【図解あり】1on1は必要? 目的や効果をわかりやすく解説【使えるアジェンダ付き】

From: 働き方改革ラボ

2023年12月13日 10:10

この記事に書いてあること

上司と部下の距離を縮めるだけでなく、部下の主体性を育む効果がある「1on1」。アメリカや日本の大手企業ですでに導入されつつある1on1には、従来の面談やOJTとは違った特徴やメリットがあることをご存知でしょうか。

この記事では、1on1の概要やメリット、進め方を解説していきます。あわせて1on1を成功させるためのポイントや、進行に活用できるアジェンダについても紹介するので、ぜひご参照ください。

1on1とは? 目的や背景

1on1とは、上司と部下がマンツーマンで話し合う機会のことを指します。従来の面談は半年から1年に1回ぐらいの間隔で行われることが多いですが、1on1は月1回や週1回といった短いサイクルで定期的に行われます。

1on1を実施する2つの目的

企業が1on1を実施する目的として、以下の2つが挙げられます。

1.部下の成長や改善を促す

1on1を行う1つ目の目的が、部下の成長や改善を促すことです。

従来の1対1の面談は、部下の評価や進捗の確認が目的とされており、上司目線で行われるものでした。一方的なコミュニケーションになりがちな従来の面談と異なり、1on1は部下が主役です。

さらに、1on1は対話型のミーティングであることも特徴的で、双方向のコミュニケーションによって互いに信頼関係を築くこと、部下の自主性を育み、成長や改善を促すことを目標としています。

2.部下の現状を把握し、相互理解につなげる

1on1を行う2つ目の目的が、上司が部下の現状を把握し、相互理解につなげることです。

1on1では、上司と部下が二人で30分から1時間ほど話すため、業務中の指導や雑談とは違い、お互いのことをしっかりと知ることができます。

上司にとっては、部下が仕事やプライベートでどのようなことを考え、悩んでいるのかを知ることで部下の現状を把握できる機会になり、部下にとっては上司の受け答えを通じて人柄や考え方、仕事の進め方をより深く知ることができ、相互理解が深まります。

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企業において1on1が必要とされている2つの背景

次に、企業において1on1が必要とされている背景を見ていきましょう。

1.VUCA時代を乗り切るため

企業において1on1が必要とされている背景として、VUCA時代を乗り切ることが挙げられます。

現代社会はVUCA(ブーカ)の時代と言われています。VUCAとは、volatility(変動性、不安定さ) 、uncertainty(不確実)、complexity(複雑さ)、ambiguity(曖昧さ・不明確さ)の頭文字でできた言葉で、「予測不能な状態」のことを表しています。

VUCA時代に突入している現在、これまでの経験や物差しが通用しないケースが多く見受けられます。業務においても正解のない問題に取りかからなければならず、経験豊富な上司であっても解決策に悩むこともあるでしょう。若い世代の部下のほうが知識豊富な分野もあるかもしれません。

こういったVUCA時代を乗り切るためには、1on1でのコミュニケーションを通じて、上司と部下の双方が柔軟性を持った思考を得ることが重要となってきます。上司から部下への一方的なコミュニケーションではなく、対話によるコミュニケーションに重点を置くことで、上司にとっても学びがあり、組織としても有益な時間になるでしょう。

2.人材を確保するため

2つ目の背景として、労働人口が減少し、人手不足が進んでいることが挙げられます。

少子高齢化によって労働人口が減少しており、企業では人手不足が課題となっています。そのなかで少しでも離職を食い止めるために、部下の声を直接聞き、早めに不満を解消できる機会になる1on1が必要とされています。

OJTや人事評価面談と1on1との違い

次に、OJTや従来の面談と、1on1との違いを解説します。

OJTとは「On-the-Job Training」の略で、従業員が職場での実務を通して知識を身につける育成方法のことを指します。OJTが業務を円滑に進めるために、従来の面談が上司による部下の評価のために行われる一方で、1on1の主役は部下で、部下の成長や課題解決のために行われることに留意しましょう。

また、人事評価面談は、おもに業務に絞って会話を続けます。行う目的も、上司による部下への評価が主軸にあるため、主役は上司であり、部下の声を直接聞くOJTとは異なります。

1on1のメリット

続いて、1on1のメリットを4つの項目に分けてお伝えします。

1. 上司と部下の信頼関係が生まれる

1on1を実施する1つ目のメリットとして、上司と部下の信頼関係が生まれることが挙げられます。従来の面談は上司による部下の評価が目的になっているため緊張感が生まれますが、1on1では仕事やプライベートの話題をざっくばらんに話すため、自然と距離が縮まります。

対話を重ね、一緒に課題解決に取り組むことによって信頼関係が構築され、部下のモチベーション向上にも効果があるでしょう。

2. 部下の主体性を高められる

1on1を実施する2つ目のメリットとして、部下の主体性を高められることが挙げられます。部下が主体になる1on1では、部下が自らの感じていることや業務への悩み、プライベートの話など話題を展開し、上司とともに課題解決に取り組むため、主体性が大切になります。

はじめは不慣れな点もあるかもしれませんが、繰り返していくなかで部下の主体性が育まれていくことでしょう。

3. 業務効率化が実現する

1on1を実施する3つ目のメリットとして、業務効率化が実現することが挙げられます。

上司のなかには、1on1をする時間をとることで業務が疎かになるのではないかと感じる人がいるかもしれません。しかし、1on1によって部下の特性をより深く知ることで、チームの状態を分析しやすくなります。結果、適切な業務の割り振りをできるようになるため、業務効率化にもつながります。

また、部下が自ら話題を展開する力も鍛えられるため、能動的に動ける人材の育成にも効果的です。

4. エンゲージメント向上・離職防止につながる

1on1を実施する4つ目のメリットとして、エンゲージメント向上や離職防止につながることが挙げられます。定期的に1on1を行い、考えていることや悩みを共有する機会があることで、上司や組織に対する信頼感やエンゲージメントが高まります。

可視化しづらい部下の不安や不満をいち早く解消できる機会を得ることで、離職防止にもつながるでしょう。

1on1の注意点と解決策

続いて、1on1の注意点と解決策を解説していきます。

1. 上司のコミュニケーションスキルによって成果が変わる

1on1を行う際の1つ目の注意点として、上司のコミュニケーションスキルによって1on1の成果が変わることが挙げられます。

従来の面談とは異なり、1on1は部下が主役です。上司が部下を評価するような素振りを見せたり、威圧したりすると、部下も素直に考えていることや悩みをまっすぐに話せません。

そのため上司には、部下にリラックスしてもらい、本音を引き出すためのコミュニケーションスキルが求められます。「まずは聞くことに徹する」、「他の部門や同僚に相談する」などできることからはじめてコミュニケーションスキルを高めていくことが大切です。

2. 効果を実感できるまで時間がかかる

1on1を行う際の2つ目の注意点として、効果を実感できるまで時間がかかることが挙げられます。

1on1を円滑に進めるためには、信頼関係の構築が欠かせません。しかし、信頼関係はすぐに構築されるものではありません。また、はじめはお互いに緊張してしまい、思ったように進まないことも考えられます。

さらに、1on1はそのときによって話題が変わるため、効果の測定が難しいともいえます。無理に指標を決めてしまうと上司が主体になってしまうため、はじめは指標を決めず、部下との信頼関係構築を第一優先に進めてください。

その上で、上司と部下の相互理解が深まった、本音を引き出せるようになった、など、個人に応じた指標を設け、部下に強制することなく効果を実感するまで時間をかけることが大切です。

1on1の進め方と成功させるためのコツ

続いて、1on1の進め方と、1on1を成功させるためのコツを解説します。

1on1の進め方

まずは、実際に1on1をする際の進め方を、4つのステップに分けてご紹介します。

1.テーマを部下に決めてもらう

はじめに、1on1のテーマを部下に決めてもらいましょう。1on1は部下の主体性を高め、相互理解を深めることが目的となるため、テーマは何でも構いません。ただし、開始前にあらかじめ目的を伝えておきましょう。そうすることで部下も目的を達成するためのテーマを考えやすくなります。もし作成する余裕があれば、アジェンダに沿ったシートを作って事前に記入してもらうのもひとつの手です。

2.上司、部下とともに事前準備を行う

続いて、上司、部下とともに事前準備を行いましょう。1on1は業務の合間に短時間で行うため、部下側はテーマに沿った内容でどのようなことを話すか考えておく必要があります。また、上司側は、どのような姿勢で1on1を行うか、部下の特性に合わせて考えておくといいでしょう。

3.実際に1on1を行なう

事前準備を行なったあとは、実際に1on1を実行します。まずは部下が話したいことを聞き出し、部下自身が「課題解決のためには具体的に何をすればいいのか」を考えられるように導きましょう。上司はフィードバックをしっかりと行うことが大切です。

4.今後の計画を立てる

そして、1on1の終盤では、その日に行われたミーティング自体の振り返りも行い、次回につなげましょう。1on1の間に次回のテーマ設定まで行えるようになると、短い時間を有効に活用することができます。

1on1を成功させるための5つのポイント

1on1の流れを理解したあとは、1on1を成功させるための5つのポイントをおさえていきましょう。

1.1on1のテーマは部下が自分で決める

1つ目のポイントとして、先述した1on1のテーマは部下が自分で決めることが挙げられます。こちらは進め方の章でも触れた通り、重要なポイントになります。

1on1の目的は、部下の成長を促し、自主性を高めることです。上司が先導するのではなく、あくまで部下を主役として進めるために、テーマを部下自身に決めてもらうようにしましょう。

2.上司は聞き役に徹する

2つ目のポイントは、上司が部下の話を聞く耳を持つことです。部下の話を遮って自分の意見を延々と述べたり、自分の考えを押し付けたりせずに、最後まで聞き役に徹するよう心掛けましょう。部下のための時間だということを忘れず、課題に対する答えを部下が自ら考えるように導くことが大切です。

3.学びにつながる建設的な会話を目指す

3つ目のポイントが、学びにつながる建設的な会話を目指すことです。部下が話題を展開するため、どうしても部下のペースに合わせてしまいがちですが、対話を大切にし、少しでも建設的な会話を目指すために誘導することが大切です。ただし、あくまで主役は部下だということは忘れないようにしましょう。

4.1on1は必ず継続する

4つ目のポイントが、1on1を必ず継続することです。1on1は、長時間行うのではなく、短時間であっても定期的に行うことが重要です。用事ができて実施できなくなってしまった場合でも、必ず予定を再調整し、時間がないことを理由に中止しないようにしましょう。部下との信頼関係を崩さないためには、部下のために時間を割くのも上司の務めであるということを示すのも大切です。

5.不安を共有できる場の雰囲気を作る

5つ目のポイントが、不安を共有できる場の雰囲気を作ることです。部下のなかには、現状に不安や不満を抱いている人がいるかもしれません。威圧感を出し、「業務の評価が下がってしまうかもしれない」と感じさせてしまっては、本音を引き出すことができなくなります。そのため、ネガティブなことも受け止めてくれると感じてもらうことが大切です。

1on1で活用できるアジェンダ

では、1on1は具体的にどのような内容で進めていくといいのでしょうか。この章では、1on1で活用できるアジェンダをご紹介します。これらの内容をもとに、あらかじめシートを作成するのもいいでしょう。

  • 1.プライベートの話題について
  • 2.生活の不安や心身の不調について
  • 3.業務に対する課題について
  • 4.目標や重要事項について

以下で説明していきます。

1. プライベートの話題について

まず、アイスブレイクとしても使えるのがプライベートの話題です。なかには仕事とプライベートを切り離して考えたい、プライベートに踏み込まれたくない部下もいるでしょう。そのため、最近ハマっている趣味や流行などから会話を進め、もし部下が話したいことがあるようだったらその部分を引き出すよう意識することをおすすめします。

2. 生活の不安や心身の不調について

アイスブレイクで場があたたまってきたら、もう少し踏み込んだ会話をしていきましょう。とくに生活の不安や心身の不調については、業務にも関わる部分なので聞きたいところです。ただ、センシティブな話題でもあるため、「最近眠れている?」などの切り口から聞くといいでしょう。

従業員のなかには、出産や介護など、家庭内での役割の変化などが起きていることもあります。業務だけでなく生活全般に話を広げることで、そのような変化にも気づくことができます。

3. 業務に対する課題について

生活から細分化し、業務についても話をしましょう。とくに業務に対する課題については、部下がどのようなときにモチベーションを感じるかなども知ることができるので、マネジメントに欠かせない質問です。

もともと向上心が高い部下の場合や、関係性によってはそのまま聞いてもいいかもしれませんが、そうでない場合には「業務のどんなところでやりがいを感じますか」などの質問から聞き出すといいでしょう。そして、挙げられた課題の解決や、部下がさらにやりがいを感じるために何が必要なのか、いま足りていないものはあるかを聞いたり、ともに考えたりします。

4. 目標や重要事項について

アイスブレイクでの雑談から課題感などから現状を把握したうえで、今後、どのような目標を立てたらいいのかを考えることも大切です。部下から質問が出た場合は、上司としての視点だけでなく、部下の年代だったときのキャリア観を思い出しながら回答するといいでしょう。

また、必要な伝達事項があったら伝えましょう。しかし、部下の話をさえぎるのではなく、一通り話を聞いてからにすることを心がけてください。

1on1の活用事例

最後に、1on1の活用事例をご紹介します。

LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社では、2012年に1on1を導入しました。その後、外部の専門家を入れて自社に合ったカリキュラムを作り、社内に文化として浸透させ、現在では約6,000人の社員が1on1を行っています。

LINEヤフー株式会社の1on1は、経験から学びを得て次の仕事に生かす「経験学習サイクル」を実務の中に組み込むことをベースとしているのが特徴です。また、対話を深めて部下の潜在能力を引き出すことも重視しています。

週に1度、30分間実施される1on1の後には、1on1自体の評価も行い、その結果をもとに管理職を対象としたワークショップも開催しているようです。

SBテクノロジー株式会社

SBテクノロジー株式会社では、月に1回、30分の1on1を実施しています。部下がキャリア相談やアイディアの発信、悩み相談などをざっくばらんに話す時間となっており、そこから新たなサービスが生まれることもあるそうです。部下が自分から発信できる機会があることで働きやすい環境づくりにつながり、「風通しの良い社風」を実現しています。

株式会社リコー

株式会社リコーでは、かねてより上司と部下で悩みなどを気軽に話せる場として、1on1を実施してきました。そして、1on1が社員の心理的安全性の向上やモチベーションアップに効果的であることを経験していました。

新型コロナの感染が拡大し始めた2020年2月に「原則在宅勤務」を実施し、リモートワークが増えるなかでも、週1回の1on1を推奨。コミュニケーションが希薄になりやすいリモートワークのデメリットを補うべく、オンライン朝礼・終礼、ランチ会などを通して意識的にコミュニケーションの場を設けるようにしています。

コロナ禍の2020年7月に実施した従業員へのアンケートでは、生産性は変わらない、または向上したとの回答が8割と、ポジティブな結果になりました。

まとめ

部下の自主性を促し、能力を向上させる手段として注目を浴びている1on1。企業の人材育成が重要視されているなかで、1on1は新しい人材育成モデルになっていくことでしょう。今回挙げたポイントを押さえつつ、自社での導入を検討してみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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