建築業界の今後とは?人手不足や若者離れの原因や対策を紹介

From: 働き方改革ラボ

2024年03月11日 07:00

この記事に書いてあること

昨今の建築業界で問題視されているのが、高齢化による人材不足や若者離れです。そんな状況にも関わらず、建築需要は今後も加速していくと予想されるため、企業は労働力の確保に向けて行動を起こさなければなりません。

この記事では、働き方改革を検討している企業の経営層や担当者に向けて、人手不足や若者離れの原因を解説します。あわせて対策や事例も紹介しますので、是非参考にしてください。

建築業は今後どうなるのか?人手不足・若者離れの3つの原因

はじめに、人手不足や若者離れの原因として考えられるものを3つ解説していきます。

1.新型コロナウイルス感染症の影響

1つ目が、新型コロナウイルス感染症の影響です。

建築業は、東京オリンピック開催に向けて新国立競技場や有明アリーナの施工などが予定され、また多くの選手や観光客で賑わう予測から会場周辺の大規模な開発や宿泊施設の建築が活性化し、好調な業界とされていました。

しかし、新型コロナウイルス感染症が流行し、オリンピック開催が延期や無観客開催となってしまったことや、感染対策により対面での仕事に制限がかかったことなどが、離職率の増加につながったことが考えられます。

2.世界情勢による資材高騰

2つ目が、世界情勢による資材高騰の影響です。

建築業は、ロシア・ウクライナ間の戦争など、世界情勢による影響も大きく受けています。ロシア・ウクライナ間の戦争では、アメリカや日本などG7をはじめとした国のロシアに対する経済制裁のため、資材を多く所有するロシアからの輸入が難しくなりました。

そのため、ロシア以外から資材を輸入しようとする国が集中した結果、資材価格が高騰し、人件費を含めたその他の経費が上げづらくなっています。給与の不満や、先行きの見えない不安から、他の業界へとうつったり、そもそもの求職者が減ったりしていると考えられるでしょう。

3.物価高騰による人材流出

3つ目が、物価高騰による人材流出です。

世界情勢によって全体的に物価が高騰しているため、従業員の生活に関するコストがあがり、給与水準が高い職業を求める人が増えています。しかし、建築業は日雇いなど不安定な業務形態で給与に不安があったり、体力仕事のため長く働き続けられない印象があったりするため、建設業に対する求職者の人気が衰え、人手不足・若者離れが加速していると考えられます。

建築業でこれから課題となる5つのポイント

すでに人手不足や若者離れが進んでいる建築業ですが、そこからどのような問題が起こるのでしょうか。この章では、建築業でこれから課題となるポイントを5つ解説していきます。事前に問題を意識し、労働環境を整えていくといいでしょう。

1.建物の維持管理・再建の仕事の増加

1つ目が、建物の維持管理・再建の仕事の増加です。

近年、高度成長期やバブル期に建てられた建物が老朽化を迎えつつあります。そのため、建物の維持管理や再建の需要が伸びており、今後20年でさらに加速する見込みです。

国土交通省が2018年に発表した「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」では、老朽化した建物の維持管理費が報告されています。2013年度の維持管理費が3.6兆円であったのに対して、2023年には約4.3~5.1兆円、2033年には4.6~5.5兆円程度の維持管理費が必要とされています。

しかし人手不足・若者離れが進んでいると、仕事の数に対して従業員の数が足りなくなってしまいます。一人ひとりにかかる負担が増えてしまうと、労働環境の改善もままならず、離職につながることが考えられるでしょう。

2.従業員の高齢化

2つ目が、従業員の高齢化です。

建築業界は、ほかの業界と比べても高齢化が進行しています。国土交通省の「年齢階層別の建設技能者数」(令和3年度平均)によると、建設業就業者のうち、65歳以上は52.6%、20〜24歳は14.1%と、大きく差が開いています。

高齢労働者の大半は、今後10年で引退すると予想されます。したがって、早急に若い働き手を確保し、育成を始めなければ、建築業界全体が衰退しかねません。

3.労働災害の防止

3つ目が、労働災害の防止です。

建設業労働災害防止協会の「建設業における労働災害発生状況」によると、令和元年から令和4年の労働災害は、平均の死傷者が平均15,194.5人、死亡者が274人となっています。

平成11年は年間の死傷者が3万5,310人、死亡者が794人だったため減少傾向にありますが、建設業の労働者自体の減少を鑑みると、労働災害が少なくなったとは言い切れないでしょう。

従業員が安心して働ける環境を整えることで求職者のポジティブなイメージにつながり、労働人口の確保にもつながると考えられます。そのためにも労働災害の防止は大きな課題となるでしょう。

4.インボイス制度の導入による取引の負担

4つ目が、インボイス制度の導入です。

2023年10月より、適格請求書等保存方式(通称:インボイス制度)がはじまりました。インボイス制度とは、消費税の軽減税率が導入されたことによって、仕入れ額に対する正確な消費税額の計算が求められる制度のことをいいます。

建設業では、免税事業者である下請先に依頼をすることで仕事が成り立っているケースが多くあります。インボイス制度の導入により、下請先が課税事業者になっていない場合は消費税が控除対象とならず、発注側の負担が増えるため、取引が行われなくなる可能性が高いことが課題になるでしょう。

また、従業員と業務委託契約を結んでいる場合、従業員が非課税事業者のまま進める場合は、仕入税額控除が認められず、負担する消費税が増えてしまいます。

5.2024年問題や法改正による影響

5つ目が、2024年問題や法改正による影響です。

2024年問題とは

2024年問題とは、これまで物流・建設業で猶予されていた働き方改革関連法の一部が施行され、時間外労働の上限規制や時間外割増賃金率の引き上げなどが発生する問題をいいます。守られていない場合は罰則が課せられるため、注意が必要です。

建設業法の改正とは

2024年問題に先立って、2022年10月に改正された建築業法への取り組みがすでに課題となっている事業者も多いでしょう。社会保険の加入の義務化など長時間労働の是正と労働環境の適正化を目的とされた内容が揃っており、2024年問題の準備と考えられます。まずは法改正に則った経営をしつつ、2024年問題の対策を進めましょう。

建築業界内での人手不足・若者離れの対策

続いて、建築業界内での人手不足・若者離れの対策をご紹介します。

1.労働条件の見直し

1つ目が、労働条件の見直しです。

働きやすく、整備された労働環境は、外国人労働者や若手人材の確保を促進します。具体的な施策としては、週休2日制の取り組みや残業時間の抑制、教育や研修制度の充実、女性の積極的な活用など挙げられます。国や自治体と協力して進めることを検討するのもよいでしょう。

2.外国人技能者の活用

2つ目が、外国人技能者の活用です。

新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきたこともあり、技能実習や特定技能など外国人人材の活躍が期待されています。外国人技能者には20代〜30代の人材も多く、若手離れを解消できるうえに、職場の活性化にもつながるでしょう。なかには日本語を理解しづらい人もいるためマニュアルを整えておく必要はありますが、重要な働き手になると思われます。

3.DX化による業務効率化

3つ目が、DX化による業務効率化です。業務効率化には、ITツールの導入やテレワークの整備などの方法があります。

ITツールの導入

ITツールとは、業務効率化のためのソフトやサービスです。建築業界において、ITツールは事務作業のデジタル化や、スマートフォンやタブレットによる図面・施工管理などに役立ちます。機械に任せられる仕事はITに任せると、手作業もスムーズに仕事が進みます。ITツールの活用によって削減された時間は、人にしかできない業務に注力していけると良いでしょう。

テレワークの整備

コロナ禍によってテレワークにシフトする企業が増えていますが、工事現場の作業はテレワークに不向きです。建築業務でテレワークを推進するならば、受注業務や設計、施工管理などのオフィス関係者を中心に実施しましょう。

建築業界にテレワークが普及すると、移動時間を削減できるうえに、柔軟な働き方による人材確保に役立ちます。クラウドサービスによるデータ共有、チャットツールやWeb会議システムのようなコミュニケーションツールなどを駆使し、テレワークに向けて環境を整備しましょう。

建築業界のITツール導入による成功事例

最後に、建築業界の企業で、ITツールの導入・活用より業務効率化に成功した事例を紹介します。自社の課題解決の参考にしてください。

株式会社サーモアドベンチャー

株式会社サーモアドベンチャーは、サーモグラフィ技術に特化した建物の診断や測定、各種工事などを実施しています。

豊富な実績と高度な技術力から高く評価されており、世界トップクラスのシェアを誇るTeledyne FLIRのサーモグラフィカメラを導入し、建物内部の温度分布を外から計測することで、建物を傷つけることなく内部の状態を的確に分析できるようにしました。また、サーモグラフィ画像を元にした建物性能の数値化を行うことで、顧客に説得力のある提案ができるようになりました。

松尾建設株式会社

松尾建設株式会社は、建築に加え、土木・建設業を主体とする総合建設業を営んでいます。同社の仕事には、図面や現場写真を印刷するA3プリンターが欠かせません。しかし、従来導入していたインクジェットプリンターは家庭向け製品で、修理に時間がかかる場合はその間業務が止まることになるため、本部には修理時に使うための予備プリンターを常にストックしておく必要がありました。建設現場は広範囲に点在することから、修理品の回収や代替え品の配布には手間も時間もかかるという課題がありました。

新たに導入をしたジェルジェットプリンターは、訪問保守点検を受けられ、不具合の際は即日対応も可能。また、インクを注文すると当日あるいは翌日に届けられるため、現場の業務がスムーズに進むようになりました。

大成建設ハウジング株式会社

大成建設ハウジング株式会社は、自社製の戸建住宅などの設計・施工・販売から、住宅リフォームまで幅広く手掛けています。膨大な数のチラシは折りたたむ手間がかかるうえに、ほかの印刷物と混じりがちであったため、同社では販促チラシの制作が課題でした。

そこで、課題解決に向け、同社はカラー複合機とともに「紙折りユニット」と、印刷物を最大8つのトレイに仕分けできる「プリントポスト」を導入しました。チラシを折る手間を省けるとともに、印刷物の仕分けもできるようになり、業務効率化が叶いました。

まとめ

建築業界の需要は今後も高まると予想されます。高い需要に応えるためには、人手不足を解消するとともに、業務の効率化が急務です。ITツールは、効率よく働きやすい環境づくりに役立ちます。労働環境の課題を見直しながら、人手不足や若者離れの対策を行なっていきましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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