BCPマニュアルを作成する理由とは?作成手順や活用方法を解説

From: 働き方改革ラボ

2022年10月04日 07:00

この記事に書いてあること

現在のビジネスシーンでは、災害時や緊急時に被害を最小限に抑えるために、BCPマニュアルの作成が求められています。BCPマニュアルの作成は、被害を抑えるだけでなく、従業員の解雇や企業の倒産を防ぎ、取引先や投資家からの信頼向上にもつながるものであるといえます。

この記事では、BCPマニュアルの作成手順、作成するときのポイント、注意点について解説します。BCPマニュアルの策定、見直しなどの参考にしてください。

BCPの概要

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。

災害などの緊急事態が起きたときには損害を最小限に抑えたうえで、重要な業務を継続し早期復旧を図らなくてはなりません。BCPはこうした災害に的確に対応していくための事前計画です。

BCPにおける緊急事態とは、台風や土砂災害などの自然災害だけではなく、テロやパンデミック、システム障害なども含まれます。実際に新型コロナウイルス感染症によって大規模な感染症対策がおこなわれたことから、各業界からBCPの策定が注目されています。

BCPマニュアルの概要

そもそもBCPマニュアルとは何か、その概要や災害対策マニュアルとの違いについて解説します。

BCPマニュアルとは

BCPマニュアルとはBCPの手順を示すものです。あらかじめ、何らかの災害やシステム障害などのトラブル発生時に事業が継続できるよう計画を立て(BCP)、BCPマニュアルにおいて計画実現のための手順として、システム復旧の方針や、具体的な方法などを記します。

BCPマニュアルは、トラブルの被害を最小限に抑え、事業を継続していくことを目的とするものです。

災害対策マニュアルとの違い

災害対策マニュアルは、自然災害や震災の際に被る直接的な被害に焦点を当てた対策マニュアルです。具体的には、従業員の安全確保や、施設および設備の破損といったものが該当します。

一方、BCPマニュアルは間接的な被害への対応が含まれています。直接的であるか、間接的であるかにかかわらず、事業や業務を早期に復旧させるためのマニュアルになります。災害対策マニュアルとは、間接的な被害を想定しているという点で異なります。

BCPマニュアルを作成すべき理由

災害対策マニュアルとは別に、BCPマニュアルを作成すべき理由を解説します。

被害を最小限に抑えるため

災害やトラブルがあった際には、事業や業務が早く復旧することで、企業の事業継続性を高めることができます。

一方、災害時にマニュアルがなくては、事業継続ができなくなる可能性が高まります。あらかじめ対策を考えていない場合、対応が遅れて社内が混乱に陥ることも考えられるでしょう。一方マニュアルがあれば、冷静に考え適切な対応をとれるのがメリットです。

廃業や従業員の解雇を防ぐため

緊急事態にあたって有効な手立てを講じられない場合、経営基盤の脆弱な中小企業は、廃業に追い込まれるおそれがあります。

企業が被災してしまった場合、収入が減少して、資金繰りが難しくなることが考えられるでしょう。すなわち操業率が落ちる災害時に備えておくことで、事業の縮小や廃業を防ぐことにつながります。

企業の信頼度向上につながるため

万が一のトラブルのとき、早期復旧は企業の信頼度につながります。緊急時に復旧が早い企業のほうが、企業間で取引するときに安心だと受け止められるためです。

取引先からの信頼を得ることで良好な評価を得られれば、新たな顧客の獲得や取引拡大につながり、投資家からの信頼性も向上するでしょう。適切なBCPマニュアルが存在することは、企業の業績にとってプラスに働きます。

BCPマニュアルを作成する手順

BCPマニュアルはどのように作成すればよいのでしょうか。BCPマニュアルを作成する手順について解説します。

1.想定されるリスクを洗い出す

まずは災害時、トラブル時に想定される企業にとってのリスクを細かく洗い出すことから始めます。リスクを漏れなく書き出すことがトラブルの対処法を準備することにつながるため、考えうるリスクをすべて書き出さなくてはなりません。

また災害、トラブルによって事業を中断することにより、時系列でどのような影響が出るかを細かく分析しましょう。

2.リスク対策に優先順位をつける

次に、事業を継続するために必要な業務の優先度を決めていきます。優先順位の判断基準は、主に以下の2つです。

1. 中核事業が影響を受ける可能性が高いと思われる災害

2. 想定した災害により影響を受ける中核事業上のボトルネック

優先順位をつけるポイントは、発生する可能性が高いかどうか、頻度は高いかどうか、損失が大きいかどうか、の3点となります。より対策が必要なリスクから優先して対応を検討しておきましょう。

3.BCPの発動基準を設定する

どのような場合にBCPを発動させるのか、基準を明確にしておくことも大切です。基本的に、BCPマニュアルを発動するべきなのは「中核事業のボトルネックが影響を受けたとき」「目標復旧時間内に中核事業を復旧するためにはすぐにBCPを発動する必要があるとき」のいずれかです。

これを見極めるためには、一般的な基準を知り、自社にとって必要な要件に変更する必要があります。

4.RTO/RLOを設定する

災害時やトラブル発生時に、どのくらいの時間で、どの程度まで復旧させるかも決めておきます。RTO(Recovery Time Objective)とは目的復旧時間、つまり事業をいつまでに復旧させるかという時間の目安を指します。またRLO(Recovery Level Objective)とは目標復旧レベルのことで、企業にとって即時に復旧させたい機能のレベルを示すものです。

RLOのレベルが低いほど、事業の復旧が早くなるため、自社に必要なレベルを慎重に見極めましょう。

5.フェーズごとの行動を決める

事業を元通りに再開できるまでの各フェーズの行動を、下記のように具体的に細かく決めます。

初期フェーズでは、どのような被害があるのか現状を把握することが大切です。次いで業務仮再開フェーズでは、不足している設備やネットワークを代替・移行する仕組みを整えましょう。あらかじめ代替手段を取りまとめておくことで、より早く、通常に近い業務をおこなえるようになります。

最後に本格復旧フェーズ、つまり災害によって被害を受けた部分を「復旧」していく仕組みを整えます。

6.責任者を明確にしておく

BCPマニュアル策定においては、責任者を明確にしておくことも大切です。非常時だからこそ責任者・代行者を明確にしておくことで、明確な方針を示すことが重要になります。

なお責任者不在時に備えて、代行者も決めておくようにしましょう。

BCPマニュアル作成の注意点

BCPマニュアルを作成する際は、最初から完ぺきにする必要はありません。まずは、以下に説明するBCPマニュアルを作成する際の注意点を参考に作成していきましょう。

最初から完ぺきなマニュアル作成を目指さない

災害は不意に起こるため、最初から完ぺきな対策は難しいでしょう。完ぺきなマニュアルの作成に意識が向きすぎて、災害の準備が間に合わないと本末転倒になってしまいます。

また、BCPマニュアルの内容が難しすぎて、いざ災害が発生した際に運用ができないおそれもあります。こうした事態を避けるために、できる範囲から少しずつでも策定を進めていきましょう。

サンプルやマニュアル、事例を参照する

BCPマニュアルを0から作成すると時間がかかります。そこで中小企業庁のマニュアルや内閣府のガイドラインを参照するのがおすすめです。

各自治体が業種別の事例集を公開しているため参考になります。ただし、そのまま他社の事例を流用せず、必ず自社に合った形へと変更しましょう。

BCPマニュアルを運用するポイント

BCPマニュアルは作成するだけのものではありません。BCPマニュアルを運用するポイントについて解説します。

常に最新情報に更新する

BCPマニュアルを一度作成しても、常に最新情報に更新することを忘れてはなりません。

世の中の流れは早く、時流は常に変化しています。またそれに応じて、自社の周辺環境や事業の内容も変わっていくため、中核事業や想定されるリスクも変化します。つまり古いBCPマニュアルは役に立たなくなってしまいます。

商品・サービスの変更・追加、生産ラインの組み替え、人事異動などのタイミングでBCPの見直しをおこないましょう。

従業員の行動をマニュアル化しておく

いざというときに備えて、従業員の行動をマニュアル化しておくと、目的を持って対処行動することができるようになります。

BCPを策定しても、内容が抽象的すぎると従業員は困惑して、何もできずに終わってしまいます。重要業務や具体的な行動を簡潔に明示することで、緊急時にもマニュアルを参照し、焦らず適切な行動が取れるようにしておきましょう。

代替となる拠点や人材を確保しておく

代替拠点があれば業務を継続できるため、代替となる拠点や人材を確保しておくとよいでしょう。この場合、時系列に従って最適な代替方針を組み合わせることが重要です。

社内で応援要員を確保しておくと、トラブル発生時にある程度の対処が可能になります。大規模災害時などには被災生活支援のための要員と事業復旧のための要員との2通りが必要になることが考えられます。

情報を社内で共有する

BCPマニュアルに関する情報を社内で共有しておくことは非常に大切です。責任者・代行者の存在、代替拠点、応援要員など、社内全員が知っておかなければならない情報は社内で共有し、従業員が把握できるようにしましょう。

BCPマニュアルを共有すると、災害が発生しても従業員は計画通りに行動できます。また複数人で内容を見ることで、計画したBCPに漏れや改善点がないかを確認できるほか、従業員のリスク意識が向上するのもメリットです。

BCPマニュアルの活用方法

BCPマニュアルは非常時以外にも活用することが理想的です。BCPマニュアルの活用方法には、以下のようなものがあります。

訓練をおこない従業員に周知をうながす

BCPを策定しても従業員に周知されていなければ、いざという時にスムーズな対応は難しくなります。またBCP の内容を理解していないと、従業員は適切に対応できないでしょう。

そこで、起こりうる状況を想定した訓練を実施するのが有効です。防災訓練と同じように、BCPの訓練もおこなうのがおすすめです。

定期チェックリストを作成する

策定したBCPマニュアルに対して、定期的なメンテナンスや見直しがスムーズにおこなえるようにチェックリストを作成するのも有効です。

中小企業庁では、策定したBCP事業継続計画の有効性を判断するためのチェックシートを公開しています。見直すべき項目が明確になることでBCPの更新、改善が可能になるため、公開されているものを参考にぜひチェックリストを作成してみましょう。

まとめ

大規模災害、感染症対策など、いざというときにBCPマニュアルがあれば、事業をできるだけ早く復旧し、通常どおりの企業活動をおこなえるようになります。日頃からBCPマニュアルを策定し見直したり、訓練を実施したりして、緊急時に備えましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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