ノー残業デーの導入メリットは? 成功事例やポイントを解説

From: 働き方改革ラボ

2023年07月11日 07:00

この記事に書いてあること

毎週水曜日は定時退社? ノー残業デーの現状や目的とは

長時間労働の是正や労働環境の改善を目的に『ノー残業デー』を導入している企業は多く存在します。なかでも週の真ん中である水曜日に設けることで仕事のメリハリをつけようと考えている企業が多く、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現に役立っています。

2018年6月に成立した「働き方関連法案」(施行は大手企業で2019年4月、中小企業では2020年4月)の影響で注目を集めているように思われているノー残業デーですが、実はそれよりも前から注目を集めていました。その根拠として、2011年に厚生労働省が発表した『時間外労働削減 好事例集』が挙げられます。資料によると、時間外労働削減のためにノー残業デーを導入している企業が60.3%だったことがわかりました。

このことから、時間外労働を削減するために有効な取り組みとしてノー残業デーを導入する企業が多く存在していることがわかります。また、働き方改革関連法が施行された2018年よりも前の資料であることから、現在はより導入企業が増えていると考えられます。

また、2016年の10月下旬から11月にかけ、NHKが全国の主要企業100社を対象に実施した聞き取り調査によると、全体の約3分の2にあたる67社がノー残業デーを実施しています。頻度としては、やはり週に1回が42社で最も多く、次いで週に2回が10社、月に1回が5社となっています。

実施においては、定時退社を促す放送を行ったり、ノー残業デーにもかかわらず残業をしている社員がいないか見回りを行ったりと、残業ゼロを徹底するといった工夫も行われていました。

さらに、厚生労働省が2017年に発表した『働き方・休み方改善指標』では、企業向け改善指標の項目のひとつに「ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定」が含まれていました。これは、労働環境の改善にノー残業デーの導入が効果的であることを示している内容だと考えられるでしょう。

ノー残業デーを導入するメリット

そもそも、なぜノー残業デーに注目が集まっているのでしょうか。この章では、ノー残業デーを導入するメリットを解説していきます。

1.従業員のワーク・ライフ・バランスの実現に役立つ

1つ目のメリットが、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現に役立つことです。特定の曜日や週をノー残業デーとすることで終業後の予定を前もって立てやすくなり、有意義な時間を過ごすことができます。その結果、従業員の満足度も上がり、離職率の低下にも効果が期待できるでしょう。

2.業務効率化につながる

2つ目のメリットが、従業員の業務効率化につながることです。ノー残業デーを設定することで、従業員には「水曜日は定時で切り上げよう」という目標が生まれ、集中力が高まります。企業にとっては、ノー残業デーによって残業代が削減でき、残業時間中に発生する光熱費などのコストをおさえられるうえに、生産性向上が見込めるというメリットもあります。

3.企業のイメージ向上に効果がある

3つ目のメリットが、企業のイメージ向上に効果があることです。ノー残業デーを導入することで、企業側が労働環境の改善に懸命に取り組んでいるというアピールになり、世間からのイメージ向上に効果的です。求職者にとっても魅力的な企業にうつり、人材確保にもいい影響があるかもしれません。

ノー残業デーの課題

導入が進んでいるノー残業デーですが、まだまだ課題が残るのが現状です。そこでこの章では、ノー残業デーの課題を3つに分けて解説していきます。

1.他の曜日の仕事が増える可能性がある

1つ目の課題が、他の曜日の仕事が増える可能性があることです。先述したように、週の真ん中の水曜日をノー残業デーに設定する企業が多くありますが、たとえそれが実行できたとしても、仕事量が変わらないままでは他の曜日の業務が長引いてしまい、時間外労働の削減にはつながりません。

ノー残業デーの本来の導入目的は、長時間労働の是正や労働環境の改善です。それにも関わらず、他の曜日で労働時間が増えては意味がありません。ただノー残業デーを設けて終わりにするのではなく、定時で終えられる仕事の割り振り方から考えていきましょう。

2.残業代が発生せず、不満が生まれる

2つ目の課題が、残業代が発生せず、従業員の不満が生まれることです。

従業員のなかには、残業代を加算した金額を給与と想定して働いている人がいるかもしれません。ノー残業デーを設けることでその曜日だけ残業代が発生しなくなってしまうため、給料が減ってしまい、従業員の不満につながる可能性があります。

従業員の不満が生まれないように、時間ではなく、スキルや資格取得など能力面を評価する制度を設けましょう。そうすることで、従業員の協力を得やすく、従業員のスキルアップにもつながります。

3.顧客対応に遅れが出る

3つ目の課題が、顧客対応に遅れが出ることです。クライアント対応が主な仕事の場合、クライアントからの急な依頼とノー残業デーが重なった際に対応に遅れが出てしまう可能性があります。そのため、ノー残業デーの導入が決定した場合は社内だけでなく取引先にも伝えておき、急な対応ができないことに対しても理解を得ることが大切です。

ノー残業デーを継続するためのポイント

ノー残業デーの本来の目的である長時間労働の是正や労働環境の改善を果たすためには、ノー残業デーを短期的なものではなく、長期的なものとして継続しなければなりません。そこでこの章では、ノー残業デーを継続するためのポイントを解説します。

1.社内周知を徹底する

1つ目のポイントが、社内周知を徹底することです。周知の際に、ただ「水曜日は残業をしない日」と宣言するのではなく、目的や達成したいことを共有し、従業員から納得してもらうことで、行動を促しやすくなります。また、従業員同士で声掛けをしあうよう促すことも効果的です。

労働時間が減ることによる不満が従業員から出そうな場合は、先述したように、労働時間ではない評価軸を設けることをおすすめします。

2.制度について取引先に伝える

2つ目のポイントが、制度について取引先に伝えることです。ノー残業デーについて社内で周知できたとしても、クライアントから急な依頼が入ってしまった場合、残業をせざるを得ない状態になってしまう可能性があります。

そのような事態が何度も重なってしまうと、ノー残業デーを設けた意味がなくなってしまいます。そのため、あらかじめ取引先に伝えておき、急な対応ができないことを理解してもらいましょう。伝えることで、働き方改革のアピールにもつながります。

3.半強制的に実施する

3つ目のポイントが、ノー残業デーを半強制的に実施することです。具体的な方法として、オフィスワークの場合にはノー残業デーは退勤時間に電気を消す、営業などの場合は退勤時間に無事に仕事を終えられるようにアポイントを調整するなどが挙げられます。このように半強制的に実施することで帰らざるを得ない状況を作り出すことができ、ノー残業デーの継続につながります。

4.部署ごとに連携をとる

4つ目のポイントが、部署ごとに連携をとることです。オフィスワーク中心の部署ではノー残業デーを実施し、営業など外仕事が多い部署では実施しないとなると、待遇や給与に差が出てしまい、従業員の不満につながります。部署ごとに連携をとり、不満が出ないように考えること、社内で一丸となって実施していくことが大切です。

ノー残業デーの導入ステップ

続いて、これからノー残業デーを導入したいと考えている方に向けて、ノー残業デーの導入ステップを解説します。

1.ノー残業デーを導入する目的を明確にする

まず、ノー残業デーを導入する目的を明確にしましょう。導入目的のおおまかな理由としては長時間労働の是正や労働環境の改善が挙げられますが、企業の課題を洗い出してさらに細分化することが大切です。そうすることで効果を図る指標も明確になります。

2.対象や曜日を決める

次に、対象や曜日を決めましょう。最終的に社内全体で導入するのが理想ですが、営業など外仕事が多い部署の場合はいきなり導入をするのが難しい可能性があります。そのため、テストを兼ねてオフィスワーク中心の部署といった導入をしやすい部署から対応をはじめていきましょう。

曜日に関しては、平日5日間勤務の場合は週の真ん中である水曜日に設定するとメリハリをつけやすくなるのでおすすめです。

3.評価などの規定を定める

対象や曜日を明確にしたあとは、それに応じた評価などの規定も定めておきましょう。労働時間が長ければ長いほど給与が発生する仕組み上、残業をしてでも給与をあげたいと思う従業員がいるのは当然です。労働時間ではなく、資格取得やスキルアップなどに応じて給与を上げることで新たな評価軸ができ、従業員が協力的になると考えられます。

ノー残業デーの導入事例

最後に、ノー残業デーの導入事例を解説していきます。これから導入を考えている方も、ぜひご参照ください。

カルビー株式会社

カルビー株式会社では、個人の成長が会社の成長につながるという考えを持っており「1日を2度楽しんでほしい」という願いを込めて、事業所毎にノー残業デーを設定しています。その結果、月の所定時間外労働は平均10時間(2014年)となり、ワーク・ライフ・バランスの実現に役立っています。

ほかにも、カルビーでは1991年から働き方に関する各種制度を導入しており、フレックスタイム制、半日休暇などさまざまな制度を取り入れ、労働環境の改善を進めています。

伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社では、2014年から夜型ではなく「朝型」の勤務にすることで残業時間を減らし、総労働時間の削減を図っています。具体的には、深夜帯(22時から5時)の禁止、夜間(20時から22時)の勤務は原則禁止とし、やむを得ない場合は事前申請を必要としました。

もし20時以降の勤務が必要となった場合は、翌朝9時の始業より前に出社するよう指示しているほか、早朝勤務の場合は深夜勤務と同様の割増賃金を支給したり、軽食を配布したりと待遇を整えており、従業員が朝型になるよう、積極的に促しています。

まとめ

ノー残業デーに限ったことではなく、どんな施策・制度も、重要なのは運用の仕方であり、ただ形だけ導入したのでは問題解決につながりません。ノー残業デーが形骸化し、何らかの問題を生じているならば、やはりトップダウンでの運用の正常化が必要であり、真にメリットとなる制度として、経営戦略の一部と捉え、積極的に推進されることが鍵となります。

形骸化した制度は誰のためにもなりません。あなたの職場でも、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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