介護業界の2025年・2040年問題を乗り越える具体策を解説 5事例の紹介

From: 働き方改革ラボ

2022年06月29日 07:00

この記事に書いてあること

日本社会の超高齢化によって生じる、2025年問題と2040年問題。人材の大幅な不足が見込まれる介護業界の課題解決には、どのような取り組みが有効なのでしょうか。そこでこのコラムでは、介護業に携わる人のために、2025年問題、2040年問題の概要を改めて解説。その上で、ICT活用による業務効率化など、具体的な対処法を企業事例を交えてお伝えします。

日本社会が抱える「2025年問題」とは?

2025年は、1947~1949年の第一次ベビーブームに生まれた「団塊の世代」が全員、75歳以上になる年です。「2025年問題」とは、約800万人の人口を有するこの世代が後期高齢者になることで、日本社会にさまざまな影響が生じることを指します。

2025年には後期高齢者の人口が約2180万人に達し、日本は超高齢化社会を迎えると言われています。高齢者の増加と労働者人口の減少によって、さまざまな業界での人材不足や、医療分野の環境整備の問題、医療費の増加、そして現役世代が負担する社会保険費の増加といった課題が生まれると指摘されています。

2025年問題が介護業界に与える影響

2025年問題の影響を大きく受ける業界のひとつが、介護業界です。高齢を迎え介護サービスを利用する人が増えるため、介護施設や介護人材が大幅に不足すると見込まれています。

厚生労働省の集計結果()によると、後期高齢者の増加によって、2025年度には約243万人の介護職員が必要になると推測されています。2019年時点で介護に従事している人の数は211万人。そのため、2025年に向けて、約32万人の介護人材が新たに必要になると試算されています。

人材不足がさらに深刻化する「2040年問題」

2025年問題に加えて現在、注目されているのが「2040年問題」です。2040年問題とは、第二次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア世代」が65~70歳を迎え、2025年よりもさらに高齢化が進むことで起こる問題のことです。2040年には、高齢者1人を1.5人の現役世代が支えなければならないと指摘されているほか、介護業界では、より多くの高齢者を受け入れるための環境整備が課題になっています。

厚生労働省の試算によると、2040年に必要な介護人材は280万人。現状の職員数よりも、約69万人増やす必要があると指摘されています。

介護業界の人材不足を解消する具体策は?

介護業界の人材不足を解消し、2025年、2040年に備えるために、今、介護業界にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。人材不足解消の具体策を、企業事例も含めてご紹介します。

政府も進める介護人材の待遇改善

介護サービスの利用者が増え続ける中、政府も、介護人材確保のための取り組みを進めています。そのひとつが、介護職の給与をアップする「介護職員等特定処遇改善加算」です。介護職員等特定処遇改善加算とは、介護人材確保のため、介護職の処遇改善を進める制度です。

この制度では、勤続10年以上の介護福祉士の処遇に関して、月8万円もしくは年収440万円までの賃金アップを行うというルールが設けられるなど、経験や技能のある職員に重点が置かれています。ただ、事業所の運用によって経験や技能を持つ職員以外の介護職員も加算の対象になるなど、介護人材全体の待遇改善が可能です。介護施設を運営する事業所には、この制度を活用して職員の給与を改善することが求められています。

ICTの活用による業務効率化

人材を増やすだけでなく、介護職員ひとりあたりの負担を減らす取り組みも必要です。ICTや介護ロボット、センサー、介助をサポートするパワードスーツなど、テクノロジーの活用で、介護現場の業務効率化が実現できます。腰痛などの職員の身体的な負担や、夜間の見回り業務に伴う心理的負担も軽減でき、労働環境を改善できます。

特別養護老人ホームでの情報共有事例

徳島県阿南市の社会福祉法人・阿南福祉会が運営する特別養護老人ホームでは、20年前から介護記録システムを導入。システムと連携して使えるタブレット端末の導入も段階的に進めています。また、運営している3施設を隣接させたことに伴い、LAN接続でシステムを一元化し、必要な情報を共有。リアルタイムで3つの施設の収支状況を把握できるようになり、業務効率化が実現しました。

3施設をLAN接続で統一 ICTによる効率化で幼老複合の社会福祉モデルを推進する 阿南福祉会(徳島県)│中小企業応援サイト

子育て世代が働きやすい制度の導入・活用促進

女性が多い介護業界にとって、出産後の女性や、子育て世代が働きやすい環境を整えることも、人材確保のため有効です。出産後の時短勤務制度や、夜勤や早出出勤などの変則勤務の免除などの制度を充実させ、子育て中でも働きやすい環境を作ることで、女性や子育て世代の離職を防ぎましょう。

そのほか、事業所内保育所の設置や、子育て中に雇用形態が変わり収入が減った金額を補助する制度など、子育てを支援する新しい仕組み作ることで、子育て世代の活躍がさらに進みます。仕組みは導入するだけでなく、活用しやすい職場つくりも大切です。女性にとって働きやすい職場になることで、採用活動も強化できます。

若手社員主導の魅力発信で新卒人材を確保

新卒をはじめとした若年層の人材確保には、若手職員主導による職場の魅力発信が有効です。就職活動をする学生と年齢が近い若手のアイデアを活かした情報発信や採用活動をすることで、若い世代にとっても働きやすい職場であることがアピールできます。

具体的には、SNSを使った若手職員による情報発信や、活躍する若手のインタビューなどのコンテンツを充実させた新卒向け採用ページ、パンフレット作成などの取り組みなどが有効です。学生や若手求職者の興味を引くことができ、採用活動の成功につながります。

業務の明確化と役割分担による生産性向上

役割分担やシフトの適切な設定も、介護現場の生産性を向上させます。作業の分析を行い、作業の集約、分散、削るという観点で見直し、職員に適切に業務を割り振ります。業務のムダ削減による労働時間の短縮にもつながり、介護職員が専門性を発揮できる働きやすい職場を実現できます。

ケアマネジャーの業務負担を軽減した改革事例

茨城県坂東市の特別養護老人ホーム・恵愛荘では、ケアマネージャーの業務負担軽減のため、施設のパソコンを遠隔で操作できるシステムを導入。移動中や、車の中などのあいた時間に情報入力などの作業ができるようになり、残業時間が大幅に削減されました。

リモートワークがケアマネージャーを残業から解放  帰宅時間が3時間も早く│中小企業応援サイト

オンライン研修によるスキルアップ

介護施設を適切に運営するためには、職員のスキルアップが欠かせません。介護技能や、マネジメント能力を高めるための研修を積極的に行うことが重要です。コロナ禍で集合研修が難しい状況では、ウェブ会議システムや動画配信を活用したオンライン研修を行い、職員のスキルアップを実現しましょう。

職員のスキルアップを進めたオンライン研修の事例

群馬県高崎市の特別養護老人ホーム「吉井セピア」「セピアの郷」では、対面で行われていた介護職員のスキルアップ研修や、施設管理者向けのマネジメント研修がコロナ禍にストップしたことをきっかけに、職員がオンライン研修に参加できる環境を整備しました。質疑応答など、講師との双方向のコミュニケーションが可能なオンライン研修で、職員が資格取得や管理者への昇格に向けた学習を行っています。

コロナ禍で途絶えた介護研修 オンライン環境整え再開 三喜会(群馬県)│中小企業応援サイト

情報の適切な管理

記録業務の効率化や情報共有など、適切な情報管理も生産性を向上させます。介護記録の電子化によって、記録業務の負担軽減や、利用者情報のスムーズな共有が実現。情報の一元管理で、ムダな転機業務や情報検索の手間も減らせます。また、管理者のタイムリーで的確な指示が可能になり、業務が効率化します。

情報共有によって予想外の効果をもたらした事例

福岡県豊前市で2カ所の施設を運営する社会福祉法人みちくさでは、2020年から本格的にICTを活用。介護記録記入のための残業発生や、連絡ノートによる情報共有の非効率などの課題解決のため、介護支援ソフトを導入しました。記録や連携作業が効率化され残業がなくなり、ペーパーレス化も実現。負担軽減によって、サービスの質向上や利用者のストレス減などの予想以上の効果がもたらされました。

情報共有のデジタル化で、職員・利用者・家族の満足度が大きく高まった 社会福祉法人みちくさ(福岡県)│中小企業応援サイト

外国人材の活用

外国人材の積極的な活用も、介護業界の人材不足への対処法のひとつです。入国管理法の改正で新たな在留資格が設定され、介護業界にとってもさらに外国人材を活用しやすい環境が整備されています。利用者との意思疎通を支援する翻訳機の導入や、外国人介護職員が自立的に学べるeラーニングの導入など、日本語を学びながら働く介護職員をサポートするための取り組みも進めましょう。

外国人材が働きやすい環境つくりの事例

千葉県の住宅型有料老人ホーム「時の村 本館」は、外国人材を積極的に採用。職員100人のうち30人は外国人で、9カ国から介護職員を受け入れています。人材確保のため、フィリピンやミャンマーなどで日本語学校を設立。介護施設での就労を希望する生徒の授業料を免除して日本語や介護技能を教育し、卒業後に職員として採用しています。また、話した言葉を音声認識で文字化できる介護記録システムのトライアルを進めるなど、書くことに慣れない外国人材にも働きやすい職場を目指しています。

有料老人ホームの新たなビジネスモデルにICT ニチモ(千葉県)│中小企業応援サイト

魅力ある職場作りで介護業界の未来に備えよう!

介護業界の人材不足に対処法は、「業務効率化」と「人材確保」に大きく分けられます。今いる介護職員にとって働きやすい環境を実現すると同時に、魅力ある職場としての情報発信や多様な人材の活用など、人材確保のための取り組みを進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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