離職率を7分の1に低減、サイボウズが先進的な働き方改革を実現できた理由

From: 働き方改革ラボ

2018年08月10日 07:00

この記事に書いてあること

「kintone」「サイボウズOffice」「Garoon」など独創的なサービスの提供を通じ、企業のビジネスを支援するサイボウズ株式会社(以下サイボウズ)。今回は、同社が導入した先進的な働き方改革、「新・働き方宣言制度」の概要と効果についてご紹介します。

離職率の上昇に危機感を抱き、さまざまな取り組みを実施

我が国のIT系ベンチャー企業は、多忙のあまり何があっても仕事優先という思考に陥りがちなところがあります。この点について事業支援本部 人事部 副部長の恩田志保氏は、過去のサイボウズも同様だったといいます。 「かつてはサイボウズにも『長時間労働は当然』、『育児や介護のため休暇をとることは難しい』という空気が蔓延していました。その結果、2005年には離職率が28%にまで上昇してしまったのです」(恩田氏) そこで危機感を抱いた同社では、社員が働きやすい環境を実現すべく、さまざまな取り組みを実施することにしました。まず2006年に育児・介護休暇制度が導入され、翌2007年には「ワーク中心」「ライフ中心」の2分類から、いずれかの働き方を選べる選択型人事制度を採用。選択肢の名称にもこだわり、"働き方は各人が選ぶものであってそこに優劣はない"ことを社員に強調、意識改革を徹底しました。 同社はこれらを皮切りに、在宅勤務制度や副業の許可、子連れ出勤制度などのしくみを次々と実現していきました。2012年からは子どもの発熱など突発的な在宅勤務や時差通勤にも対応できる、ウルトラワーク制度も導入されています。さらには、社員同士が集まって仕事の話をする「場」へ飲食費を支援する「仕事bar」制度なども生まれました。 そして2013年には前述の選択型人事制度が、労働時間とオフィスの滞在時間の長短で分けた9種類の働き方の中から、社員が自分のライフワークバランスに合ったものを選ぶ方式に進化。社員の働き方の選択肢はさらに広がったのですが、運用を続けるうちにこの制度にも限界が見えてきたといいます。 「9種類の働き方のうち、オフィスで長時間働く『A1』を選択する社員が7割と最も多かったのですが、そうした人でも家庭の事情などで細かな調整が必要になるケースがしばしばありました。働き方の多様化へ対応するためには、9種類という枠でも足りなかったのです」(恩田氏)

社員の声を聞きながら制度を磨き上げる

そこでサイボウズは2017年1月、選択型人事制度の後継である「新・働き方宣言制度」の策定プロジェクトをスタートさせました。かねてより同社では「働き方の問題は、会社が決めて社員が従うのではなく、社員一人ひとりが考えるべきこと」とし、全社員が議論に参加するよう呼びかけてきました。本プロジェクトでも、人事部が提案した制度の骨子についてグループウェアを通じ全社員から意見を募集。併せて制度に関心のある社員を対象とした「仕事Bar」を実施し、リラックスした雰囲気の中で活発な意見交換を行いました。こうして集まった声をもとに制度をブラッシュアップしていったのです。 「サイボウズの社員には、何か疑問がある場合は質問する責任、質問されたら答える責任があります。この制度に対してもさまざまな質問や意見が出ましたが、社員の多くが『多様性を受け入れ、チームワークあふれる会社をつくる』という当社の方針を理解していることもあって、前向きな議論を重ねることができました」(恩田氏) こうして1年以上の時間をかけた結果、社員一人ひとりの事情に合わせた働き方が可能な「新・働き方宣言制度」が生まれたのです。

自由な働き方では自分がどう働くかが問われる

「新・働き方宣言制度」では、各社員が自分がどう働くかグループウェア上で宣言するという方式を採用しています。これにより、個々の社員の働き方が見える化され、その状況を見ながらお互いに業務の調整を行うことが可能になります。 「ベースとなる勤務時間は9時から18時と、これまでと変わりありません。しかし現在では約半分の社員が時差出勤や短時間、短日数勤務を宣言しています。その理由は自由であり、子育てや介護だけでなく、副業のため週1勤務を宣言している人もいれば、好きな野球チームの試合がある日は早めに帰宅する人もいるなど、さまざまな宣言が行われています」(恩田氏) まさに100人が100通りの働き方を実践している同社ですが、個々の社員に幅広い裁量が与えられたことでマネジメントや社内環境に問題は出なかったのでしょうか。営業本部 パートナー第2営業部部長を務める清田和敏氏もかつてはそうした不安を覚えていたといいます。 「私はマネジメントを行う立場ですので、チームのメンバーが自由に出勤時間を決めるようでは業務に支障が出てしまうのではないかと懸念を抱いていました。しかし実際に制度がスタートしてみると、それもまったくの杞憂に過ぎませんでした。サイボウズはもともとチームワークや助け合いを重視する風土があるため、仕事を進める上での場所や時間は問題とはならず、むしろメンバー一人ひとりが、 お互いの働き方を意識し、考えて行動するようになりました」(清田氏) また、社員全員が意見を出して作り上げたという点も、この制度がうまくいっている理由のひとつでしょう。人は上から押しつけられたルールには反発心を抱くものですが、"新・働き方宣言制度"はいわば社員が自ら決めたルールです。 「会社が社員をルールで縛り付けようとしても、かえってルールの抜け穴を探すようになり逆効果です。ですからサイボウズでは、社員全員が当事者となって、考え、意見し、選択する方法を採用しました。この制度では長時間働くのもプライベートな時間を優先するのも、どちらが上というのはありません。それだけに自分がどう働くかが問われるのです。また、給与については『市場価値』で決定されますので、みな納得して働くことができます」(恩田氏)

働き方改革の実現にはITの活用が欠かせない

とはいえ、個々の社員が異なる働き方を宣言するようになれば、人事部の業務の負担は大きくなります。"新・働き方宣言制度"では1カ月ごとに働き方を変えることが可能ですので、そのたび勤務時間や労働条件が変更される可能性もあります。当然、給与の査定も変わるわけですから、対応には大変な手間が予想されます。サイボウズではこうした課題について、ITをフル活用することで解決しています。 「紙の書類を作成、送付して署名・捺印...といった従来のアナログなやり方では、手間もコストもかかり過ぎてしまい、今回の働き方改革は実現できなかったでしょう。給与決定などの書類はデジタルデータで発行していますし、社労士ともグループウェアで情報共有しています。在宅勤務の社員ともネットワークを介してやりとりすれば、書類の確認をするためわざわざ出社してもらう必要もありません」(恩田氏) 同社ではそのほかの業務でもITを積極的に活用しています。社員一人ひとりにノートPCが提供されており、セキュリティも担保されているため、仕事をするのに場所を選びません。また、グループウェアによって仕事の成果はログとして残り、個々の業績は可視化されています。 「ITにより時間と場所に縛られず、ストレスなく働ける環境が提供された事で、さまざまな働き方を選択するメンバーの存在が当たり前に感じる職場になりました」(清田氏)

働き方の多様化に対応するため、常にしくみを改善してゆく

各種制度、風土づくりとツールの整備により、サイボウズの離職率は約4%と以前の7分の1にまで激減しました。しかし同社ではこれで満足することなく、今後さらに進むであろう働き方の多様化に対応するため、社員一人ひとりの声を吸い上げつつ、常にしくみを改善してゆくとしています。 「その一例が交通費で、個人の事情に合わせて柔軟に時間や場所を変更する働き方を選択できるようになった今、週5日出勤を前提に支給される交通費制度をどうするかというテーマで新たな議論を行っています」(恩田氏) サイボウズの挑戦は今なお続いています。

記事執筆

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