働き方改革とは?完全版

From: 働き方改革ラボ

2018年04月19日 07:00

この記事に書いてあること

4月6日に閣議決定された「働き方改革関連法案」のニュースが話題になりましたね。政府を筆頭に、多くの企業が「働き方改革」について議論し、その対策に向けた動きが活発化しています。一方で、「"働き方改革"という言葉を知ってはいるものの、その目的や具体的な内容、効果や影響まではよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。今回は<完全版>と称し、「働き方改革」について徹底的に掘り下げていきましょう。

働き方改革とは

2030年には総人口の3割が65歳以上になる「超高齢化社会」が訪れると予測される日本。 こうした日本社会の抱える「少子高齢化による労働力不足の問題」、さらには「ライフスタイルや働き方の多様化」といった課題を受けて、政府が文字通り"働き方を変える改革"に取り組むのが「働き方改革」です。この取り組みを「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と定めた安倍首相。政府主導で、働く人の視点に立った多様な働き方を可能にし、労働環境の整備や格差の是正を目指します。また、労働制度を抜本的に見直すことで、企業文化や風土における「働く」という概念そのものを変えていくことを目標としています。

取り組みの背景

ではこの取り組みがなぜ今、政府によって推進されているのでしょうか。ここではその背景にある様々な課題について、具体的に見ていきましょう。

生産年齢人口の減少

労働力の主体となる"生産年齢人口(15~64歳)"が年々減少傾向にある日本社会。内閣府の見通しでは、約90年後にはこの人口が現在の半分になると予測されています。 生産年齢人口が減ると労働力は不足していきます。このままでは、日本の経済は衰退してしまいます。政府は働き方改革によってさまざまな働き方を可能にすることで、労働人口を確保し、生産性を維持していこうと考えているのです。

労働生産性の向上

実は日本の名目GDP (就業者1人あたり付加価値額)は、OECD(経済協力開発機構)加盟の35ヶ国中22位。加盟国の平均値を下回るどころか、先進7ヶ国(G7)では最下位に位置しています。 未だに「長い時間働くことで、企業の業績が上がる」と考える文化が根強い日本社会ですが、これからは政府をはじめ、働く人の全員がこの考えを一新し、「いかに効率よく成果を生み出せるか」という視点をもつことが必要です。政府が主導となることで、社会全体で「労働生産性を上げる」という意識の変化を生み出すことが大切なのです。

長時間労働の問題

日本は、勤勉な国民性からか長時間労働や残業が当たり前という風潮があり、それによってもたらされる様々な悪影響が問題視されています。2013年には国連からの是正勧告を受け、また最近も大手企業での長時間労働による過労死のニュースが世間を騒がせました。こうした背景から、長時間労働の是正を求める声は高まっているのです。 また、長時間労働は、女性にとって妊娠・出産などのライフイベントによるキャリアの中断や、育児との両立の不安から出産を踏みとどまる原因にもなりうるため、出生率を下げてしまうという懸念も提起されています。 以上のような背景を踏まえて、政府は「働き方改革実現会議」を設置。様々な側面から「働き方改革」実現のためのプランが検討されているのです。 それでは、この改革では具体的にどのような取り組みが計画されているのでしょうか。

政府が掲げる働き方改革実行計画

正規・非正規雇用の格差是正

現在の日本企業では、同じような仕事内容でも、「正規雇用」か「非正規雇用」によって賃金や処遇などのあらゆる面で格差が発生しています。非正規労働者の賃金は、正規労働者の6割弱とされており、これは欧米諸国の7~8割という数値に比べて低い数値。この格差をなくすために、「同一労働同一賃金」の導入が検討されています。これは、正規雇用労働者か非正規労働者に関わらず同業務に従事する労働者には同じ賃金を与えるという内容です。正規・非正規雇用による待遇差が解消されることで、雇用形態に縛られない多様な働き方が選択できると期待されています。

長時間労働の是正

前述の通り、日本の長時間労働問題は深刻化を極め、働き方改革でも重要な位置付けにあります。政府では「第9回働き方改革実現会議」にて、「労働基準法第36条」に基づく労使協定(通称36協定)に対する働きかけを行いました。これを受け、一部の大手企業では長時間労働の是正に関する取り組みをスタート。さらに政府は時間外労働の上限規制や、労働時間を客観的に把握するための取り組みを始め、違法な長時間労働をより厳しく取り締まる姿勢を見せています。

柔軟な働き方がしやすい環境整備

労働環境や制度が整っていないために、働き手の出産や介護などのライフステージの変化に対応できず、「働きたくてもキャリアを中断しなければいけない」という労働者が多く生じているのも課題となっています。こうした問題に対し、政府は出産・育児や介護を支援する制度や、職場以外での労働を可能とするテレワークの導入などを推進。また、厚生労働省ではモデル就業規則の改正案を提出し、「原則禁止」とされていた副業・兼業を「原則容認」に変更、さらに「推進」する方向へ動いており、どんな事情を抱えた働き手にとっても働きやすい環境づくりに力を入れています。 これらのテーマに加え、高齢者及び外国人労働者の就労促進など、政府は様々な方向から「働き方改革」を進めています。上記に挙げた3点を含む、政府が掲げる実行計画全13項目にも及びます。(詳細は働き方改革実現会議資料PDF

労働者へのメリット

「労働人口を増やす」、「生産性を向上させる」など、ある側面だけを見ると、この政策は労働者にとって直接的なメリットがあるのか疑問に感じる人も多いでしょう。しかし、働き方改革とは、そもそも働き手のための改革です。長時間労働の是正や、テレワークなどの新たなワークスタイルの導入によって、自分のために使える時間が増え、心身ともに充実感が増すといった「ワークライフバランス」の実現にも期待できます。また、出産や介護などのライフイベントに際して柔軟に働き方を選択できる社会になれば、キャリアを中断させられることもなくなるかもしれません。歳を重ねても自分の可能性への挑戦を続けることができたり、兼業や副業などによる人生の選択肢も増えたりするなど、労働者にとってのメリットは多く存在するのです。

まとめ

「働き方改革」は、政府のためではなく、あくまでも働き手のための改革。働く人々やその子どもに至るまで、将来により明るい展望を持てるよう、今こそ労働環境を見直し、変えていくことが必要なのです。この取り組みをきちんと理解し、この改革を改めて "自分事"として捉えていきたいものですね。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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