ウィズコロナ時代のBCPとは?策定のポイントと手順を解説

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ウィズコロナ時代のBCPとは?策定のポイントと手順を解説

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新型コロナウイルス感染症は、2020年に日本でも急拡大し、2年が経過した現在でも未だ収束の見込みが立っていない状況です。この2年間で人の移動や出社が制限されたことから、業務の稼働体制に影響が出た企業は少なくありません。

今回の新型コロナウイルス感染症のように、今後も世界的に新たな感染症が広がる可能性は十分にあり、その規模も予測することが困難とされています。

そこで企業は予測不可能な感染症が流行した際にも、事業を継続させていくために事前の準備が必要となります。それが「BCP(事業継続計画)」です。

BCPは、新型コロナウイルスの流行が去った後も、次なる予測できない感染症や災害に向けて企業に必要不可欠なものになるでしょう。今回は感染症対策に特化したBCP策定のポイントを解説します。

※2020年6月公開記事を更新しました

新型コロナウイルス感染症拡大で重視されるBCP

新型コロナウイルス感染症の拡大で、企業規模を問わずBCPの策定が重要視されるようになりました。そこでBCPとはどのようなものか、について混同されやすいBCMや防災計画との違いも合わせて解説します。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan =事業継続計画)とは、自然災害や感染症などが起きた際に備えて、企業の事業運営方針や対応体制などをあらかじめ取りまとめた計画のことです。緊急事態に陥ったケースにおいて、損害を最小限にとどめながら、重要な事業の継続や早期復旧を実現することが目的です。

BCPとBCMの違い

BCP(事業継続計画)と共に名前があがるBCM。よく似た名前ですが違いはどこになるのでしょうか。それぞれの概念や意味を確認していきましょう。

BCPはBCMの一部

BCMとは「Business Continuity Management」の略称で、重要な事業の継続能力を維持・改善するための「事業継続マネジメント」活動という意味です。事業継続マネジメントには「計画・実行・確認・改善」の4つのプロセスが存在します。BCMは事業継続マネジメント全体のプロセスを指し、BCPは4つのプロセスのうち「計画」に該当します。

そのためBCPを策定しても、実用性がなければ機能しません。BCPを策定する際には、事業を継続するための全体像となるBCMを把握した上で、円滑に運用できる体制を整える必要があります。

BCPと防災計画の違い

次にBCPと防災計画の違いはどこにあるのでしょうか?似たような概念ですが、それぞれの目的や意味の違いを見ていきましょう。

防災計画は命を守る計画

BCPと防災計画は似たような意味合いで使用されることが多いですが、「防災計画」は「人命を守ることを目的とした計画」のことです。

「防災計画」は、人命を守るための計画と考えられるため、まず災害が起こった際の従業員やその家族の命を守るための計画に主眼が置かれ、事業の継続に関する観点は含まれていないことが一般的です。

BCPは事業を守る計画

一方でBCPは、災害が起こった際の「事業を守ることを目的とした計画」を指します。

災害が起こった際には、まず人命と資産を守ることが優先されます。しかし従業員の命と会社の資産の安全確保ができ、いざ事業を再開させようとした際に機材や情報が壊滅した状態では業務を再開させることができません。そこでBCPでは、事業を守ることを目的とし、必要な機材や情報、材料の供給経路や情報システム障害に対応する事前計画を立てておくことを主眼としています。

またBCPは自然災害だけでなく、感染症や突発的に発生したシステム障害への対応も策定の範囲内となっています。

BCP策定のメリットとは?

BCPは想定されたリスクへの対応方法を事前に策定しておくことで、緊急事態発生時に損害を最小限に抑えた上で事業を継続させるための計画を指します。

ではBCPの策定によって具体的にどのようなメリットがあるのか6つのポイントから確認していきましょう。

1.災害や感染症発生時の被害を最小限に抑えられる

事前にBCPを策定していることで、突発的な災害や感染症が発生した際に被害を緩和させることが期待できます。

特に日本は地震や集中豪雨など、突発的で大規模な自然災害が発生しやすい土地です。自然災害や感染症は企業の経営に直接的なダメージを及ぼす可能性が高いため、事前にBCPによって対応計画を立てることで、万が一の際に被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。

2.緊急時に迅速な対応ができる

大規模災害や感染症の大流行は、事前予測が困難です。そのため緊急事態によって事業への損害が発生すると、再起をはかる前に事業の継続そのものが立ち行かなくなってしまうケースもあります。

そこで事前に緊急事態時の対応を把握しておくことで、突発的な事態でも対応に困ったり、対応そのものが後手後手に回って収集がつかなくなるなどの事態を防ぐことができます。

3.取引先や投資家からの信用性を高める

不測の事態に迅速な対応ができれば、取引先からの信頼も得ることができ、新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。特に災害発生時に取引先をフォローできる体制が整っていれば、事業を円滑に進められるだけでなく、取引先との深い信頼関係の構築ができます。

また不測の事態にも普段と変わらない事業を継続できることは、企業として盤石な体制が構築できていることの証拠にもなります。企業として強い組織体制は、投資家からの評価も高まり、経営にも大きなメリットを得られます。そのためBCPは企業経営の健全化にも効果があるといえるのです。

4.従業員への安心感につながる

緊急事態発生時にも事業が継続できると分かれば、従業員の安心感にもつながります。

突発的な災害や感染症が発生した際に会社内が混乱してしまうと、従業員は自分の仕事がなくなるのではないかと不安にかられます。しかし事前にBCPを策定していることで、社内が混乱することなく緊急事態に対応できるため、長期に渡る事業停滞というリスクを軽減できます。

そのため従業員は自分の仕事がなくなる不安が払拭されるため、安心して業務に専念でき、不測の事態が起こっても会社全体での生産性を落とすことなく、事業の継続が可能です。

5.重要な業務や優先度が可視化される

BCPの策定の際には、会社内の業務全体を棚卸し、緊急事態発生時に復旧させる事業や業務の優先度付けを行う必要があります。自社内の優先すべき事業や業務内容の可視化ができるため、経営戦略の立案や改善の機会にもつながります。

またBCPはいつ起こるか予測できない事態へ対応するための計画のため、常にアップデートを繰り返す必要があります。そのためBCPのアップデートの度に事業と業務の可視化ができるため、定期的な経営戦略の見直しにも役立ちます。

6.企業の強みと弱みが明確になる

事業の優先度と共に、棚卸しの際に自社の強みと弱みを見つけることができます。緊急事態発生時の業務の停滞によって、経営へのインパクトが大きなものが弱みであり、業務が停滞しないものが強みともいえます。

BCP策定によって自社が持つ事業や業務の強みと弱みを可視化できます。またBCP策定によって浮き彫りになった日常業務を改善することで、企業としての新たな武器を見つけることも可能です。BCP策定によるリスクヘッジ対策と共に、企業としての新たな強みを見つける試みも大切です。

新型コロナウイルス感染症による経営リスクとは?

BCP策定には不測の事態の発生時に想定されるリスクと共に、リスクが解消されるまでの期間の把握も重要です。

特に新型コロナウイルス感染症の流行は、世界的に未曾有な緊急事態。完全な収束までは時間がかかると考えられ、発生直後から復旧を目指す自然災害とは異なり、企業にとって非常に長いスパンの計画や、感染症特有の対応が求められます。

ここからは新型コロナウイルス感染症に関する経営リスクを確認していきましょう。

感染症沈静化まで時間がかかり、収束は予測不可能

地震などの自然災害の場合は、過去の事例から、被害を受ける期間やその後の対応策はある程度策定することが可能です。

一方で、感染症の場合は影響期間の予測が難しいことが特徴です。特に新型コロナウイルス感染症の場合、ウイルスそのものの変異速度が早く、世界的に広がり続けているため、沈静化の目処と収束の時期は予測ができないことが現状です。

被害エリアが広範囲に及ぶ

被害を及ぼすエリアが非常に広いことも感染症の特徴です。自然災害の場合、一般的に影響を及ぼす地域は限定的で、日本全国や世界的に発生することは非常に稀です。そのため被害エリアを回避して事業を継続することが可能です。

一方で感染症の場合は日本国内だけでなく、世界的に影響を及ぼすため、代替施設での稼働が代替サプライヤーの確保も困難になります。

復旧よりも事業継続レベルの決定が求められる

自然災害の場合は、できるだけ早い災害からの復旧と、事業を元の状態に戻すことが求められます。そのため復旧に注力することが一般的です。

しかし感染症の場合は被害が長期間に及ぶ可能性が高いため、どのレベルで事業を継続していくかを決定することが重視されます。従業員や取引先への感染リスクや社会的責任、また経営的な側面を勘案した上での事業継続レベルの判断が重要です。

設備や社会インフラよりも人的資源が失われる

自然災害の場合、被害の範囲は自社の建物や設備、社会インフラがメインとなります。そのため復旧には時間がかかるものの、被害地域を回避しての操業や、早期の復旧によって事業の再開が可能になります。

しかし感染症の場合は、主な被害は人的資源となります。従業員や取引先の健康が害されるリスクがある他、出社や働き方が制限されることで、人手不足に陥る事態も発生します。労働力不足のために対応できる業務範囲が狭まる可能性があります。

感染症向けBCP策定の4つのポイント

感染症の被害を最小限にとどめるためには、どんな点を意識すれば良いのでしょうか。BCP策定のポイントをお伝えします。

1.継続・縮小させる事業の選定

早期の普及が最優先される自然災害向けのBCPとは異なり、感染症を想定したBCPでは、継続する事業や、縮小する事業を選定することが重要です。中核事業を定めた上で、感染症発生時に中核事業とその他の事業をどのくらいのレベルで継続させていくのか、決めておく必要があります。

新型コロナウイルス感染症は変異のスピードも早く、地域によって影響度も大きく異なるため、自治体ごとに特有のBCP策定方針を定めています。ここでは全国的に指針の基本となる経済産業省が2009年に定めた「新型インフルエンザ対策のための中小企業BCP策定指針」をもとに見ていくことにします。

BCP策定指針によると、事業継続レベルは次の感染症発生段階ごとに設定すべきと説明しています。

  • 前段階(未発生期)~第一段階(海外発生期)
  • 第二段階(国内発生早期)
  • 第三段階(感染拡大期、まん延期、回復期)
  • 第四段階(小康期)

第一段階まではすべての事業を通常通り行い、第二段階からは中核事業以外は休止、第三段階では中核事業も縮小するといったように、段階別にレベル設定をしていくことがポイントです。

なお指針の詳細は、事業を行う地域によっても詳細が異なるため、詳しくは該当の自治体ホームページを参考にしてください。

2.交代勤務や在宅勤務など人員確保対策

建物や設備に被害がなく、電力などのライフラインも大きく損なわれる可能性が低い感染症拡大時において、事業継続のための対策として重要なのは人員の確保です。

感染拡大を防ぎながら、中核事業を継続していくために、複数の班による交代勤務や在宅勤務を導入しましょう。またひとりの従業員が複数の業務をこなせるように教育しておくクロストレーニングも有効です。クロストレーニングによって、事業継続のために重要な業務に就く社員が感染しても、人員の確保が可能です。

3.長期の縮小・停止を想定した運転資金の確保

感染症を想定したBCPにおいては、長期間の事業縮小や停止に備えた運転資金を確保する対策も重要です。自然災害が原因のケースよりも、感染症の場合は縮小や停止の期間が長引きます。従業員の給与やオフィスの賃料などから運転資金を概算し、最低でも2ヵ月ほどの事業停止を想定した運転資金を確保できるよう準備しましょう。

4.感染症発生時のBCP発動基準の明確化

BCPをどんな事態で、どのような体制で発動するのかを決めて、文書化することも必須です。「新型インフルエンザ対策のための中小企業BCP策定指針」では、前段階から第四段階までの感染症の発生段階をBCP発動の基準にすることが推奨されています。

また、BCP発動時の指示系統などの体制も明確に定めましょう。経営トップが感染した場合に備えて、代理の意思決定者を複数人決めておくとさらに安心です。

事業所の地域によって発動基準の推奨段階が異なる場合があるため、詳しくは各自治体のホームページにてご確認ください。

BCP策定の7つの手順

実際にBCP策定の手順を解説します。BCP策定の手順は下記の7ステップです。

  1. 方針を立てる
  2. 社内体制を整える
  3. 事業の優先順位をつける
  4. 事前案を策定する
  5. BCP発動基準や体制を整える
  6. 社内で共有する
  7. 随時アップデートをする

それでは各ステップの詳細を確認していきましょう。

1.方針を立てる

BCPを策定する際には、まず何を目指してBCPを策定するのか、どのような部分に着目してリスクの洗い出しをするのか、といった方針を立てる必要があります。経営層が中心となってBCP策定に関する方針がしっかりと立てられていれば、従業員が主体的に自然災害や感染症などで想定されるリスクの洗い出しができるようになり、より具体的な対応策を策定できるようになります。

また自社の経営理念や基本方針とすり合わせたBCPを策定することで、より実用性の高い計画設計が可能になります。緊急事態発生時の自社への影響度やリスクの絞り込みをすると主に、社員や顧客、取引先からの信用を得るといった自社独自の方針の元にBCP策定に取り掛かるとよいでしょう。

2.社内体制を整える

BCPの内容は企業の複数の部門と連携することも多いため、策定の際にはプロジェクトチームをつくって運営するケースがあります。多くの企業では総務部を中心となってBCPの策定に取り掛かりますが、中には各部門から代表者を選出し、より具体的なリスク洗い出しに取り掛かる場合もあります。

BCPはプロジェクトチームだけでなく、全社員が共有すべき情報のため、全社的にBCPの周知徹底ができる社内体制の整備が重要になります。

3.事業の優先順位をつける

緊急事態発生時には全ての事業と業務を完全復旧させることは困難なため、BCP策定時に優先的に復旧に取り掛かる事業と業務の順位づけを行います。優先度の判断基準は、「会社の売上に貢献している事業や」、「復旧遅延によって損害が大きくなる事業」、「市場のシェアや会社の信用度維持のために重要な事業」が一般的です。

しかしBCPで取り扱う優先度は企業によって判断基準が異なることが一般的です。実際の事業の優先順位をつける際には、BCP策定の際に決定した自社独自の方針を元に決定するとよいでしょう。

4.事前案を策定する

事業の優先順位付けの次には、事業ごとに業務の洗い出しを行い、復旧させるべき業務の順位を策定します。特に自社にとって中核となる事業が停止した際に、どの程度の期間であれば会社の体力が続くのかを考慮に入れて事前案を作成することが重要です。

事前案の策定には、事業を継続させるための業務リソースを把握した上で、復旧までの時間を想定されるリスクでシミュレーションを実施することで、具体的な事前案を策定することができます。また緊急事態発生時に事業に必要な資源がなくなった場合のバックアップを確保する手段の検討も必要になります。特に従業員の連絡手段や事業の指示系統の確率も事前対策として必要になります。

5.BCP発動基準や体制を整備する

BCPの策定には必ず「BCPの発動基準」と「BCP発動時の体制・要因」の明確化が必要になります。特にBCPの発動基準が曖昧だと、緊急時に発動まで時間がかかってしまい損害が大きくなる可能性があります。

また緊急時には社内の混乱を防ぐため、事前にBCPの実行チームを形成しておき、トップダウンで素早く動ける体制を整えておくようにしましょう。社内の指示系統と従業員それぞれの行動を事前に整備しておくことで、緊急事態発生時の混乱を防ぐことができます。

6.社内で共有する

BCPの策定が完了したら、社内全体でいつでも確認ができるように文書化することが大切です。BCPの文書化では、中小企業庁が用意しているフォーマットがあるので、それを用いることで効率的に作成することができます。

「中小企業庁BCP策定運用指針」はこちらからご確認ください。

BCPの社内共有の次には、実際の緊急事態発生時に社員がBCPを活用できる体制を整えておく必要があります。そのためBCPの管理場所の共有はもちろん、BCPの教育や会社全体での訓練も必要です。特に従業員が怪我をした際の応急救護法や、防災関連の勉強会を実施することで、BCPの知識の定着はもちろん、有事の際の従業員の自主的なリスク対応も期待できます。

7.随時アップデートする

BCPは作成して完成ではなく、絶えず不測の事態に備えてアップデートが必要になります。アップデートのタイミングとしては「社内組織の変更があった場合」や「国や業界のガイドラインが改定された場合」が一般的です。

また今回の新型コロナウイルス感染症の大流行のように、以前までは想定されていなかったリスクが発生した際にも随時アップデートをする必要があります。BCPは経営方針の変更や社会の変化に柔軟に対応していくことで、より実用性の高いBCPを策定することができます。

情報収集や感染防止策も徹底しよう

発生の予測や、過去の事例からの被害予想が難しい感染症。予期せぬ事態を想定したBCP策定と同時に、感染症に関する正しい情報を知っておくことも重要です。症状や感染経路などの知識や、発生時に連絡できる相談窓口、また利用できる行政の支援制度も把握しておきましょう。

また自社の事業内容に応じた感染予防対策も欠かせません。日ごろから、手洗いの徹底や来訪者管理、テレワーク体制の確保やリモート会議の実施、消毒用アルコール製剤やマスクの確保などの準備をしておきましょう。

体制の整備には時間や費用もかかりますが、会社や社員を危機から守るために対策を進めることが大切です。

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資料に含まれる内容

  • BCPとは?
  • BCP対策のメリット
  • BCP対策の一例
  • BCP策定のステップ
  • 計画だけで終わらないBCP対策を!

参考・出典

この記事を書いた人

リコージャパン株式会社
リコージャパンは、SDGsを経営の中心に据え、事業活動を通じた社会課題解決を目指しています。
新しい生活様式や働き方に対応したデジタルサービスを提供することで、お客様の経営課題の解決や企業価値の向上に貢献。
オフィスだけでなく現場や在宅、企業間取引における業務ワークフローの自動化・省力化により、“はたらく”を変革してまいります。

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