進化系フリーアドレス「ABW」とは?フリーアドレスとの違いとメリットを簡単解説!

From: 働き方改革ラボ

2023年10月25日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革の推進や新型コロナウイルスの流行によって「ABW」への注目が高まってきています。ABWはフリーアドレスの進化系と言われ、オフィス内外のさまざまな種類のワークスペースから、個人が働く場所を選んで仕事ができるスタイルです。働き方改革に注力する日本の企業にも採用され始めています。

従来までのオフィスのあり方とはまったく異なるABWの魅力は、どこにあるのでしょうか?フリーアドレスオフィスの先を行く働き方の基礎知識やメリット、導入時のポイントについても解説します。

ABWとは? 定義や特徴

はじめに、ABWの定義や特徴について解説していきます。

ABWの定義や具体例

ABWとは、「Activity Based Working」の略で、「仕事の内容や目的に合わせて、社内外問わずふさわしい場所を選んで仕事ができる働き方」のことを意味します。

ABWは、定義を広く捉えるとオフィス外のカフェなども働く場所とみなされますが、狭義ではオフィス内に留まり、企業によって捉え方が異なります。詳しくは後述しますが、オフィス内でのABWの具体例としては、集中して作業をする集中ブースや、オンラインでミーティングをする社員に向けたWEBミーティングブースなどが挙げられます。

この記事では、広義のABWを前提に解説していきます。

ABWが広がった背景

ABWはオランダのコンサルティング会社Veldhoen + Companyが提唱したスタイルで、生産性を上げるオフィスのあり方として注目され、欧米企業や働き方改革に先進的な日本企業でも導入されています。

ABWが日本に広がった背景としては、新型コロナウイルスが大きく関係します。テレワークを余儀なくされた企業は、必然とオフィス外で働ける環境を整えたり、オフィス内では距離をとって適切に業務を進めたりするための工夫が求められました。

特定の働き方にとらわれず、各々の生活や仕事に合わせて環境を変える働き方改革の観点からも、社内外問わずふさわしい場所を選んでパフォーマンスを向上させるABWという働き方が注目されています。

ABWの特徴

ABWは、働く人の活動に基づいてオフィスが作られます。フリーアドレスでの働く場所はオフィスデスクのみでしたが、広義のABWでは仕事内容に適したワーキングスペースをオフィス内外から自由に選択できるようになります。

オフィス内の環境では、作業ができるデスクワークや集中して仕事ができる個人用ブース、リフレッシュやカジュアルなミーティングができるソファ、少人数でアイデア出しに便利な設備が揃う部屋、音漏れしない電話用ボックスなど、様々な業務に合わせた最適な環境を導入する企業が多いです。

また、オフィス外の環境では、社員の業務内容や働き方に合わせて自由に働く環境を選択することができます。たとえば外回りをする営業マンの場合は、訪問と訪問の間に会社で契約しているサテライトオフィスやカフェで作業をすることが可能です。

さらに、子育てや介護中の社員は自宅をメインに会議の時だけコワーキングスペースを利用するなど、フリーアドレスよりもさらにフレキシブルな働き方の実現が可能になります。

ABWとフリーアドレスの違いとは?

ABWと似た用語としてフリーアドレスが挙げられますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴から見ていきましょう。

フリーアドレスの特徴

フリーアドレスとは、オフィス内に個人が固定のデスクを持たずに、状況や作業内容に応じて好きな場所に着席をして仕事をするスタイルです。

とくにICTの進化によって、無線LANの性能向上やモバイルツールの普及、クラウドツールの導入によるペーパーレス化によって物理的な拘束条件がなくなり、フリーアドレスでの働き方を導入する企業が増えました。

ABWとフリーアドレスの2つの比較ポイント

ABWとフリーアドレスの比較ポイントは2つあります。

1.デスクでの作業に限られるかどうか

オフィス内で所定のデスクを設けないフリーアドレスの働き方よりも、幅広い選択肢のなかから作業内容に合わせて柔軟に働く場所を選択できるため、ABWはフリーアドレスの進化系とも呼ばれています。

ただ席を移動するだけではフリーアドレスに留まります。ミーティングブースや個別ブースが用意されていれば、ABWと呼べるでしょう。

2.導入に明確な目的があるかどうか

大規模の企業であればミーティングルームや個別ブースを用意したり、フリーアドレスで作業できるスペースを確保したりしているところもあるでしょう。導入に際して「作業内容に合わせて柔軟に働く場所を選択できるようにする」などの目的があり、意識的にオフィスのレイアウトを変えているのであれば、ABWと呼べます。

ABW導入の4つのメリット

ABWは社員の働き方に合わせて柔軟に職場環境を選択できる便利な働き方です。この章では、ABWを導入する4つのメリットを解説します。

1.生産性が向上する

社員が自発的に作業内容に適した場所で働くことができるため、業務の生産性が向上します。

個人の資料制作などのコミュニケーションを必要としない作業には、作業の集中に適したデスクで業務に取り組む、防音設備とミーティング機材が揃った部屋を選択してオンラインミーティングの質を高めるなど目的に合わせた環境で業務が可能なため、固定デスクで働くよりもスムーズに仕事を進めることができます。

2.社員の満足度が向上する

ABWでは社員が幅広い選択肢の中から最適な仕事環境を選択できるため、業務内容やプライベートと合わせたワークライフバランスの実現が可能になります。そのため場所に縛られる不満や、進めたい仕事を中断せざるを得ないといったストレスが軽減されるため、社員の満足度向上にもつながります。

3.ワークスペースの合理化が期待できる

ABWを目的としたワークスペースの整備によって、オフィスを合理的に活用できるようになります。

たとえば人数に対して広すぎる会議室など非効率的なスペースを別の作業スペースに変更したり、使用していないオフィスフロアを解約したりすることで、家賃の削減や社員が必要とする新たなワークスペースを確保できるなどのメリットにも繋がります。

4.優秀な人材の確保につながる

社員が仕事をしやすい快適な職場環境をつくることは、既存社員の会社満足度にも貢献し、離職率の低下に繋がります。社員の定着率の向上は、人材リソースの確保と高い修練度による生産性も高まるため、職場環境の向上やさらなる離職率の低下も期待できます。

また、社員が柔軟に職場を選択できる環境は、求職者の居住地やプライベートの状況にとらわれなくなるため、より多様な人材の確保ができるようになります。

ABWの3つのデメリット

ABWには場所に縛られることなく働くことができるため、多くのメリットがあります。しかし自由な働き方が実現できる一方で、デメリットもあります。ABWの導入の前にデメリットとなる部分もしっかり確認しましょう。

1.勤怠管理や評価体制の見直しが必要になる

オフィス以外の環境で働く社員が増えると一律の勤怠管理ができなくなるため、クラウドツールを利用するなど、新しい勤怠管理の仕組みを導入する必要があります。

また社員の働きぶりを間近で確認することができなくなるため、正当な評価をするためには、成果を元にした評価制度の構築も新たに必要になります。

ABWの導入の際には、勤怠管理や評価体制を見直し、新しいルールの設定と社内への周知をしなければなりません。

2.コミュニケーションの最適化が必要になる

ABWを導入すると社員が様々な環境で働く時間が増えるため、従来までのオフィスで顔を合わせたコミュニケーションが難しくなります。

そのため、離れた場所にいる社員同士がスムーズにやり取りするためには、自社に合う最適な対応策の検討が不可欠になります。特にこまめなコミュニケーションが可能になるチャットツールや、直接顔を見ながらコミュニケーションができるオンラインミーティングツールを導入して、業務を円滑に進められる環境を作る必要があります。

3.セキュリティ対策への整備が必要になる

社員がオフィス外で業務に取り組む際には、パソコンや業務ツールの紛失、社内情報の漏洩のリスクが高まります。

このようなリスクを防止するためには、ABWの実施の前に社員向けのセキュリティ対策講座の開催と使用するツールにセキュリティ対策の導入が欠かせません。

またインターネット上での重要なやり取りの回数も増えるため、インターネットを介した情報漏洩への対策と社員一人ひとりのリテラシー向上に向けた取り組みも必要です。

ABWの導入ステップ

ABWの概要をお伝えしてきましたが、中小企業が導入するにはどのような手順を踏めばいいのでしょうか。この章では、ABWの導入ステップを解説していきます。

1.ABWを導入する目的を確認する

はじめに、ABWを導入する目的を確認します。先述したように、ABWの定義は企業によってさまざまです。オフィスの改革には時間や金額がかかります。だからこそ、まずは定義から認識を擦り合わせたあと、「なぜ自社にABWが必要なのか?」を話し合い、目的を確認し合うと進行しやすくなるでしょう。

2.現状を分析する

導入目的を確認し、認識をすり合わせたあとは、ABWの導入前には、現在の環境よりも働きやすい職場環境を整えるための現状調査が必須です。

具体的には、社員の1日の行動や、現在のオフィスへの不満、不要なスペースなどの要望についてヒアリングを実施しましょう。また使う頻度が低い会議室や、席やデスクの数が多すぎるスペースがないかの調査も実施します。

これらの職場環境の課題やボトルネックとなっている箇所の洗い出し、本当に必要なスペースだけを確保できるようにすれば、コスト削減や生産性の向上にも繋がります。

3.オフィスのレイアウトを決める

現状を分析して見えてきた課題を解決するためのオフィスのレイアウトを決めていきましょう。たとえば、ミーティングが頻繁に行われる現状があるなかで、ミーティングルームがないことにより他の従業員の業務に支障が出ているのであれば、その課題を解決するためのレイアウトを考えます。

4.セキュリティやネットワーク環境を整える

企業のなかには、WEBミーティングを頻繁に行なったり、外回りが多かったりするところもあります。分析時点でセキュリティやネットワーク環境に不安がある、支障が出ている場合は、この機会に整えることをおすすめします。

ABW導入前に確認したい4つのチェックポイント

先述したように、ABWには社員の満足度向上や仕事の効率性の面でメリットがあります。しかし、ABWは従来の日本企業のオフィスとはまったく異なるスタイルのため、導入の際には注意も必要です。ここからはABWの導入を進める上で、チェックしたいポイントを解説します。

1.上司と部下の信頼関係の構築

ABWは、個人が場所を変えて働くため、デスクが固定の職場より上司と部下が顔を合わせる時間が短くなります。部下の仕事ぶりを近くで見てきた上司にとっては、部下がどこで何をしているのかわからないという状況になり、適切なマネジメントができなくなる可能性があります。

そこでABWを導入する際には、直接顔が見えなくても仕事の進捗状況が確認できる体制の構築と、チャットツールやオンラインミーティングツールを利用したこまめなコミュニケーション体制の確立が重要です。

ABWでは上司が部下を常に監視下に置いて仕事をする働き方ではなく、個人が責任を持って業務に取り組み、上司と部下や同僚やお互いの自律的な働き方を受け入れる信頼関係を構築できるようにしましょう。

2.会社の理念や文化への共感

ABWでは社員が自分の作業や業務に適した環境で仕事をするため、より社員自身が主体的に仕事に取り組む姿勢が必要になります。そのため、指示待ちの受動的な姿勢では、裁量度が高いABWで時間を有効活用できずに成果を上げることができません。

社員が積極的に仕事に取り組むためには、業務の根底にある会社の理念や文化への共感が必要です。社員自身がこの会社で働いて成果をあげたいと感じられる風土作りや、理念の共有を経営陣が主体となって取り組むようにしましょう。

3.IT環境整備

ABWで社員が自由な環境で働いて成果を出すためには、ペーパーレスに対応するクラウドツールや管理システムの整備が必要です。

とくにオフィス外で働く社員には、モバイル端末の配布を行い、移動しながらの仕事にも適した環境整備や社外で仕事をする際のリスクに備えたセキュリティ対策や、セキュリティに関するルールの周知も必須です。

4.成果主義的な評価基準

社員がそれぞれ異なった環境で業務を進めるため、仕事の成果を評価する仕組みづくりもABWの導入前に進めておくようにしましょう。

従来までの同一の職場環境とは異なり、ABWでは業務のプロセスが見えにくくなるため、働いた時間の長さや、目に見える仕事ぶりだけでなく、社員が自律的に働いてあげた成果を可視化し評価する制度を整えましょう。

また、評価するポイントも事前に周知することで、評価軸に公平感が生まれ、より能動的に社員の稼働に期待ができるようになります。

まとめ

ABWは、外出が多い職種や、打ち合わせやアイデア出しの作業が多い職種に向いているため、営業職やマ-ケティング職などに従事する人にとってはメリットが大きいでしょう。反対に、管理部門など同じ場所に在席している必要がある職種や、特殊な資料や設備が必要な研究職などはABWの効果を感じにくい仕事です。社員の働き方の実態をよく知った上で、快適な職場環境作りを進めることがポイントです。

またABW導入が働き方の実態の把握や、社員に裁量を与える仕組みを作るきっかけになることもあります。成果によって評価される仕組みが整えば、社員の仕事に取り組む姿勢も変化していくでしょう。社員の定着率やモチベーション維持に悩む企業も、ABWの考え方をオフィス作りに取り入れてみてはいかがでしょうか?

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記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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