ITシステムの導入でイノベーションを起こす働き方改革とは?

From: 働き方改革ラボ

2022年01月21日 07:00

この記事に書いてあること

「イノベーションを起こす」という言葉をよく耳にします。イノベーションは意図して起こせるものなのでしょうか?残念ながら、答えはノーでしょう。ですが、イノベーションが生まれやすい環境を作ることは可能です。今回は、働き方改革という視点で、どうすればイノベーションが生まれやすくなるのかを考えていきます。

※2018年3月公開記事を更新しました

イノベーションを起こしやすい環境とは?

かつて日本はイノベーション大国だった!

かつての日本は、イノベーション大国と言えるほど革新的な商品やサービスを生み出していました。

高度経済成長期、イノベーションによって生み出された商品の中でも代表的なイノベーション商品を2つご紹介します。

スーパーカブ

スーパーカブが生まれた背景は、バイクは大型のものが主流であった1950年代、ホンダが誰でも気軽に乗ることができるバイクの開発を目指したことです。排気量は、当時としては画期的である50ccでありながら、使い勝手の良さを目指しました。

トランジスタラジオ

トランジスタラジオは、終戦当時大型だったラジオを、現在のSONYが小型化に踏み切ったのが始まりです。小型のラジオは人気を博し、ラジオは1人1台が当たり前の時代となりました。

このように、戦後日本の経済はイノベーションによって大きく成長しましたが、バブル期以降は独自のイノベーションが少なくなり、企業競争力が落ちてしまいます。そのため、日本においては企業の復活のための重要課題として、イノベーションが広く認知されるようになったのです。

日本のイノベーションの課題とは?

戦後の日本はイノベーションによって大きく成長しましたが、バブル以降はイノベーションの勢いは落ち始め、企業競争力が落ち始めます。IMD「世界競争力年鑑」(2021年度版)によれば、1992年の日本の競争力は1位だったのに対して、1997年には17位に急落。その後さらに低下し、2021年は31位と前年の34位から若干上昇したものの2019年以降3年連続で30位代となっています。

そこで現在の日本のイノベーションによる競争力が落ちている要因は何なのか?2つの観点で見ていきましょう。

デジタル化対応への遅さ

日本のイノベーションによる競争力が落ちている要因の1つが日本企業のデジタル化に関する対応が遅れているという課題です。

引き続きIMDによるレビュー「『世界競争力年鑑』からみる日本の競争力」(2021年度版)によると、ビジネスにおける日本の弱みの一つとして、「ビジネス効率性」が挙げられています。デジタルに関連する項目では、「デジタル化を活用した業績改善」で57位(大企業で51位、中小企業では最下位の64位)、「ビックデータ分析の意思決定への活用」63位、「企業におけるデジタルトランスフォーメーション」60位といずれも最下位グループに属し、全体の競争力順位の足を引っ張っている状態です。

デジタル以外では「機会と脅威への素早い対応」62位、「変化に対する柔軟性や適応性」61位などが挙げられ、このことからも、日本のイノベーションと国際的な競争力が落ちていることが窺えます。

IMD「世界競争力年鑑」における主な日本の弱み
・デジタル技術やビックデータの必要性の理解と戦略的な実践
・スピード経営の実践とビジネス環境変化への柔軟な適応

業務の生産性の低さ

次に日本の企業でイノベーションによる競争力が落ちている要因としてあげられるのが日本の業務における生産性の低さです。

公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2020?」によると、2019年の日本の時間あたり労働生産性はOECD加盟37ヵ国中21位、主要先進7ヵ国でみると最下位という状況です。また1人あたりの労働生産性でみても26位と1970年以降、最も低くなっています。これではビジネスイノベーションが起こりにくい環境になっていると言っても過言ではありません。

イノベーションを起こすための企業の取り組み

日本のイノベーションによる国際競争力が低い要因は「デジタル化対応への遅さ」と「業務の生産性の低さ」にあると見てきました。では実際の企業間ではどのような課題を感じて取り組みを実施しているのか見ていきましょう。

ITを活用できている企業ほど年商は増加傾向に

2021年1月にビジョナル・インキュベーション株式会社が、同社の運営する生産性向上の専門サイトにて、主に経営者や企業の決済者である会員向け447名にアンケート調査を実施。その結果「ITを活用できている」と回答した企業は昨年対比で年商が増加している傾向にあることがわかったと発表しました。

昨年度と比較した年商の状況
「ITを活用できている」と回答した企業は「年商が増加・微増している」が37.4%
「ITを活用できていない」と回答した企業は「年商が増加・微増している」が24.2%

また、「世界を動かすデジタル体験を」をミッションに掲げるアドビ株式会社がBtoB企業の経営層、営業管理職、マーケティング担当者約1,000人を対象に実施した「アフターコロナに向けたデジタル戦略に関する調査?」によると、デジタルマーケティングソリューションの導入している企業と、そうでない企業を比較すると、導入していない企業の方が「業績が縮小した」と回答した人多かったことがわかりました。

デジタルマーケティングとコロナ禍での業績変化の図
全体としては「業務が縮小した」という回答が36.1%
「デジタルマーケティングツール導入あり」の場合は「業務が縮小した」が27.1%
「デジタルマーケティングツール導入無し」の場合は「業務が縮小した」が40.3%

この結果からわかることは、日本全体ではデジタルへの対応の遅さにより競争力を落としている結果となっているが、その中でもデジタルを実践導入できている企業においては着実に成果を出しているということがわかりました。

約6割の中小企業がIT導入・検討を実施または検討

また商工組合中央金庫が取引先中小企業4890社に実施した調査データによると、IT

の導入・活用状況について、「実施している、または検討中」と回答した企業は全体の59.5%と約6割の中小企業が何らかの形でIT導入を検討、または実施しているという結果になりました。

IT導入の実施状況(全産業)
「実施している、または検討中」が59.5%
「非実施、検討していない」が40.5%

「テレワーク・Web会議システム」「財務会計のデジタル化」が導入済み項目の上位

新型コロナウィルスの影響前後で特に変化のあった項目は営業部門の「テレワーク・Web会議システム」の導入であり、前項で「IT導入を実施・検討している」と回答した企業の63.2%が実施しているという結果でした。また次に高かったのは「財務会計のデジタル化」であるが、こちらは新型コロナウィルス影響前から実施率が高く、影響にかかわらず中小企業で導入比率が高いことが窺えます。

IT導入の実施項目の回答結果の図
「テレワーク・遠隔会議システム」と「財務会計のデジタル化」と回答した企業が多かった

IT導入のボトルネック

一方で、「ITの導入活用を実施・検討していない」と回答した企業の導入の制約・ネック事項を見てみると、「人材の不足」(43.8%)、「社内の体制や仕組みが不十分」(33.8%)、投資費用(含ランニングコスト)(31.3%)の順に高いことがわかります。

「IT導入の制約・ネック」という質問に対し、一位の回答は「人材の不足」

この結果から、新型コロナウィルス流行の影響もあり、企業によるIT導入促進や検討が加速していおり、一部領域においては既に多くの企業で導入済みであることが窺えます。ただ導入におけるボトルネックの最大ポイントはIT人材の不足であることも見えてきました。

「IT導入の制約・ネック」の図
同調査の2017年の結果と比較すると「費用対効果」「効果が不明」「経営者のITへの理解不足」の項目において大幅に減少している

一方で同調査の2017年の結果と比較すると「費用対効果」「効果が不明」「経営者のITへの理解不足」の項目において大幅に減少していることから、ITの重要性とその効果について経営層の理解が促進したことがわかります。

働き方改革を推進し、イノベーションが起きやすい環境を作るための有用なITツールとは?

新型コロナウィルスの流行といった状況下においても、働き方改革を推進し、イノベーションが起きやすい環境を作るためには有用なITツールの導入が必要であり、一部領域では導入も進んでいることがわかりました。

しかしITツールといっても、求める機能によって様々な種類があります。それぞれの企業が抱える課題に応じたITツールを選択することで、テレワークや時短勤務の従業員が多い企業でも生産性を高め、イノベーションが起こる労働環境をつくることができます。また業務プロセスによって利用すべきツールが異なるため、ここでは特にイノベーションが起こる職場環境をつくるために有用なITツールにはどのような種類があるのかご紹介していきます

Web会議システム

Web会議とはPCやスマートフォンを使用して、オンラインで実施する会議のことです。Web会議システムを使用するメリットは、参加者の場所を問わずブラウザを通した対面会議が可能な点です。例えば営業所や支社が複数ある企業や、海外の取引先とのコミュニケーションも円滑にできるようになります。

またWeb会議システムを導入することで会議に使用する移動時間を削減し、その分だけ他の業務に時間をあてることができるので、生産性を高め、イノベーションに繋がる業務に集中することができます。

ビジネスチャット

ビジネスチャットはビジネス専用のチャットツールのことです。メールよりも気軽にメッセージのやり取りができるため、コミュニケーションの速度を高め、意思決定のスピードを高めることができます。

また多くのビジネスチャットツールには間違って送信したメッセージの編集や削除機能、リマインド機能もデフォルトでついている場合があり、わざわざメッセージを作成しなおしたり、タスク管理を別ツールで行う必要もなく、作業にかける時間を短縮することができます。

オンラインストレージ

オンラインストレージとは、データをクラウド上に保存するツールのことです。どこからでもアクセス可能なクラウド上に保存をするので、時間や場所を問わず必要な時に必要な場所からファイルの確認が可能です。

時間や場所を問わずアクセスできる他に、大容量なデータのやり取りをする際にもメールで送信するよりも素早くファイルにアクセスができるため、業務の生産性が高まります。またクラウド上で取引先とファイルのやり取りも可能だったり、ビジネスチャットツールや他のITツールと連携することでさらに業務効率を高めるカスタマイズ性がある点も大きな特徴です。

勤怠管理ツール

勤怠管理ツールとはその名の通り従業員の勤怠を管理するツールのことです。特に働き方改革や新型コロナウィルスの流行によって、日本企業にもテレワークや時短労働での働き方が広がった関係で、多様な働き方を管理する体制を整える必要性が出てきました。

クラウド版の勤怠管理ツールを使用することで、場所や時間を問わずに従業員の働き方に合わせて柔軟な勤怠管理が可能になります。機能としては勤怠管理の他に、従業員のシフト管理、経費精算など様々な種類の機能を搭載したツールもあります。勤怠管理ツールは従業員自身が自分の労働時間を正確に把握して、自主的に管理、評価するきっかけにもなるため、個人レベルでの業務効率を高める意識付けにも役立ちます。

ERP

ERPとは企業の中枢となる経営管理システムのことです。経営資源であるヒト・モノ・金・情報を適切に分配することを目的に導入されます。

例えば、導入により部署間の情報の伝達がスムーズになることで、これまで情報共有のために行っていた会議の数が激減する等の効果が見込めます。導入により企業全体の労働生産性を高められる可能性が高いのです。

業務全体をカバーするもの、単独業務のみをソフト化するもの、拡張性のあるものなど、さまざまタイプがあります。クラウド型で簡単に導入することが可能なツールがある一方で、導入までに多大な時間と費用がかかるツールも存在します。自社の働き方を改善するにはどの程度のツールが必要か深く検討する必要があります。

イノベーションを起こす働き方改革には自社にあったITシステムの導入が重要

働き方改革を推進しつつビジネスイノベーションが起こりやすい職場環境をつくるには、自社にあったITシステムの導入が必要です。ひとくちにITシステムといっても、目的や用途別に種類が豊富で、自社に最適なシステムを選定した上で導入する必要があります。

働き方改革を推進しつつ、イノベーションを起こすために自社のボトルネックはどこなのかを社内で検討した上で、最適なITシステムを導入すると良いでしょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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