護業界で対応が必要な働き方改革とは?

介護業界では、さまざまな部分で働き方改革に対応する必要があります。具体的に対応すべき内容について解説します。

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、勤務を終了した時刻から次の勤務を開始する時刻までの間に、一定の休息を設けるためのものです。労働者がしっかり自分の時間を確保し、睡眠や日常生活のための時間をとれるようにします。

勤務間インターバル制度は、あくまでも努力義務です。しかし、夜勤は日勤よりも疲労がたまりやすいと言われており、特に積極的に取り入れなければなりません。介護職では夜勤で働いている人も多いため、できる限り導入すべきです。

しっかり休息の時間を確保できる体制を整えれば、介護職として働きたいと考える労働者を増やせるでしょう。

時間外労働の上限規制

働き方改革により、労働者の時間外労働について上限が定められました。長時間労働ができるのは原則として月45時間までです。

また、年間の残業時間は360時間までに抑える必要があります。残業時間が減れば労働者の負担が減るだけでなく、企業の人件費削減の効果も期待できます。 ただし、介護業界では、夜勤スタッフに対して変形労働時間制の採用も可能です。変形労働時間制なら月間または年間で労働時間を調整できます。この場合、一時的に労働時間が長くなっても、ほかの時期に調整して労働時間が週40時間以内になれば問題ありません。

年5日の有給休暇取得

働き方改革関連法の施行により、年5日の有給休暇の取得が義務化されました。企業は、条件を満たしている労働者に対し、時季を指定したうえで有給休暇を取得させなければなりません。

ここでいう条件とは、年10日以上の有給休暇を取得する権利がある場合です。労働者に有給休暇を年5日取得させないと企業に罰則が課されるため、注意が必要です。

介護業界には、1日に配置すべき専門職の人数が人員基準として定められています。そのため、人手不足に陥っている現場では、労働者が思うように有給休暇を取得できませんでした。しかし、制度上、現在は有給休暇を取得しやすい状況になっています。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、同じ業務に従事している人は同じ賃金を受け取る権利があることを表しています。

以前までは、同じ業務に従事していても、非正規雇用には正規雇用よりも低い賃金が設定されているケースが多くありました。しかし、現在は雇用形態による不合理な待遇の格差を設けてはいけないとされています。

ここで対象となるのは賃金だけでなく、福利厚生や研修の機会なども含まれます。同一労働同一賃金の目的は、雇用形態による待遇の格差全般の解消です。

介護業界では非正規雇用で働く労働者も多いですが、同一労働同一賃金の実現により待遇の改善を期待できます。離職防止にもつながるでしょう。

ICTツールの活用

長時間労働を是正するためには、単に残業を禁止するだけでは不十分です。業務を効率化し、従来より短い時間でも、きちんと業務を進められる体制を整えなければなりません。

そのためには、ICTツールを積極的に導入する必要があります。技術の進歩により、ビジネスの実務で役立つICTツールが数多く開発されるようになりました。

業務効率化のためにICTツールを活用すべきなのは、介護の現場も例外ではありません。たとえば、介護ロボットを活用したり、介護記録を自動化したりする方法があります。それまで人が対応していた作業をICTツールに置き換えることで、無理のない業務効率化の実現が可能です。

【介護夜勤の働き方改革】勤務体制のポイント

介護職の夜勤に対しては、具体的にどのように働き方改革を進めればいいのでしょうか。ここでは、そのポイントを解説します。

夜勤の勤務形態

介護職の夜勤には、変形労働時間制を適応できます。変形労働時間制とは、業務の状況に応じて労働時間を調整し、一定期間内で基準に収まっていれば問題ないとする制度です。

介護職の夜勤の場合、夕方から勤務を開始し翌日の朝まで働くパターンが多いです。夜勤明けの翌日は休日になるため、月単位や年単位でみれば労働時間を基準内に収められます。

慣れてくると働きやすいと感じる人も少なくないため、制度をしっかり整備しましょう。

夜勤専従スタッフの勤務日数

介護業界で夜勤のみで働く労働者は、月に10日程度出勤します。その代わり1回あたりの勤務時間が長く、16時間程度です。

ただし、夜勤においても勤務時間を8時間とし、月20日程度出勤するパターンもあります。この場合、勤務する時間帯は22時から翌朝7時までなどであり、このなかに休憩時間も含まれます。

夜勤でも勤務時間によって働き方が変化するため、労働環境を整備する際はそれぞれに適した配慮が必要です。

夜勤のシフト

介護の現場では、早番、日勤、遅番、夜勤を組みあわせ、4~5通りのシフトで業務を進める場合が多いです。夜勤をさらわけ、準夜勤と深夜勤で対応するケースも珍しくありません。

日勤と夜勤だけでシフトを組む場合は、夜勤が16時間の長時間労働になるため要注意です。ICTツールを導入して業務を効率化し、労働者の負担を軽減できるよう配慮する必要があります。

夜勤の休憩

労働基準法では、労働時間が8時間以上の場合に1時間の休憩を義務付けています。労働時間が16時間を超えるなら、休憩は2時間必要です。

1人の夜勤では、休憩時間中にナースコールが鳴ると十分な休憩が取れないため、労働者にとって大きな負担になります。勤務体制も見直しつつ、きちんと休憩がとれる環境を整えてください。また、夜勤が16時間勤務になるときは、休憩時間中に仮眠もとれるよう配慮しましょう。

夜勤手当

労働基準法では、夜勤に対して日勤の1.25倍以上の割増賃金の支払いが必要であると定められています。ただし、介護職の夜勤の場合、労働基準法で定められている深夜勤務の割増賃金が適用されないケースも多いです。

その代わりとして、夜勤手当を支給している施設も多くあります。日勤の1.25倍よりもさらに高い水準で夜勤手当を支給している施設も少なくないため、労働者には大きなメリットがあります。

介護職の夜勤専従スタッフは兼業・副業としての採用も可能

厚生労働省は働き方改革を推進すると同時に、労働者の副業や兼業の普及も目指しています。

夜勤専従で働いている介護職は、月間の勤務日数が少ないうえに、日中の時間を有効活用できます。兼業や副業を希望する人にとって、介護職の夜勤専従スタッフは魅力的です。

よって、副業や兼業をしたいと考えている人の採用を積極的に検討すれば、夜勤専従スタッフもスムーズに集められる可能性があります。労働者が希望する働き方を考慮し、介護の現場に必要な人手をしっかり確保できるようにしましょう。

介護業の働き方改革の成功事例

社会福祉法人敬愛会が運営する介護・保育施設では、設備の老朽化やスタッフ同士が連携しにくい環境などについて課題を抱えていました。そこで、使いやすさやスタッフ同士のコミュニケーションの取りやすさを考慮し、新しいナースコールや内線PHSを導入しました。

新しいナースコールはどのスタッフでも使いやすく、業務効率化にも役立っています。夜勤の時間帯はスタッフの数が少なくなりますが、内線PHSにより円滑な連携を実現できました。スタッフが動作確認をこまめに行っている点もスムーズな運用につながっています。

設備のサポート体制が充実しているため、安心して利用できています。

まとめ

介護の現場に働き方改革の考え方を上手に取り入れるためには、さまざまなポイントがあります。きちんと対応すれば、労働環境を改善しつつ、人手不足の解消にもつながる可能性も期待できます。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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