【指示しないマネジメント】いま注目の軍隊式マネジメントで組織を変える方法とは?

From: 働き方改革ラボ

2023年02月17日 07:00

この記事に書いてあること

近年、部下に指示をしない「軍隊式マネジメント」が注目を集めています。これは米軍が実践しているマネジメント方法で、企業でも取り入れられている画期的な方法です。

いったい、軍隊式マネジメントとはどういうものなのでしょうか? この章では、社内でのマネジメントに悩んでいる方に向けて、軍隊式マネジメントの定義や成功させるためのコツを解説します。

※2021年10月に公開した記事を更新しました

軍隊から学ぶ組織論! 軍隊式マネジメントとは

はじめに、軍隊式マネジメントのはじまりや特徴、マネジメントとリーダーシップの違いから見ていきましょう。

軍隊式マネジメントのはじまり

指示をしたことしかやってもらえない、指示をしたのにその通りにできない、報連相がない……。そんな悩みを抱いている上司は多いでしょう。次々と新しい技術やサービスが生まれ、外部環境が変化し、昔と比べて職場環境はさらに複雑になっています。

このような環境のなかでは、従来の命令系統や組織が機能するのが難しくなります。それによって生産性を下げ、部下の自主性や豊かな創造性の芽を摘み取ってしまうかもしれません。

こうした問題は、軍隊でも同様に発生しています。伝統的な国と国との戦争を前提とした、上意下達の命令系統は過去のもの。現在の軍隊が直面しているのは、対テロリストなどの不確実な敵と、多国籍軍などの不確実な味方のなかでミッションを達成しなければならない、「不確実性を前提とした組織運営」です。

米軍では、従来型のリーダーシップやコミュニケーションの取り方が徐々にうまく機能しなくなった結果、研究に基づいた大きな改革が実行されました。それが「軍隊式マネジメント」であり、企業で注目を集めているマネジメント方法なのです。

マネジメントとリーダーシップの違い

「マネジメント」と似た単語としてリーダーシップが挙げられますが、どのような違いがあるのでしょうか?

マネジメント能力とは、ひと言でまとめると「管理能力」です。マネジメントという概念をビジネスに持ち込んだのはオーストリアの経営学者であるピーター・ドラッカーであると言われており、著書ではマネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具であり、機能であり、機関である」と定義しています。

また、マネジメント能力と似た用語としてリーダーシップが挙げられますが、ドラッカーによると、リーダーシップは「資質ではなく仕事」、「地位や特権ではなく責任とみること」が必要な要件であり、マネジメント能力とは違った意味合いになっていることに注意が必要です。

企業に取り入れたい軍隊式マネジメントの特徴

近年取り入れる企業が増えている軍隊式マネジメントは、刻一刻と変化する目の前の状況に対し、組織全体の目的にかなう形で個人が柔軟な対応を確実に取るという特徴があります。これは、ビジネスにおいて大切なことです。

軍隊と企業というと、一見違ったもののように思えますが、上司(リーダー)がおり、部下(チーム)に指示を出すという構造で共通点があります。

米軍は指示を出さない? 軍隊式マネジメントを成功させる3つのコツ

軍隊と企業には共通点があるとはいえ、実際に軍隊式マネジメントを企業に取り入れたいと思ったとき、どうすれば成功に導けるのか、迷う方もいるかもしれません。そこでこの章では、軍隊式マネジメントを成功させるためのコツを3つご紹介します。

1. 「ミッション」と「制約条件」を現場に浸透させる

1つ目が、「ミッション」と「制約条件」を現場に浸透させることです。「ミッション」は組織における目標であり、「制約条件」は行動プロセスにおける諸条件を意味します。

軍隊では、上層部が兵士に対し、「何をすべき」で「なぜそれをやろうとしているのか」、「その行動にかかる条件は何か」を明示することを徹底して行い、どのように行動するかは兵士個人に考えさせます。

これを企業に当てはめると、上司は、部下に対して「ミッション」と「制約条件」を丁寧に伝えた上で、行動に関しては指図せず、部下に委ねることになります。部下を信頼していることを伝えることもでき、関係性向上にもつながるでしょう。

2. 目標は中長期的なビジョンと短期的な個人目標に分けて策定する

2つ目が、中長期的なビジョンと短期的な個人目標に分けて策定することです。

軍隊では、「中長期」的なビジョンの策定と、個人の達成すべき「短期」的な目標の策定に重点が置かれています。これらを決定し、周知することに徹したあとは、前線にいる兵士個人に一任するのです。

現場判断に任せる自由を確保することで、兵士が創造性を発揮できるようになり、ミッション達成への道筋を考えて行動するようになったと言われています。チームのビジョンはもちろんのこと、従業員の目標も決めることで、一人ひとりがやりがいを持って業務に取り組めるようになるでしょう。

3. 部下の自主性を尊重する

3つ目が、部下の自主性を尊重することです。

1つ目、2つ目のコツでも先述したように、軍隊では、全体の統制を取るための大きなミッションと向かうべきゴールのみを明確にし、共有することを徹底しています。あえて詳細な指示を出すことをやめ、兵士の自主性を尊重し、自ら判断し動くことを推奨しているのです。

企業においても、部下の自主性を尊重することが大切です。部下に一定の裁量を与えることで、判断力も向上するでしょう。

それぞれ誰かの上に立つポジションの人に向けられた言葉ですが、管理職だけに当てはまるものではありません。軍隊式マネジメントの章でも触れましたが、自主性を持つ仕事の仕方が求められるようになっている現代において、誰もが身につけるべきスキルといえるでしょう。

ビジネスにおける軍隊式マネジメントの必要性

続いて、ビジネスにおける軍隊式マネジメントの必要性を、3つのポイントに分けて解説していきます。

経営の持続可能性につながる

1つ目が、経営の持続可能性につながることです。

軍隊式マネジメントは、上司が部下に明確なビジョンやミッションを示しながらも、行動は部下に委ねることが必要になります。部下の実行力や決断力が鍛えられることで、組織そのものの力が強くなり、経営の持続可能性につながるのです。

長く続けようとすればするほど、その場限りの成果や、やりやすさだけでなく、世代交代についても考えなければなりません。そのため、経営の持続可能性を叶えるためにも、マネジメント能力は必要です。

人材不足解消になる

2つ目が、人材不足解消になることです。

マネジメントというと「上司が一方的に指示を出し、部下がそれに従う」という構図を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし軍隊式マネジメントでは、企業のゴールへ導きながらも、同時に部下の創造性にも委ねており、部下が自分のやり方で業務に取り組むことができ、やりがいを得やすくなるのです。

また、部下に委ねる際も、上司が部下にあれこれ口を出すのではなく、見守る姿勢を持つことが大切です。その積み重ねが部下の居心地の良さにつながり、結果、人材不足解消になるでしょう。

個人の能力が向上し成果を出しやすくなる

3つ目が、個人の能力が向上し、仕事において成果を出しやすくなることです。

軍隊式マネジメントでは、上司が部下に対し、ただ指示を出すだけでも放置するだけでもなく、明確なビジョンやゴールを提示した上で、個人にあった目標を立てます。そのため、部下の能力が向上し、結果、業務での成果を出しやすくなるのです。

軍隊式マネジメントは、上司にとっても部下の個性を見極める機会になり、適正な役割を与えるきっかけを作ることで、より個人の能力を引き出しやすくなるでしょう。

リーダーに求められる5つのスキルとは

では、マネジメント能力に続いて、リーダーに求められるスキルは何があるのでしょうか。この章では、リーダーに求められる5つのスキルを解説します。

1. コミュニケーション能力

1つ目は、コミュニケーション能力です。マネジメントをする際には、部下や同僚とのコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーション能力を鍛えることで、個人に合わせた指示の出し方やフォローの仕方などもわかり、業務効率化にもつながります。

2. 分析力

2つ目は、分析力です。分析力とは、ある問題が起きたときに、原因はどこにあるのか、どうすれば改善できるのかなどを分析する能力のことをいいます。ほかにも、企業の強みや弱み、競合分析など、さまざまな分野において分析力が役立ちます。

3. 問題解決力

3つ目は、問題解決力です。問題解決力は分析力とも通じますが、分析力が問題や物事を分析する能力なのに対し、実際に問題を解決する能力のため、違いがあることに留意しましょう。問題を認識し、解決策を考え、さらにそれを実行に移すまでが「問題解決」です。

業務では、さまざまな問題や予測不能な事態が発生する仕事ことが考えられるからこそ、リーダーに限らず、誰もが問題解決力を身につけるべきといえるでしょう。

4. アセスメント能力

4つ目は、アセスメント能力です。アセスメント能力は、ひと言でまとめると、視覚や聴覚で得た情報を数値的・客観的に分析する能力のことをいいます。医療業界で使われることの多い用語ですが、ビジネスでは、部下のスキルや強みを分析すること、人事において求職者の特性を分析することなどをアセスメントと呼びます。

アセスメント能力は、個人の特性を見極めるために欠かせない能力です。アセスメント能力を身につけることで、より明確で、部下の強みを最大限に活かした指示の出し方ができます。

5. ファシリテーション能力

5つ目は、ファシリテーション能力です。ファシリテーション能力は、会議や話し合いをスムーズに進行させるための能力です。これは大人数の場ではもちろんのこと、チームなど少人数での場でも活用できます。

それぞれの意見を引き出すだけでなく、総評としてまとめることもファシリテーションには欠かせません。ファシリテーション能力を鍛えることで必然とコミュニケーション能力も上がり、良好な関係性構築につなげられるでしょう。

マネジメント能力を身につけるための3つの方法

ご紹介したように、軍隊式マネジメントを成功させるためには、コミュニケーション能力や分析力など、さまざまな能力を身につけなければなりません。それぞれの能力は別のものではなく、相互作用で成り立っているため、得意なものから伸ばしていきましょう。

では、具体的に、マネジメント能力はどのように伸ばしていけばいいのでしょうか? この章では最後に、マネジメント能力を身につけるための3つの方法を解説します。

1. マネジメント理論を学ぶ

1つ目が、マネジメント理論を学ぶことです。マネジメント理論はドラッカーが提唱した理論で、そこから派生して、組織を構成している要素を7つにまとめた「7S」や、計画・行動・評価・改善の4つに分けた「PDCA」などさまざまなフレームワークが企業で用いられています。

軍隊式マネジメントに限らず、マネジメント理論はインターネットや本などにフレームワークがまとめられています。それらを学び、業務で実践していくことで、マネジメント能力の向上に近づくでしょう。

2. ポジションチェンジの思考を身につける

2つ目が、ポジションチェンジの思考を身につけることです。ポジションチェンジとは、その名の通り、自分や相手のポジションを変える考え方のことをいいます。

たとえば、上司側はどうしても指導する側の視点を持ってしまいがちですが、部下の視点に立つことで、どのような指示の出し方がわかりやすいか、フォローをしてほしいかなどを考えることができます。

軍隊式マネジメントにおいてはどうしても「上司」という立場になってしまうため、ポジションチェンジ思考をすぐに身につけるのは難しいかもしれませんが、なるべく意識することで、部下とのコミュニケーションの取り方が変わるかもしれません。

3. 丁寧なコミュニケーションを心がける

3つ目が、丁寧なコミュニケーションを心がけることです。これは2つ目に挙げたポジションチェンジ思考にも通じますが、部下や上司など、立場によって指示の出し方を変えるのではなく、対等で丁寧なコミュニケーションを心がけることで、信頼関係の構築につながります。

軍隊式マネジメントにおいて、信頼関係は欠かせません。お互いをよく知るためにも、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

まとめ

昨今は、”働き方改革”によってより一人ひとりの働き方や価値観を尊重し、個々人が柔軟に選択して働ける環境の整備が強く求められるようになっています。こうした変化と新たな世代を前に、従来のリーダーシップは通用しません。

指示を待つばかりで動かない、だからあらゆることを常に細々指示しなければならないと決めつけず、見方を変えてみましょう。細部まで詰めるパワーマネジメントではなく、部下を信じる、認める、褒めることで自主性を引き出すしなやかなマネジメントの実践に努めるのです。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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