助成金も新設!シニア人材の活躍を促進するエイジフレンドリーとは?

From: 働き方改革ラボ

2022年09月01日 07:00

この記事に書いてあること

労働人口減少が進む中で、シニア人材の活用が重視されています。そんな高齢を迎えた労働者の活躍を促すために厚生労働省が推進しているのが、「エイジフレンドリーな職場作り」です。そこでこのコラムでは、エイジフレンドリーの意味や、厚生労働省が作成したエイジフレンドリーガイドラインの内容、エイジフレンドリーに取り組むメリットなどを幅広く解説。取り組みの具体策や企業の成功事例、さらにエイジフレンドリー補助金の概要もお伝えします。

※この記事は2022年9月時点の情報を基にしています

エイジフレンドリーとは?

エイジフレンドリーとは、高齢者の特性を考慮して、彼らが働きやすい職場環境を作る取り組みのこと。働く人の年齢が上がる中で、高年齢労働者の労働災害を防ぐため、2020年に厚生労働省が「エイジフレンドリーガイドライン」を公表しました。

エイジフレンドリーガイドラインとは、シニア層の労働者が安心・安全に働ける職場環境を実現するために、企業や労働者に必要な取り組みをまとめたものです。ガイドラインでは、高年齢労働者の就労状況や業務内容を含む職場の実情に応じて、国などの支援を活用し、法令で義務付けられている取り組みや高齢者の労災防止に努めるよう、事業者に求めています。

エイジフレンドリーな職場作りが求められる背景

エイジフレンドリーの取り組みが求められる理由は、働く高齢者の増加です。60歳以上の雇用者数は、過去10年間で1.5倍に増加。特に、全産業の中でも労働災害発生件数が多い、商業や保健衛生業などの第三次産業で働く高齢者が増えています。

また、労働災害による全死傷者数の中で60歳以上の労働者が占める割合は26%で、増加傾向にあります。高齢者の労働災害の発生率は若年層に比べて高く、転倒災害、墜落・転落災害の発生率も、若年層に比べて高い水準です。加齢による身体能力の低下にともなって災害の発生率が上がり、シニア層は労災による休業も長期化しやすいことから、高齢化が進む今後は、高年齢労働者にとって働きやすい職場作りはさらに必要になるでしょう。

エイジフレンドリーを実現するメリット

では、エイジフレンドリーな職場を実現することは、企業や働く人にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

労働災害を防止できる

エイジフレンドリーの取り組みの第一のメリットは、労働災害を減らせることです。高齢者に限らず、働く人に起こりえる事故のリスクに対処することで、仕事中の怪我や、仕事の負荷による体調不良を防ぐことができます。長期の休業にもつながる労働災害の発生を抑えることができれば、シニアを含む幅広い年齢層の従業員に、長期間、安定して活躍してもらうことができます。

人材の確保

高年齢労働者にとって働きやすい職場を実現することで、シニア層を含む人材を多く確保できます。幅広い年齢層の従業員が活躍できる企業は採用が活性化し、人材不足を防げます。スタッフが充足した職場ではひとりひとりの作業負荷が軽減することから、長時間労働などの働き方の問題も解消できます。

職場全体の労働環境改善

シニアにとって働きやすい環境を整えることは、職場全体の労働環境改善につながります。企業には、高年齢労働者だけでなく、体力面に不安を抱える人や、仕事を始めたばかりで慣れていない人など、仕事の負荷がかかりやすい人の労働災害も防ぐ必要があります。性別や年齢、体力の違いなどに関わらず、すべての人にとって働きやすい設備や仕組みを整えることで、従業員満足度の高い職場を実現できます。

エイジフレンドリーな職場作りの具体策とは?

では、エイジフレンドリーな職場作りは、実際にどのように進めればよいのでしょうか。エイジフレンドリーガイドラインなどで示されている具体策をお伝えします。

無理な作業姿勢や労災リスクを減らす設備の改善

高齢者の労働災害につながる要因や、無理な作業を減らすために、身体能力の低下を補う装置の導入や、設備の改善を行いましょう。

たとえば、階段への手すりの設置、不要な段差をなくすなどの対策で、転倒リスクを減らせます。また、作業台の高さや作業対象物の配置転換によって、無理な作業姿勢をなくすことも大切です。物を運ぶ通路や作業場所の明るさを確保することも、事故防止につながります。通気性の良いユニフォームの採用や涼しい休憩場所の確保といった、暑さによる体調不良を防ぐ対策も進めましょう。

高齢者の特性に応じた作業内容の見直し

持久力や敏捷性、筋力低下などのシニアの特性を考慮して、勤務形態や作業内容を見直すことも重要です。注意力や集中力が必要な仕事は作業時間を短くする、ゆとりを持って作業ができるスケジュールの設定、体の負担が大きい作業には定期的な休憩をはさむなど、高齢者が無理なく働けるよう工夫しましょう。

また、高齢になると一般的に、暑さや自身の体調の変化に対応しにくくなります。水分補給を推奨して熱中症を防ぐ、始業時の体調確認の徹底や、体調に不安を感じたときの迅速な申し出を指導するなど、熱中症を含む体調不良を防ぐ取り組みも重要です。勤務時間の長さや休日の設定、負担の多い仕事は交代制にするなど、勤務形態の見直しも行いましょう。

健康診断や体力チェックの実施

高年齢労働者の健康や、体力の状況をチェックする取り組みも進めましょう。法律で定められている雇入時の健康診断や定期健康診断を確実に行い、高齢者の健康状態を把握しましょう。また、加齢による心身の変化を含む、継続的な体力チェックを行うことも勧められています。

個々の高年齢労働者の健康や体力に応じた労働時間短縮や配置転換も有効です。シニア層には、ひとりひとりの状況に合った業務を提供するよう努めましょう。

シニアの心身の健康を増進する取り組みも重要です。ロコモティブシンドロームを防止する活動や、トレーニング機器の配置などの健康支援によって、シニアの身体機能を維持・向上を促しましょう。

安全衛生教育

自身が従事する作業内容や、労災につながるリスクに対する理解を促すため、高齢者に対する十分な安全衛生教育を行いましょう。軽作業や、危険性が低いと思われる仕事でも労災リスクがあること、加齢による身体機能の低下を自覚する必要性や、体力維持や生活習慣の改善の大切さを、丁寧に伝えることが重要です。

また、再雇用や再就職などにより経験のない仕事に高齢者を従事させる場合は、リスクを減らすため、特に丁寧に作業に関する教育訓練を行いましょう。シニア向けの教育では、写真や図、映像などの文字以外の情報も使った、わかりやすい伝え方を意識するのがポイントです。

高齢者の活躍促進のための取り組み事例

さまざまな角度から実践ができるエイジフレンドリーな職場作り。その取り組みは、実際に企業ではどのように行われているのでしょうか。エイジフレンドリーを成功させている企業事例をご紹介します。

各店舗の情報と他社分析から導いた防止策で労災が減少

滋賀県を中心にスーパーなどの小売業を展開する株式会社平和堂は、本部と各店舗の連携で講じた転倒防止策によって、労働災害減少を実現しました。本部の健康管理室に、専属産業医・専属衛生管理者を配置して、全店舗に向けて、健康面、安全面を考慮した労災事故防止対策を指導。また、各店舗の労災情報を集約して労災を分析し、特に事故が多かった油を使うデリカ作業場の災害防止策を検討しました。

本部は、転倒労災が少ない同業他社を視察して、対策を検討。作業床の改善や耐滑性デリカシューズを導入した結果、デリカ部門の転倒災害が約38%減少。労働災害全体の件数も、47%減少しました。

作業台の改善やIT活用による負担軽減の取り組み

空調事業などを手がけるダイキン工業株式会社は、業務用エアコンという大きく重い製品を扱う製作所での作業負担軽減の取り組みを実施しています。製品取り付けを行う作業台を傾けられるように改善し、スタッフの無理な姿勢を解消。また、大型室外機の組み立てを行う作業台を回転・上下に昇降させられるようにしたことで、スタッフが、腰を曲げたり背伸びしたりせず、適正な作業姿勢で作業ができるようになりました。

また、ITを活用した部品管理により効率的な作業を実現したほか、リスクの予知や衛生の重要性を身をもって学ぶための安全体感教室、衛生体感教室を実施するなど、幅広い労災防止対策を行っています。

体力低下に伴う配置転換と警備員の熱中症対策を進行

警備などのセキュリティ事業を担う綜合警備保障株式会社は、個々人の加齢による体力低下に伴う適正な配置転換や、熱中症対策を実施。警備員の体力の変化に応じて、夜勤が必要な「機械警備」や重い現金を運ぶ「警備輸送」から、建物の出入管理や巡回、監視などを行う「常駐警備」へ転換するなどの対応を行っています。

また、着衣センサを使って計測した警備員の心拍数から熱ストレスを察知、責任者に通知する実証実験を実施。警備業で課題とされている、熱中症を防ぐ対策も進めています。

エイジフレンドリー補助金を活用しよう

2020年、厚生労働省による「エイジフレンドリー補助金」が創設されました。エイジフレンドリー補助金とは、高齢者が安心して働ける職場環境改善を行う中小企業を支援する制度です。身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、働く高齢者の健康や体力の状況の把握、高年齢労働者の特性に配慮した安全衛生教育など、働く高齢者のための職場環境改善にかかる費用の一部を補助します。

対象企業は、
60歳以上の高年齢労働者を常時1名以上雇用していて、
労働保険に加入、そして
小売業は従業員50人以下、資本金または出資の総額5,000万円以下、
サービス業は従業員100人以下、資本金または出資の総額5,000万円以下
といった、業種ごとに異なる条件に該当する中小企業事業者です。

2022年度の補助金申請期間は、2022年10?末日まで。補助率は1/2で、上限金額は100万円です。詳しくは、厚生労働省のリーフレットを参照、または、エイジフレンドリー補助金事務センターまでお問い合わせください。

幅広い年代が活躍できる会社へと踏み出そう!

働く場所や設備の物理的な改善や、働く人自身の意識を変えることで促進できる職場のエイジフレンドリー。さまざまな年齢層の人に優しい環境作りが、多様な人材が活躍できる会社への一歩を踏み出すきっかけになるでしょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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