海外メディアに日本の働き方改革はどのように映っているのか
2018年04月24日 07:00
この記事に書いてあること
日本ではメディアでの取り上げが盛んな、働き方改革。海外からはどのような取り組みに映るのでしょうか。今回は、イギリスの報道メディア"BBC"の「日本の働き方改革」に対する見方や意見をご紹介します。
※当記事はBBCの記事を翻訳・補足したものです。
日本の働き方改革の背景
安倍首相により提唱されてきたこの働き方改革は、「残業削減」「ワークライフバランスの向上」「女性や高齢の労働者の効率的なスキル活用」を主な目的として進められ、2016年8月に国家スローガンとして掲げられた。
日本の職場の「長時間労働」や「社内の厳格な階級社会」は1960年代?1980年代の日本の高度成長期に多いに日本の成長に貢献した。
ところが成長率の勢いは徐々に勢いを失い、日本の生産性の総計数値はG7の中で最も低い位置づけとなり、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均値よりも下回る結果となった。
そのような背景で、日本の高齢化が進み労働生産人口が縮小すると、日本の経済成長に向けた唯一の希望は生産性向上のみとなったのだ。
スローガンで取り組む、日本式の問題解決方法
日本ではスローガンを掲げて問題解決を行うために人を集めることが、企業規模でも国家規模でも長年にわたり行われてきている。2005年には、日本政府は"クールビズ"のスローガンの元、夏の間は企業にエアコンの使用量の減少を推奨し、社員によりカジュアルな服装で勤務するよう呼びかけていた。これを契機として多くの人々に浸透したため、結果的にこの運動は成功したと言えるのでは無いだろうか。
一方で、毎月末の金曜日に社員を早く帰宅することを目的として"プレミアムフライデー"は失敗した施策だ。施策を実施した直後の統計では、実際に早く帰宅出来た社員は全体のたった3.7%のみであったことが明らかとなり、この結果が公になると勢いは収束していった。
働き方改革の課題と今後
では働き方改革はどのように効果的であるべきなのだろうか。
ある調査では、大企業はより改革のための取り組みを行っているが、中小規模の企業では人員増強が困難であったり企業イメージのPRの効果が薄いのではないかという意見から、比較的働き方改革への取り組みには消極的になっているようだ。
また日本では、長時間労働し会社に貢献した人が社内でも評価されるような文化が根付いており、このような長年染み付いている文化や価値観を直ぐに変えることが困難であることも、働き方改革に挙げられる一つの難しさだ。
企業は、生産性を上げたり、どこからでも社員が業務を出来るようにするようなテクノロジーへの投資には消極的だ。まず雇用に関する法的な制度や取り決めを大きく変えない限り、企業のこのような姿勢が変わることは難しいのではないだろうか。
社員の無給残業などの課題を改善するには、政府は現在のような厳しくない推進で無く労働規制への取り組みも強化する必要があり、その問題は遅かれ早かれ明確になるように思われる。
実際のところ、多くの日本人社員は働き方改革に対して懐疑的だ。働き方改革でなく、結局より業務をさせる「働かせ方改革」ではないかという意見もある。
最近実施された5,000以上の社員を対象として調査では、85.8%の人は「働き方改革という言葉メディアや他の企業では耳にするが、自身が勤める企業ではほとんんど何も実施されていない」と回答している。更に、働き方改革を実施している企業でも、残業規制により昼食中や自宅に持ち帰って業務を続ける結果となり、本質的な改善になっていないと指摘する人も多いという。
本当に働き方を変えるためには、日本の企業は残業の原因となっている無駄な業務を明確にする必要がある。多すぎる会議や、多すぎる書類業務や、細かすぎる上司のマネジメントから派生する追加業務など、原因は多数存在する。
働き方改革は、日本では未だ成功したとは言い切れない。しかし、多くの人々に働き方について改めて考えさせるという観点で、賞賛すべき試みなのではないだろうか。また、アメリカやイギリス、ドイツなど、生産率が低下している経済先進国でも、日本の働き方改革から学べる点はあるはずだ。
日本の働き方改革が世界に発信できること
このように海外から改めて働き方改革を見てみると、独特な部分もあれば共通的な課題もあるようです。 特に、政府としてスローガンを掲げて認知・推進を進めるところは、日本の特徴的な部分として映るようですね。
アメリカ、イギリスなどの経済先進国でも学べる点があるのではないかという文末の意見も、課題認識を働き方そのもので無く、国家としての労働生産性に当てると多くの経済先進国に該当する共通課題であるということのようです。
働き方改革ラボでは、今後も働き方改革に関する海外の取り組みや記事等をご紹介していきます。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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