デジタル社会の社内コミュニケーションとは?社員の満足度アップと離職対策のコツ

From: 働き方改革ラボ

2021年08月23日 07:00

この記事に書いてあること

会社という組織で仕事をする上で、コミュニケーションはとても大切なものです。厚生労働省の調査によると、長年退職理由の原因上位3位にコミュニケーション不足が入っています。

それだけ社内コミュニケーションは企業の課題となっているものの、コミュニケーションには様々な種類や方法があるため、企業によってはプライベートと仕事の線引が曖昧なまま社内コミュニケーションを行っているケースもあります。

特にコロナ渦以降は、在宅ワークが定着したことで対面でのやりとりが困難になり、社内コミュニケーションのかたちは大きく変化していきました。

この記事では、コミュニケーションの基本から、最適な社内コミュニケーションとは何なのか、なぜ最適なコミュニケーションが必要なのか、また離職率を低下させるコミュニケーション手段について確認していきます。記事の最後にはデジタル社会のコミュニケーションツールについてもご紹介します。

※2018年1月の公開記事を更新しました

「伝わる」までが仕事です

そもそも、コミュニケーションの基本である「伝える」と「伝わる」の違いは何でしょう?簡潔に言うならば、相手中心の意識があるか、コミュニケーションが双方向か否か、という点です。

「伝える」は、自分の考えや報告を一方的に他者である相手に受け渡す行為であり、あくまでも主は自分、相手の理解や承諾、反応を受け取ることなどは前提とされていません。

それに対し「伝わる」は、自分の発した内容が相手に通じている状態のことです。主体になるのは相手。そこには双方向のコミュニケーションが成立しており、自分の投げかけから相手の行動や理解・感情が喚起される、その反応をまた自分が受け取るというやりとりが発生しています。

とても当たり前のことのようですが、「伝える」と「伝わる」ではコミュニケーションの意味が全く違います。仕事やコミュニケーションは「伝えた」だけでは成り立たず、相手が理解して行動して初めて成立します。多くの場合「伝える」ことに価値はなく、「伝わる」事によって初めてコミュニケーションの価値が生じるのです。

特に管理職やリーダーのように人に指示をしたり、他の人に動いてもらう立場にある場合は、「伝わる」までが仕事となります。

「伝わる」コミュニケーションのために

では、言ったつもり、伝えたつもりではなく、きちんと「伝わる」ようにするにはどうすればよいのでしょうか。

”伝え方”が問題なのではありません。重要なのは、「伝える」と「伝わる」の最大の違いである、相手の存在です。

「伝わる」コミュニケーションには、自分とは違う相手の存在を認めて尊重すること、誰に伝えようとしているのかを意識し、その人がどんな人でどう聞いているのかを考えて工夫することが重要です。まずは3つのシンプルな前提からスタートしましょう。
・相手は、私がやりたいことを知らない
・相手は、私が知っていることを知らない
・私の当たり前は、相手の当たり前ではない

日常のコミュニケーションの中では、ついつい自分にとって当たり前のことを省略してしまいがちです。相手に自分の考えをわかっていて欲しいという期待もあります。しかし残念ながら、話が伝わらない大きな原因は、こうした自分にとっての当たり前や期待にあるのです。「伝わる」コミュニケーションのためには、相手が理解できるようにやりたいことや前提情報を伝える必要があります。

コミュニケーションの基本である以上のことを踏まえ、「社内コミュニケーション」について考えていきましょう。

「社内コミュニケーション」とは?

「社内コミュニケーション」とは「社員同士がお互いに持っているスキルやノウハウを共有し、関係性を深めていくことで、企業の利益に貢献する取り組み」を指します。つまり社内コミュニケーションの活性化は、企業がビジネスで成功するうえで最も重要な取り組みの1つと言えるのです。

では、実際に日本の企業の社内コミュニケーションの実態はどのようになっているのか、見ていきましょう。

約8割の企業が「社内コミュニケーション」に課題を感じている?

2020年に行われたHR総研の「社内コミュニケーションに関する調査結果報告」によると、「自社の社内コミュニケーションに課題が有るか」というアンケートに対して、「大いにそう思う・ややそう思う」と回答した企業は全体の76%に達しました。

さらに事業規模別に「自社の社内コミュニケーションに課題があるか」とアンケートを取ったところ、結果は事業規模に関わらず75%以上の企業で社内コミュニケーション不足が業務の障害となると回答しました。

現在の日本企業は、社内コミュニケーションが重要であることは認識しつつ、多くの企業で社内コミュニケーション不足に課題を感じているというのが実態のようです。

社内コミュニケーションに課題を感じる要因とは?

多くの企業で重要と感じつつも、70%以上の企業で課題を感じている社内コミュニケーション。では、社内コミュニケーションのどのような部分が課題となっているのか、見ていきましょう。

働き方の変化

社内コミュニケーション不足に陥る大きな要因は、働き方の変化です。特に新型コロナウィルスの流行によって、働き方改革は一気に企業に広まっていきました。その一環として取り入れられたリモートワークにより、対面でのコミュニケーションは困難になりました。

リモートワークの導入と共に定着しつつあるものが「フレックスタイム制」。『従来までの上司が帰るまで社内で残る』や、『残業が当たり前』の就業スタイルから脱却し、自分の業務内容に合わせて柔軟な就業時間をある程度決められるようになり、ワークライフバランスは保ちやすくなりました。その一方で、同じ空間での社員同士が顔を合わせて仕事をする機会が格段に減少しました。

社員のモチベーションの変化

働き方の変化と同じように、社員の仕事に対するモチベーションも大きく変化してきました。

従来までの働き方では、学校を卒業したら定年まで1つの会社で働き続けるスタイルが一般的でした。しかし現在では、社員の転職は特別なことではなくなり、より良い環境の職場へ、より良い待遇の会社へとポジティブな理由で会社を去る社員も珍しくありません。

従来までの長年勤めることで少しずつ築き上げてきたコミュニケーションのスタイルから、短い期間でメンバーが変わっていくコミュニケーションのスタイルになったことも、社内コミュニケーションによって理解しあえる難易度があがった要因にもなります。

「社内コミュニケーション」の不足で生じる問題は?

働き方の変化や社員のモチベーションの変化によって、社内コミュニケーションが難しくなってきたことをまとめてきました。では、実際に社内コミュニケーションの不足によって、どのような業務に支障が発生するものなのでしょうか?中でも企業が特に重大だと感じている業務への障害を3つご紹介します。

社員のモチベーションの低下と離職率の増大

社内コミュニケーションが不足することによって、自分の担当業務で関わるメンバー以外とのコミュニケーションが希薄になります。そのため、他部署や自分の担当業務以外のメンバーとの交流の機会が減少し、別視点の考え方や新規業務に挑もうと思った時に、気軽に話を聞ける社員がいなくなってしまいます。

このような状況では、社内でのスキルアップの機会がなくなり、社員のモチベーションも低下。業務の生産性が低下することはもちろんですが、社員が会社を辞めてしまうケースも頻出し、離職率の増大も起こりかねません。

不正行為、コンプライアンス違反の発生

社内コミュニケーションが不足することによって、社員同士がお互いに何をやってるのかを把握することが困難になります。万が一コンプライアンス違反や情報隠蔽が起こりそうになっても、社内で気づくことができません。

このような状況下では、「誰も気づくことはないだろう」という認識が社内に広まっていき、最初は些細なミスの隠蔽に過ぎなかったものが、徐々に不正行為やコンプライアンス違反にまで発展していくケースが多数あります。特に発見までに時間がかかった着服や横領などの事件は、問題に気づく社員がいなかったことで長期間に渡って不正行為が続けられてしまった事案です。

顧客との信頼関係の悪化

社内のコミュニケーションが取れていないと、担当業務で関わらないメンバーとは関係性が薄まるため、どうしても自分が所属している部門の利害を優先して業務を優先してしまう傾向が出てきます。

そのため部門を横断したヨコの業務の際には、お互いに部署の利害関係をベースに業務を進行させてしまい、結果として会社全体のサービスの質低下の悪循環に陥るケースが多くあります。

「社内コミュニケーション不足」で生じる問題まとめ

社内コミュニケーション不足で生じる問題は、大きく下記の3つに分類できます。
・社員のモチベーションの低下と離職率の増加
・不正行為、コンプライアンス違反の発生
・顧客との信頼関係の悪化

これらの問題を解決するためには、社内コミュニケーションを活性化し、社員の満足度を高めることが重要です。

ハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授は「サービスプロフィットチェーン」という「従業員満足度=顧客満足度=企業利益」の関係性を示したフレームワークを発表しました。これは従業員満足度が高ければ、仕事に前向きになり、生産性が向上。自然とサービスの質も上がることで、従業員満足度も高まり、企業の利益も高まっていく、という構造です。従業員満足度と顧客満足度と企業利益は切っても切り離せない関係性なのです。

社内コミュニケーションとは、この従業員満足度を高めるための重要な手段の1つです。

社員満足度が高まるコミュニケーションで離職率は改善できる!

冒頭でも触れましたが、社内コミュニケーションの不足は、企業活動に大きな悪影響を及ぼしかねない重大な課題です。特に社員のモチベーションの低下や離職率の増加は、社内コミュニケーション不足の影響を反映しやすい現象です。

そこで社内コミュニケーションの活性化による社員満足度の向上と離職率の改善への対策について解説していきます。

離職原因TOP3に「社内コミュニケーション」不足がランクイン

社員の離職には様々な理由が挙げられますが、実は離職理由の上位3つは長年同じものがランクインしています。

厚生労働省が発表した「平成30年雇用動向調査結果の概況」によると、前職を辞めた理由として最も大きかった3つは
・「労働時間・休日等の条件が悪かった」
・「給料が少なかった」
・「職場の人間関係が望ましくなかった」

でした。

この調査結果からわかることは、離職理由の上位を占めるものは「労働環境」と「職場環境」に分類して改善できるという点です。

まず「労働環境」の改善は、業務を効率化することで改善が見込めるでしょう。また「職場環境」の改善は、社内コミュニケーションの活性化によって、改善が見込めます。さらに社内コミュニケーションの活性化によって「職場環境」が改善されると、社員のモチベーションが高まります。

また前向きな社員が増えることによって、社内のコミュニケーションも活発になることで業務が効率化し、「労働環境」も高まる結果に至るのです。

このように「労働環境」と「職場環境」は深く関係しており、その鍵を握っているのが社内コミュニケーションなのです。

「名前と顔の認識」が離職率低下の鍵!社員の満足度は覚えてもらうことから

では、どのようにして社員の満足度を高めて離職率を下げていけばいいのでしょうか?

2017年にカオナビHRテクノロジー総研が「離職率と名前と顔の認識」の相関関係に関する興味深いデータを発表しているのでご紹介いたします。

内容は一般企業で働く男女1000人に対して「社内の人から顔と名前が覚えらえていることによって、離職意向にどのような影響があるか」を調査したもの。すると「顔と名前がよく覚えられている」と回答した人は、「よく覚えられていない」と回答した人よりも離職意向が30.2%も低いことがわかったのです。

この結果から、社員の離職を防ぐ解決策の一つとして、
・社員の名前を呼んで挨拶をする
・積極的に社員に声をかける

といった、職場の中で社員が自分の顔と名前を覚えてもらっていると認識させることが離職率低下の鍵と言えそうです。

では、「名前と顔の認識」がどのようにして社員の離職率低下に繋がるのでしょうか。主な要因を2つご紹介します。

「名前と顔が覚えられている人」は仕事へのモチベーションが高い

同じくカオナビHRテクノロジー総研が実施した調査によると、「顔と名前を覚えられている」と回答した人は、「覚えられていない」と回答した人よりも36.7%仕事へのモチベーションが高かったことがわかりました。

さらに「顔と名前が覚えられている」と感じる度合いが高くなることに比例して、仕事へのモチベーションの高さの度合いも増加傾向にあることがわかりました。

この調査結果からわかることは、「顔と名前を覚えられる」ことで、承認欲求が満たされ、自分の自信に繋がるため、仕事へのモチベーションがあがるのではないかと考えられています。

「名前と顔が覚えられている人」は会社への満足度が高い

同じくカオナビHRテクノロジー総研が「社内の人から顔と名前が覚えられていることによって、会社への満足度がどのように影響があるのか」を調査した結果、「顔と名前が覚えられている」人は、「覚えられていない」人よりも会社への満足度が24.1%高いことが分かりました。

また仕事へのモチベーションと同様に、「顔と名前を覚えられている」と感じるほど、社員の満足度が増加傾向にあります。

ここまでの調査結果から、社内の人から「名前と顔を覚えられている」と感じることで、仕事へのモチベーションが向上するだけでなく、会社への満足度も向上し、その結果として社員の離職傾向も改善する見込みであることがわかります。

社内コミュニケーションの活性化によって、社員が自分の名前と顔を覚えてもらっているという安心を感じられる職場環境。これが離職率を改善し、仕事の生産効率を向上させる鍵なのです。

デジタル社会の「伝わる」コミュニケーション術とは?

社内コミュニケーションの活性化が仕事の生産性を向上させ、離職率の改善に繋がるということをご紹介しました。

しかし新型コロナウィルスの流行による働き方改革によって、職場での対面コミュニケーションは困難になりました。そこでここからはデジタルツールを使用しながら社内コミュニケーションを円滑に行うためのツールをご紹介していきます。

デジタル社会のコミュニケーションツールとは?

それでは実際にデジタル社会でのコミュニケーションツールについて解説していきます。

まず多くの企業ではどのようなコミュニケーションツールを用いているのかを見ていきましょう。2021年にHR総研が実施した「コロナ渦における社内コミュニケーションの手段」の調査によると、最も多く利用していると回答したツールは「メール」でした。

次に多いのはオンライン会議ツールです。新型コロナウィルスの流行によって、リモートでも相手の顔を見ながらのコミュニケーション手段の需要が急激に増大していきました。

その他、コロナ渦でも対面のコミュニケーション手段を取る企業も多く、特に中小企業など事業規模が小さくになるについて、その傾向が強くなることがわかります。

また国全体のテレワークの推進を背景に、チャットツールなどのメールよりも手軽にスピーディにやり取りができるツールの利用率も伸びて行っています。

企業ごとの諸事情や事業形態によってデジタルツールの導入に差があるものの、取引企業がツールを導入したことによって、急いでコミュニケーションのデジタル化を進めるといった企業も出てきているようです。

では実際にどのようなツールを用いて、社内コミュニケーションを円滑に行っているのでしょうか?社内環境を変えるに有効なデジタルのコミュニケーション手段をご紹介します。

デジタルツールを使ったコミュニケーション術

チャットツール

チャットツールは、インターネット上で利用できる会話ツールです。グループチャット機能を使い、プロジェクトごとにグループを作成することで、円滑にプロジェクトを進めていくことができます。

チャットは記録に残るため、たとえ誰かが席を外していた時間があっても後でその内容をチェックでき効率的です。また、独特な絵文字を用意しているようなチャットツールもあり、単調になりがちな社内でのコミュニケーションを楽しいものに変えてくれます。

テレビ会議ツール

テレビ会議ツールとは、主にクラウドの技術を用いて、スマホやPCで映像や音声を双方向・リアルタイムに通信するサービスのこと。従来のテレビ会議やテレビ電話とは異なり、データの共有やPC画面の共有など、会議を円滑に進めるための機能が搭載されている点も大きな特徴です。

テレワーク環境でもテキストベースではなく、対面での会議に近いコミュニケーションをはかりたいという時には非常に有効なツールです。

オンラインストレージ

オンラインストレージとは、オンライン上でファイルの保存や共有などができるサービスのことです。すべてのデータをオンライン上で共有するので、PCはもちろんタブレットやスマホなどのデバイスに関係なく、すぐに資料にアクセスすることができます。またテレワークなど社員が遠隔地にいる場合でも、同時に資料を編集することができたり、ユーザーごとに権限の設定ができるので、閲覧機能のみの設定でクライアントに資料を送ることもできるため、テレワーク環境での働き方改革推進に便利なツールといえます。

タスク管理ツール

オンラインストレージと並んで、テレワーク環境での業務効率を改善するツールとして、オンライン上でのタスク管理ツールも便利です。

タスク管理ツールでは、タスク管理はもちろん、社会wiki、ガントチャートなどのプロジェクト管理に関する機能が充実しています。

出社したり、ミーティングをしなくともリアルタイムでメンバーの進捗状況を確認できるため、進捗管理に手間を取られることなくテレワーク環境での業務効率化をはかることができます。

まとめ

ご紹介してきたいくつかの事例のように、社内のコミュニケーションの改善という点で、できることはたくさんあります。コミュニケーションの活性化のためのルールをしっかり設定し、ツールなども駆使して、良いコミュニケーションが取れる会社にしていきたいですね。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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