人と人のコミュニケーションが生み出す、コクヨ流の手作りの働き方改革

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時代のビジネスにあったオフィス空間を提案し続ける、コクヨの「ライブオフィス」。ライブオフィスとは、コクヨが提唱するさまざまな形態のオフィスを公開し、実際に社員が働いている現場を見学してもらうというもの。

今回は、オフィスソリューションという切り口で働き方改革を実行し続けているコクヨマーケティング株式会社(以下コクヨマーケティング)にお話を伺いました。

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ショールーム兼オフィスの「ライブオフィス」

ライブオフィスという試みを始めたのは、今から49年前の1969年。開始当初は、値札の付いたコクヨ製品が置かれたショールームの中で、社員が働くというシンプルなものでした。以来、3年から5年のスパンでリニューアルを繰り返し、画期的なオフィスを生み出していきます。

省エネやエコの追求、コミュニケーションを活性化させるための空間など、時代を先取りしたオフィスを次々と実体化していきました。ライブオフィスは、まさにコクヨのカルチャーを体現するものだったのです。

そして1997年以降、「働き方」にフォーカスするようになります。

「Windows95が発売された2年後、まだ世の中にパソコンというものが定着していなかった頃に、私たちは1人1台PC時代を見据えてフリーアドレス制を始めました。外資系企業も含め、固定席があるオフィスが当たり前だった時代に、自席のないオフィスを作ったんです。インターネットは有線で電源が必要だったため、当然非効率に感じる部分はありました。そういったことを自分たちが自ら体験しながら、どんなオフィス家具や文具を作ればお客様が働きやすくなるかを考え、歩んできたんです」

そう語るのは、コクヨマーケティング ビジネスパートナー第2営業部の佐々木伸介氏。

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現在は、フラッグシップとして位置付けられた「霞が関ライブオフィス」「梅田ライブオフィス」「名古屋ライブオフィス」を筆頭に、全国29箇所にライブオフィスが設けられています。中でも本社オフィスを移転し、2018年2月にリニューアルオープンした霞が関ライブオフィスは、働き方改革の実験を行う場として注目を集めています。運営に携わる長沼希英氏は、霞が関ライブオフィスについてこう話します。

「霞が関ライブオフィスは、入社10年目前後の若手社員が主体となって運営を行っています。オフィスを立ち上げるにあたり、上層部と現場の想いを統一し、コミュニケーションにおけるギャップを埋めるオフィスにしようという声が上がりました。そのため、現場の声を吸い上げる役割として若手のメンバーが集められ、現在のような運営体制になったんです。これまで当社では、年に一度全社員を集めて事業計画発表会を行っていましたが、現場の人間はその発表を傍観して聞いているだけでした。自分の役割をいまいちイメージできず、具体的に何をしたら良いのか分からなかったんです。そこで対話型を取り入れ、対話を繰り返すことによって、それぞれの立場の人間が1つ1つの物事を理解した上で部下に伝えることができるようになりました」

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社員1人1人が、自分の役割を意識しながら働くオフィス。それが霞が関ライブオフィスが生まれる背景だったのです。

霞が関ライブオフィスのコンセプトは、"SESSION(セッション)"。価値創造に向けて集結した多様なメンバーが、自律的な働き方を実現しながら協業(セッション)を推進していくオフィスとしてスタートしました。オフィス内は主に4つの空間で構成され、それぞれの空間が次世代のあるべき働き方を具現化したものとなっています。

オフィスの心臓部となるのは、「Session」と呼ばれるコラボレーションゾーン。いつでも議論が交わせるように中心に設けられたスペースで、経営方針や新たな提案、働き方改革の成果といった情報の発信・共有も行っています。執務エリアは「Link」と呼ばれ、企画/営業開発と営業部門が同じエリアで業務を行っているそう。同エリアは、互いの仕事への理解を深め、部門間の連携を促進することを目的に作られました。一方、人事・総務・経理などのコーポレート部門は、フリーアドレスを導入した「Cooperate」エリアで業務を行っています。

「プロジェクトメンバーの中にはデザイナーもいるので、彼らの意見はオフィスの設計にも反映させました。最大のチャレンジは、コーポレート部門にフリーアドレス制を導入したことではないでしょうか。人事・総務・経理の座席設定率は本来100%ですが、相乗効果を見込んでここをあえてフリーアドレスにしました。これまでお客様には営業部門が働くオフィスしかお見せしておらず、コーポレート部門はどうなっているのかとお問い合わせいただくことがありました。そのため、今後は積極的にCooperateエリアをお見せしていく予定です」(佐々木氏)

ボトムアップによる手作りの働き方改革

1969年の誕生以来、進化を続けてきたライブオフィスは、現在のコンセプトに辿り着くまでに1つの節目を迎えたと言います。それは、2014年に運営を開始した東京・品川のライブオフィス、通称"SHIPP(シップ)"でした。

「SHIPPができる前は、複数の部門の社員が異なるフロアで働いていたため、複数の組織をワンフロアに集約し、コミュニケーションを高めることで、働き方を改善していこうというのがSHIPPのそもそもの始まりでした。当時は、固定席で働くことが当たり前だった社員が急に自席を失って抵抗を感じないよう、フリーアドレス対象者の座席設定率を80%で設定するとことから始めました。フリーアドレスの文化が徐々に浸透してきたため、次の段階では、座席設定率を60%前後までスリム化しましたが、それにより会社に帰ってきても仕事をする場所がないという状況に陥った時期もありました。そうやって、試行錯誤を繰り返すことで多くのことが見えてきたのです」(佐々木氏)

ライブオフィスの本来の目的は、失敗を繰り返し、その改善策をお客様にお伝えすること。失敗を繰り返すことこそがライブオフィスの醍醐味で、それがそのまま同社の財産となっているのです。

「座席に関することで言うと、SHIPP時代の取り組みとして面白かったのが、各部長の座席の配置です。SHIPPは若手メンバーが中心となってプロジェクトを立ち上げていましたが、部が縦割りで部長同士が会話をしていないという話が上がったそうです。そこで、すべての部長が1箇所にまとまって座ってみたらどうかという案が持ち上がりました。その案を早速実践すると、目に見えてコミュニケーションが変わってきたんです。私は当時一番キャリアの浅い部長でしたが、業務を行う上で何か問題が生じると、すぐに近くのベテランの部長に相談するようになりました。すると自分が思ってもいないような答えが返ってくるので、すぐに物事が解決し、業務効率どころか部下たちにとってもいい結果になりました」(佐々木氏)

このように、若手中心の取り組みによるボトムアップは功を奏し、現在の霞が関ライブオフィスへと繋がったのです。SHIPP以前の同社は、空間提案やツール提案など、モノ軸で働きやすさを提供していました。しかしSHIPP以降は、制度面の整備などで、マインドの部分を変えることで働きやすくしていくという、一歩進んだ働き方改革を行っています。

売上主義からプロセス重視へ

現在の同社は、まず目標とする業績を掲げ、それを実現するために「こんな働き方をしていこう」というメッセージを経営層が率先して発信しています。

「コクヨマーケティングはコクヨグループの販売会社ですから、今までは財務が一番上で重要項目に売上利益がありました。しかし2年前から目標の考え方が変わり、売上利益はあくまで結果として、それを達成するための活動(プロセス)にフォーカスした目標管理となりました。お客様に時代を先取りした働き方を提案していく中で、社員自らが、いかに自律的に働いているかということが評価指標になったのです。その結果、社内で働く環境を整える意識が高まり、売上主義からの脱却を図ることができました。社員が自ら行動し、そこでの成功体験がないと、働き方は変わりません。働き方改革を行う上で一番大切なことは、働く環境に加えて運用ルールや制度見直すことで、それを社員がどのように感じるのかということではないでしょうか」(佐々木氏)

成功の秘訣は継続的な取り組み

霞が関ライブオフィスでは、オフィスカイゼン委員会、ファイリング推進委員会、コミュニケーション促進委員会、働き方検討委員会の4つの委員会が中心となって運営を行っています。各部門から1人ずつメンバーが集まり、各部署の意見を吸い上げ、月1回のペースで集まり対策を講じていきます。例えば、隣に座る同僚が何の仕事をやっているのか分からないという声に対しては、オフィスの中心に置かれたサイネージに社員1人1人の紹介ページを設け、業務内容を可視化するようにしました。これにより、困ったことが発生した時には、誰が自分の業務を助けてくれるのかが明確になったのです。

「オフィスを運営するにあたって運用のルールを設けていますが、社内から寄せられるさまざまな声を受けて日々更新しています。例えば、会議室が少ないという意見に対しては、1人1人の対話を増やし、ミーティングの時間を少なくしてもらうことを提案しました」(長沼氏)


オフィスカイゼン委員会では、1時間の集まりの中ですべての物事を解決することを決めていると言います。問題点を付箋に書き出し、問題解決のために資金が必要なものとそうでないものに分けて話し合いを進めます。メンバーの中には総務部の社員もいるため、資金的な判断もすぐに下すことができ、解決までにそう時間は要しないといいます。


「霞が関ライブオフィスは、さまざまなグループ会社と、複数の部署の社員が同居しているという点も特徴の1つです。ここに移転するまでは、営業は出先から直帰するというケースが多く見られましたが、移転後は多くの社員が帰社するようになりました。オフィスにはいろいろな部署のメンバーが集っているので、会社に戻ることによってすぐに課題を解決できるようになったからです。スピーディーに課題解決を行えるようになったという意見は、多数挙がってきています」(佐々木氏)

「私たちの取り組みは道半ばで、会社全体が変わってきたというところまでは到達していませんが、変わり始めた兆しは感じています。周囲に関心がなかった頃に比べて挨拶が増えたり、ちょっとしたコミュニケーションを立ち話で行うなど、初歩的なところで少しずつ変化が見られるようになってきました」(長沼氏)

よりよいオフィス、よりよい働き方に向けて

社員の意識変化や効率化は見られるものの、まだまだ課題は山積みで、目指しているところには程遠いと長沼氏は話します。

「例えば、オフィス内には他の人とのセッションを生み出すために設けたエリアがありますが、本来の目的が浸透しておらず、1人で使用してしまったり会議で使いたいという相談がまだまだ寄せられます。型にはめすぎると働きにくいオフィスになってしまうので歩み寄りが必要ですが、今はその落とし所を見つけるのに試行錯誤しています。多様な考え方を持つ社員が500人近く同居しているので、当然メンバー全員の声を聞くことはできませんが、できる限り円滑にコミュニケーションを図れるオフィスを築けたらと思っています」(長沼氏)

働き方改革は、働く環境から。よりよい働き方に向けて、コクヨマーケティングのオフィス空間の提案は今後も続いていきます。

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