製造業に必要なBCP対策とは?中小企業ならではの課題も解説

mail_hatarabo_archives_8.jpg

▼資料の無料ダウンロードはこちらから▼

震災や豪雨などの自然災害だけでなく、感染症拡大による企業への影響に対しても懸念が広がり、対策が重要視されています。中でも、緊急事態に企業が復旧や事業継続を行うためのBCP(Business Continuity Plan)の策定は、中小企業にとっても急務です。

今回は、製造業の中小企業に必要なBCPについて、中小企業ならではのポイントや、製造業特有の課題への対策も含めて解説。中小企業のBCP成功事例も紹介します。

今、中小規模の製造業に求められるBCPとは?

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)を略した用語です。

企業が、自然災害や感染症などの危機に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめながら事業を復旧または継続していくため、平時の活動や非常時にとるべき対策などをまとめた文書を指します。

近年では、毎年のように地震や豪雨などの自然災害が発生しているほか、2020年、2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響も企業の間で広がっています。製造業にとっては、事務所だけでなく工場が災害や感染症によって操業停止を余儀なくされるケースもあり、損害につながっています。

大企業に比べて、拠点の数や規模が限られる中小企業には、特に操業停止は経営に大きなインパクトを与えます。さまざまな危機が起こりうる今こそ、中小企業にも幅広いリスクを想定したBCPが求められています。

製造業のBCP対策のポイント

では、製造業がBCP対策を進める上で、どのようなことを特に意識すれば良いのでしょうか。主なポイントを解説します。

従業員の安否確認体制の整備

非常時に、復旧や事業継続を進める上で欠かせないのが従業員の安全の確保です。

企業を動かす社員の身を守るため、また事業の再開に向けた体制を早く整えるために、安否確認は最優先すべき取り組みです。

安否確認の方法としては、私用の携帯電話に送信するメールを使った安否確認システムや、安否確認アプリ、またGPSを活用した位置確認ツールなどがあります。自社に合った安否確認の方法を定め、定期的に訓練を行っておくことが重要です。

災害対策と訓練の実施

災害が起きた場合に建物への被害を最小限にとどめるために、事業所や工場の耐震措置や防災設備導入などの対策を進めましょう。

耐震措置や防災設備を強化する、または地震時にガスを自動停止する設計の導入などを講じることで、非常時にも工場の生産をスムーズに再開することができます。

また、定期的な避難訓練を行うことも、従業員の安全確保と迅速な事業復旧のために欠かせません。

継続する業務の選択

BCP策定の中で中核をなすのが、非常時に継続する業務の選択です。

災害が起きた際、業務ができる社員の数や、製造業にとって欠かせない部品の調達や資金が制限される可能性があります。非常時の資源の中で、自社が最優先で復旧・継続する業務を定めましょう。

継続業務は、売上高や利益率だけでなく、製品を納入すべき取引先の優先度など、経営や将来性に関わる要素を総合的に検討して判断する必要があります。

代替工場の確保

防災措置を万全にとっていても、工場が被災して操業できなくなるリスクもあり得ます。

工場の機能が止まった場合に備えて、事業を継続する代替拠点を確保しましょう。自社内の別の建物を生産拠点として活用する、また、非常時に支援し合う協定を結んだ企業の拠点を借りるなどの方法が可能です。

また、地震などエリアが限定される自然災害への対策として、1ヵ所の工場が被災しても別の工場で操業を続けられるように、拠点を各地に分散させておくことも有効です。

代替設備の確保

工場内の設備が破損した場合に備えて、代わりに製造を行える設備を準備しておくことも重要です。

非常時のためだけにコストをかけて代替設備を用意することが難しい場合は、保有している設備を他の用途に転用する方法を検討しましょう。

今後、新たな設備を導入する場合に、転用可能性をふまえて設備を選ぶという対応も可能です。

災害による不具合を迅速に整備できる社内メンテナンス体制の確保や、他社から非常時に設備を借りられる協力体制を構築しておくことも有効です。

資源や取引先の分散化

生産拠点だけでなく、在庫の保管場所や取引先を分散することもBCPとして有効です。

原料や商品の保管場所を分散しておくことで、1ヵ所が被災した場合に、事業や供給の停止を防ぐことができます。

また、サプライチェーンの中で異なる地域に立地している複数の企業と取引がある状態を確保しておけば、被災した地域の会社からの原料供給が止まる事態を防げます。

幅広い所在地の顧客を持っていることで、被災エリアの企業の売上源による経営ダメージを軽減できるというメリットもあります。

中小企業がチェックすべきBCPのポイント

では、中小企業にとってBCP策定を成功させるためには、どのような観点が必要なのでしょうか。そのポイントは次のとおりです。

身の丈に合った取り組み

大企業と比べて資金や人員が限られる中小企業の中には、BCPはハードルが高いととらえる考え方もあります。

2020年5月に帝国データバンクが行った「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020 年)」によると、BCPの策定状況について「策定している」と回答した企業は前年度より1.6ポイント増の16.6%。

「現在、策定中」や「策定を検討している」と答えた割合も過去最大で、BCP の必要性を感じる企業が増えていることがわかっています。

一方で、大企業の30.8%が策定していると回答したのに対し、中小企業は 13.6%、さらに小規模企業では 7.9%と、企業規模によって意識に差があることがわかります。

またこのアンケートでは、企業がBCPを策定していない理由として「策定に必要なスキル・ノウハウがない」「策定する人材を確保できない」などが多数挙げられています。

BCPのために、情報収集の時間や人材を割く余裕がないことが策定を妨げていることがわかります。BCPを具体化するためには、中小企業の実態をふまえて、現実的に策定・運用ができるBCP対策が必要と言えるでしょう。限りある人材や資金・資材の範囲内で、自社に合った取り組みを進めるという考え方が重要です。

復旧資金の確保

資金が限られる中小企業にとっては、被災した建物や設備の復旧にあてる資金の確保は課題です。まずは、非常時に必要になる資金を把握し、加入している保険や共済で受け取れる保険金を確認します。必要に応じて、保険の内容の見直しも検討しましょう。

中小企業は、災害対策資金の融資など中小企業向けの制度も活用できます。

策定した計画に基づいて防災のため施設の整備を行う場合に、優遇金利で融資を受けられる「社会環境対応施設整備資金(BCP融資)」や、防災対策に取り組む事業者に優遇金利で融資する「防災・環境対策資金(環境対策関連貸付)」など、政府系中小企業金融機関の制度のほか、民間金融機関のBCP策定企業向け融資制度もあります。

BCPの一環として、中小企業が利用できる公的支援制度について情報を集めておきましょう。また、地域の中小企業支援センターや商工会議所でも、BCPに関する資金について相談ができます。

社内教育でBCPを定着させる

BCPを適切に運用するためには、策定して満足せずに定着させる必要があります。

BCPを社員が理解しておらず非常時に運用できないという事態を避けるため、BCPの内容を社員に伝える研修を行いましょう。

また、年に一度は非常時を想定した訓練を行うことも重要です。訓練を通してわかった不足や問題点をふまえて、定期的な見直しを行いましょう。

BCPを継続的に改善しながら、自社に合った計画として定着させていくことが大切です。

相互支援協定による他社との連携

大規模な災害対策や代替施設の確保が難しい中小企業のBCP策定には、他社との連携も欠かせません。

同業種企業と災害時にサポートし合う協定を結び、どのような場合にどういう支援を求めるかあらかじめ決めておきましょう。地域限定の自然災害時に連携企業と同規模の被害に遭うことを避けるため、自社の周辺だけでなく、他のエリアの同業種企業とも連携するのがベターです。

代替工場や代替設備の面でサポートし合うために、企業単体でBCPを考えるだけでなく、組合単位や工業団地などの団体単位でBCPに取り組むことが有効です。

製造業のBCP取り組み事例

実際に、製造業ではどのようなBCPが策定されているのでしょうか。製造業のBCPの好事例をご紹介します。

主要部門の継続を選択し対策を強化

食肉やハム・ソーセージの製造販売を手がける神奈川県の株式会社湘南ぴゅあは、大震災を想定し、従業員の安全確保と、早期の取引開始を目的にBCPを策定。継続する業務を選択し、その復旧をBCPの目的の核に据えて取り組みを進めました。

災害時に継続すべき事業を、主要事業である精肉部門に決定。精肉部門の継続に重要な冷蔵庫の機能を維持するため、非常用電源の確保や、停電時の対応を強化しました。また、自社工場が被災した場合の生産拠点を敷地内の強固な別棟に決定し、事業を続ける代替工場として確保しました。

工場の分業体制を整え代替拠点を確保

農林業向けの刈払機 (かりはらいき)・チェンソー用エンジン周辺部品などの受注生産を行う神奈川県の株式会社常盤製作所は、本社工場の被災によって製品の出荷が止まる事態を想定。本社工場と新潟工場の連携を強化することで非常時の代替拠点を確保し、主要商品の製造を継続できる体制を整えました。

本社工場の下請け的な存在だった新潟工場でも、本社で製造している製品のプレス加工が行える体制を整備。また、新潟工場でも本社工場で作る部品の加工ができるよう、新たに溶接機や研磨機を導入。また、稼働を優先すべき設備の長期停止を避ける目的で、メンテナンスを社内で行うための教育を計画しています。

非常時に生産を止めないために他社とノウハウを共有

包装資材や緩衝材の製造を手がける東京都の株式会社生出は、2009年の新型インフルエンザをきっかけにBCPを策定。他社との協力体制を確保することで、BCPを強化しました。

会社の近くを通る活断層である立川断層による地震を想定し、まずは、施設内の危険個所の把握や機材の落下防止、ガラス飛散防止など工場の災害対策を徹底。同時に、自社が被災した場合の生産継続のため、自社を含む同業者5社で「相互委託加工契約」を締結。非常時に他社でも自社製品が作れるように、抜型や材質などの生産情報を共有し、製品の品質テストも行っています。

中小企業こそ自社に合ったBCP策定を!

BCPの策定は、大企業だけが行える取り組みではありません。現状の設備を使った代替製造方法を検討したり、他社と協力体制を築いたりと、今ある資産で有効なBCP策定を進めることも可能です。BCPを検討することは、社員ひとりひとりの防災意識の強化やコスト意識につながるといったメリットもあります。

働き方改革ラボでは、BCPの具体策やステップを解説する「企業をもっと強くするBCP策定のススメ」を公開しています。その内容をわかりやすくまとめた資料の無料ダウンロードも実施中。取り組みを進める際に、ぜひ参考にしてください。

参考・出典

この記事を書いた人

リコージャパン株式会社
リコージャパンは、SDGsを経営の中心に据え、事業活動を通じた社会課題解決を目指しています。
新しい生活様式や働き方に対応したデジタルサービスを提供することで、お客様の経営課題の解決や企業価値の向上に貢献。
オフィスだけでなく現場や在宅、企業間取引における業務ワークフローの自動化・省力化により、“はたらく”を変革してまいります。

mail_hatarabo_archives_8.jpg

この記事に関連するタグ